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side 亜衣 塔矢III

 あれから塔矢は度々私の前に現れた。

 他のカウンセラーも色々試したがこいつ程の効果はなかった。


「コミュニティに入るべきだと思うか?」


 私はいつもこいつに色々と聞く。


「君にとってそれが有益なら入るべきだろうな」


 こいつはそれに対して何かしらの答えをくれる。


「どうゆう意味だ?」


 その答えはいつも他のカウンセラーとは少し違っていた。


「そのままの意味だが?君にとってプラスになるなら入るべきだろう?」


 こいつは飄々(ひょうひょう)と言う。


「だがコミュニティと言ってもそれぞれだ。

 情報共有のメリットはあるが、皆それぞれ違ったものを抱えている。

 馴染めなければマイナスでしか無いだろうな」


 手放しで入るべきだと言うカウンセラーも多かった。

 だが私はこいつの方が正しいと思える。


「お互いが支えになるとか同じ悩みを抱えるもの同士とか言わないんだな」


 よく言われた言葉だ。


「君はよく知りもしない相手と支え合えるのか?

 それに君のそれを誰かと同じカテゴリーに当てはめていいものか・・・。

 とは言え似た苦しみを知るものであれば共有出来るものもあるかもな。

 漠然と仲間を探すよりは効率がいいかもしれん」


 ここで私は気づく。

 こいつは一度も私の事をトランスジェンダーと言っていない・・・

 いつも『君のそれ』と言う。何か意図があるのか?


「私をトランスジェンダーと言わないのは意味があるのか?」


 私はこいつには気を使わずそのままの質問を出来る。

 不思議な奴だ。


「俺は君から、君がトランスジェンダーだと聞いていないからな。

 事前情報として君のお父さんからは聞いたがそれだけだ。

 君はトランスジェンダーかい?」


 私は答えられなかった・・・。

 性同一性障害は医学用語。これを病気と称するべきかは、

 未だに様々に議論されている様だが、賛否両論だ。

 トランスジェンダーの意味はより広域に渡る。

 まだ名乗りやすいとは思う。でも・・・


「今の所、私は他のそれと君の悩みを一緒にする必要性を感じていない。

 今の君の悩みは、問題はなんなんだろうな・・・」


 私の問題とは何だ?

 将来の問題。働き先の問題。社会からの影響。

 これは今、私が考えても仕方のない事か・・・

 戸籍の性別の問題?治療を行うかの選択・・・。

 これも先の問題だな。

 ホルモン療法を始めるにしても18歳以上である必要がある。

 戸籍の変更には更に厳しい条件が積み重なる。


 性別の問題・・・。この不快感を受け入れられないという事実。


「君がトランスジェンダーの為に何かをしなければいけない、なんて事は無いと思うぞ。

 ただでさえ、しんどい思いをしている君がなぜ他の奴の為に何かしなければならない?」


 そんな都合のいい話があるのだろうか?

 いや、でもその通りか。別に私一人で何が出来る訳でもない。


「そうゆうのは余裕のある奴に任せればいい」


 塔矢はあっさりと言う。


「そんな奴はいるのか?当事者は皆、苦しみを抱えているんだろ?」


 この苦しみを抱えながら、余裕を持つ人物を想像出来なかった。


「君はそれを当事者しか語れないものにしたいか?」


 私はハッとする。いや、しかし・・・

 当事者でもないやつに語られるのは腹が立つ。

 理解できるはずがない。なのにそれを語るのはなぜか?

 興味本意で利用されるのが許せない。


「当事者しか語れない言葉がある様に、当事者以外が語るべき言葉がある」


 ん?当事者以外が語る事に意味はあるのか?


「当事者の言葉は当事者にとって共感出来るものかもしれない。

 しかし、それ以外の者には自分以外を肯定する言葉だ」


 普通の事だ。当たり前の事だ。


「それ自体は何も問題はない。しかし知識がなく想像力が低いものほど、

それが自分を否定していると勘違いしてしまう。そうではないのにな・・・。

 愚かな者は排除しようとまでするだろう。それは当事者にとって脅威だ」


 心無い言葉や行為には身に覚えがある。幾度となく経験した苦い体験だ。

 他人は自分と違うものを排除しようとする。

 される側からすれば、たまったものじゃない。


「これが当事者ではないものの発言だったらどうだろう?

 君からすれば、分かるはずのない者の共感出来ない戯言かもしれん。

 しかし、外から発信されたそれは、外の者にとって内からの発信だ。

 それは否定されず知識となり想像を促す可能性がある」


 それは確かに都合のいい話だ。


「私が得た情報の一部はそうやって(もたら)されたものだろう」


 それを認めていいのだろうか・・・?


「もし可能であればそこに修正を加えて、君に都合の良いものにしてもいいだろう。

 利用出来るものは大いに利用するべきだ」


 普通、人を利用するべきだとか言うか?こいつはやっぱり変だ。


「俺がもし間違ったり不快な事を言ったならすぐに言うといい。

 俺は全力で修正しよう。もし俺に出来る事があれば力になる。

 なんと言うんだったかな・・・そうだ。アライだったな」


「お前の事も利用していいのか?」


 私は意地悪く言う。


「俺は最初に言わなかったか?君の好きな様に利用してくれて構わないと」


 言ってたな・・・。こいつは全くもって口が上手い。


「何でお前がそこまでする必要があるんだ?」


 こいつに駆け引きを持ちかけても意味がない。


「俺は既に報酬を貰っている」


 こいつはそもそも勝負しない。

 こいつには・・・


『自分がない。』


「お前は普通のカウンセラーよりも安い報酬だと聞いたぞ」


 父から聞いた事実だ。


「俺の報酬は金銭だけではない」 


「ん?他に何か貰っているのか?」


・・・


「この仕事が俺の存在意義になる、それが俺にとっての報酬だ」



 こいつは過去に何があったのだろう?

 私はそれを知りたいと思った。


 こいつは詐欺師だ。


 私の意志とは無関係に、言葉巧みに私の苦しみを奪っていく・・・


 こいつはきっと・・・


 誰よりも優しい詐欺師だ。

ALLYアライとは

 アライ(ally)とは「味方」を意味する単語。そこから転じて「LGBTを理解・支援する人」を指します。

 性的マイノリティを理解し、支援している人、または支援したいと思う人のこと。

 差別や偏見をなくし、性的マイノリティも安心して暮らせる社会を実現するためには、ALLYの存在は重要。

 

「すべての人たちの価値観と向き合う」姿勢があれば表明をしなくてもいい。例えば、言葉遣い。

 知り合いに子どもが産まれたときに、「お嬢さん・息子さん」と呼ばすに「お子さん」と呼ぶ

「男らしい・女らしい」とたとえずに、「○○さんらしい」と伝える

「レズ」ではなく「レズビアン」、「ホモ」ではなく「ゲイ」と示す

これだけでも、十分アライの気持ちを伝えられると言う考え方もあります。

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