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Another side …

 それからの日々は、幸福な日々だった。

 満ち足りていた。


 あれは麻衣がうちに来てから半年程たった夏の頃。


「さぁ!今日もやるわよ!」


 麻衣が部屋に来るなり言う。

 私達は定期的に3人でゲーム大会をする様になっていた。


 私はこの時間を楽しみにしていた。

 このゲーム大会には罰ゲームが存在していた。


・・・


 第一回大会の時、


「罰ゲームを決めましょう!」


 何故、わざわざ罰を受けたがるのだろうか?

 あったほうが盛り上がるからいいけど。


「何がいいかなぁ♪そうだ!亜衣が負けたら男の格好をしなさい!」


 この人は何を考えているのか・・・

 私がそれをする意味を分かっているのか?


「負けるのが怖くなったかしら?」


 麻衣は煽るように意地悪く言う。

 さては何も考えてないな・・・。


「それだけ言うんだったら自分もそれ相応の罰ゲームを覚悟してるんでしょうね?」


 でも私は麻衣にだったら許せた。

 許せてしまうのだ。


「もちろん!何でもオッケーよ♪」


 そしてこんなたわい無いやり取りですら、

かけがえがないと感じてしまうのだ。


 結局、麻衣の罰ゲームは晩御飯に茄子のフルコースを食べる事となった。


 麻衣は茄子が大の苦手だ。曰く、

『あれは観賞用の実よ?食べちゃいけない色してるでしょ?』らしい。

 農家さんに謝った方がいい。


「無理ならやめてあげてもいいけど?」


 私が皮肉たっぷりに言うと、


「できらぁ!負けなきゃいいのよ!」


 とか言っていた。


 因みに芽衣は私達と同じ罰ゲームをどちらか選んで貰っている。

 飛んだとばっちりだ。すまん。


 この大会は第4回大会だ。


 第一回はスゴロクで芽衣が負けて男装した。

 男装とは名ばかりでただの顔面落書き大会になり三人大爆笑した。


 第二回は麻衣お姉ちゃんが負けて泣きながら茄子を食べた。

 フルコースは流石に可哀想だったので一品だけ。

 それでも随分と苦労をして食べていた。


 第三回はリベンジに燃える麻衣のとばっちりを受けて芽衣が負けた。

 まぁ、芽衣は茄子好きなので美味しそうに食べていた。

 第一回は好物のハンバーグがかかっていたからなぁ。哀れだ。


・・・


 そして今日に至る訳だが・・・


「そう言えば罰ゲームだけど、いつものでいいかしら?」


 麻衣が自信満々に言う。


「なんだ、まだ茄子が食べ足りないのか?今日は二品いっとく?」


 私は笑いながら麻衣を(あお)る。


「もう二人で仲良く男装して茄子食えよ・・・」


 芽衣が小さく呟いていた。

 今日の晩御飯は芽衣の好物の唐揚げだ・・・可哀想に。

 結局、芽衣は男装を選んだ。


「この日の為にメイク道具を強化してきたから♪

 彫りの深い偉人風イケメンに仕上げてみせるわ!」


 これは負けるわけにはいかなくなった。



 結果はと言うと・・・


 

 芽衣が栄えある第二回男装大会の主役となった。ご愁傷様。


・・・


「偉人風イケメンってどんなんだろう?」


 麻衣が言う。

 それはきっと誰も知らない。そもそもなんだそれ?


「とりあえず目の周りを黒っぽくして彫りの深い感じにしよう♪」


 合ってるのか?それ。


「肌を白っぽくして白人っぽくしよう!」


 私はとりあえず麻衣に合わせてみる。

 うん。パンダだ。


「鼻の先も黒くしよう・・・ぷっ・・・」


 私は思わず笑いを堪えきれずにメイクを続ける。


「パンダってヒゲあったっけ?ふ・・・ふふっ」


 麻衣ももう笑ってしまっている。

 

「髪を左右にお団子にしよう♪」


 耳ですね。麻衣は器用に髪を結い団子を作った。

 完成だ!鏡に映った、むすっとした芽衣のパンダ顔は最高に可愛かった。


「白黒の服に着替えて撮影しましょう!めっちゃ可愛いわよ♪」


 芽衣も満更でも無くなってきたのか鏡をまじまじと見ていた。


 これも男装ではないなぁ・・・。


 結局この後、私達は三人でパンダメイクをし、白黒の服を着て写真を撮った。

 この写真は私の一番のお気に入りだ。


 罰ゲームとは何だったのか?

 いや、罰ではなく罰ゲームだ。


 罰は悪事に対する(むく)いだ。

 そんなものを望んでどうする。


 だからきっとこれが正解なんだ。

 本当に楽しかった。

 こんな罰ゲームなら私はいつだって大歓迎だ。

 心の底からそう思った。


・・・


 撮影後、メイクを落とした後に麻衣お姉ちゃんが

いつもの思いつきで言い出した。


「ちょっと前に気づいたんだけどメールの送信予約機能って知ってる?」


 何やら日時を指定してメールを送信する機能らしい。


「これを使って未来の私達にメッセージを送りましょう♪」


 麻衣はこういうのが好きでいつも思い付きで提案する。


「半年後、2年後へ2通。内容は他の人には見せない事!これでどうかしら?」


 麻衣の勢いに押される形で私達はお互いにメールを送りあった。

 私は半年後の麻衣と芽衣に向けて、ただ一言だけこう送った。


『ありがとう』と・・・。

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