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Another side ⅰ..

******

 

 数日前から異常気象のせいか記録的な豪雨が続いていた。

 今日も雨はやまない。


「相変わらず凄い雨だね」


 亜衣が言った。


「だね。お陰で仕事にも行けやしない」


 鳴り止まない大雨警報のお陰で外出も出来ずにいた。

 それは亜衣も同じだった。


「それにしても降りすぎだよね。地球ふやけちゃうんじゃない?」


 私はこの時まだあんな事になるとは思ってもいなかった。


「それは大変だ。ドライヤーで乾くかな?」


 私達は2階の自室で呑気に話していた。

 その時今まで聞いた事のない様な地響きを聞いた。

 そして地面が揺れる。


「なに!?何の音?」


 私は慌てふためく。部屋の電気、全ての電化製品が停止している。

 停電?何かが起きた。それだけは間違い無かった。


「ベランダから外を見よう」


 亜衣は真剣な顔で言う。

 私達はベランダに出る。

 そこには土砂に埋まった景色が広がっていた。

 私達のいる建物も一階は土砂に埋もれていた。

 現実のものとは思えなかった。

 呆然とする私を他所に・・・


「救助を呼ばないと!」


 亜衣は電話で救助を呼ぶ。

 救助ヘリが来るまでは時間がかかる様だ。

 私は命の危機を感じた。

 恐怖で何も出来なくなっていた。


「時間は少し掛かるけど救助ヘリが来る。これで安心だ」


 努めて明るく言うその声は少し震えていた。

 それからどのくらいの時間が経っただろう・・・。

 亜衣は携帯を弄ったり、情報を調べたり、定期的に救急に連絡したりとしていた。

 私はただただ恐怖に震えていた。

 そんな私を亜衣は励ましてくれていた。


・・・


 そして暫くして、遠くからヘリの音が聞こえる。

 私達はベランダに飛び出した。

 外の状況はさっき見た時よりも酷くなっていた。


 救助隊員が降下してくる。

 私は助かったんだと安堵した。

 そして救助隊員は言う。


「二人一度の運ぶ事は出来ない。近くの安全な場所に2回に分けて搬送する」


「麻衣、先に行って!」


「え・・・、でも・・・」


「大丈夫。すぐにまた救助に戻って来てくれるから二人とも助かる。

 急いだ方が良いから早く行って!」


 亜衣は急かす様に私を救助隊員へ誘導する。


「救助隊員さん。お願いします!」


 安全具が私に手際よく取り付けられる。

 そしてヘリが上昇し隊員の人と私の体が宙に浮く。

 亜衣は笑顔で手を振る。

 その姿が離れていく。



 その時だった・・・


 轟音を立てて山が崩れ落ちる。


 そして・・・土砂が・・・



 亜衣を飲み込んだ。



 私は声にならない叫び声を上げる。


 

 そして、あまりにも鮮烈で痛烈なその出来事に・・・


 受け入れられない現実と恐怖に・・・



 意識を失った・・・。



********


 意識を取り戻した私は絶望する。


 亜衣を失った。


 去年の三月から検査の数値が下がり続けていた。

 1ヶ月の検査入院の後も、様々な薬を試したが効果は薄かった。


 そして災害からの生還後、数値は急激に下がり・・・ステージ5に達していた。


 生きる気力が湧かない。


 あらゆる物を失い、最愛の人を失い、自らの命も消えようとしている。


 助かったのが、亜衣だったらよかったのに・・・

 亜衣を先に救助して貰うべきだった。


 私が弱かったから、亜衣は私を先に行かせた。

 深い、深い後悔。変えようのない過去。


・・・


 私は、ふと日記代わりに非公開で投稿していた記録を見る。

 それは、亜衣と再会してからの記録。思い出。



 私はそれを書き換える。


 私の名前を亜衣に、そして亜衣の名前を私に・・・。


 そして、物語にする。


 存在しない架空の希望を加えて・・・。


 望む未来を語り、後悔をせめてもの理想で綴る。


 それは懺悔にも似ていた。


 


 あり得たかもしれない未来。


 亜衣が生き残り、私が消える物語。


 拙い文章で書かれたそれは、まるで初心者が書いたライトノベルだ。


 これは私の遺書だ・・・。


 私は物語のエピローグに一つの詩を載せる。

  

 私はその物語を小説投稿サイトに掲載する。


 アカウント名はディア。

 dear、意味は『親愛なる』。

 そして手紙の際、送り先の前に付ける言葉。


 私はこれを、誰に残すのだろうか?

 受け取った人はどう思うのだろうか?


 私はこの作品にこうタイトルを付けた。


『遺書と言って渡されたのはライトノベルでした。』


 そして私は消えていく。


 神様、もし願いが叶うのならば・・・


 どうかこの物語が現実であります様に・・・


・・・・・・・


・・・・・


・・・

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