おまけ side 芽衣 3姉妹の思い出 スゴロク
麻衣お姉ちゃんが家に来て二ヶ月が経った頃。
「スゴロクゲームをしましょう♪」
唐突に部屋に入ってきた麻衣が言う。
手には懐かしいボードゲームを持っている。
「懐かしいね。それ家にあったやつでしょ?」
亜衣が言う。私達はそれに見覚えがあった。
昔、私と亜衣と母で遊んでいたものだ。
「そう♪さっき押し入れの荷物を整理してたら出てきたのよ!」
麻衣は宝物でも見つけた様にはしゃぎながら言う。
母との思い出が蘇る。
思い出と哀しみがセットなのがとても寂しい。
とても楽しい思い出なのに、どこか切ない。
それはもう二度と会えない事を実感させられるからだろうか・・・。
「あれ?もしかしてこれあんまり面白くない?」
私が暗い顔をしていたのだろうかと、ふと亜衣を見ると亜衣もこっちを向いていた。
きっと同じ事を考えていたのだろう。
「いや。結構面白かったよ?昔、母さんと盛り上がったんだ」
亜衣が懐かしそうに言う。
「意外と盛り上がるんだよね♪あと負けると悔しい」
私は笑いながら言った。亜衣が何故か凄く弱いのだ。
スゴロクだから運なんだけど何故かいつも亜衣が最下位だった。
「いいわね♪罰ゲームを決めましょう!」
何故、わざわざ罰を受けたがるのだろうか?
まぁあったほうが盛り上がるからいいけど。
「何がいいかなぁ♪そうだ!亜衣が負けたら男の格好をしなさい!」
こらこら。この人は本当にどこまで考えて言っているのだろう?
亜衣は少しムッとした顔をする。
「負けるのが怖くなったかしら?」
麻衣お姉ちゃんは意地悪く言う。
煽りよる・・・。ほんと何考えてるんだか。
「それだけ言うんだったら自分もそれ相応の罰ゲームを覚悟してるんでしょうね?」
あーあ。のっかっちゃったよ。思う壺だなぁ・・・。
「もちろん!何でもオッケーよ♪」
ノリノリである。さてはこの人何も考えてないな。
「今何でもって言ったよね?」
亜衣は仕返しと言わんばかりに煽りこっちを見る。
「いったね」
一応相槌を打つ。二人で好きにやってくれればいい。
「じゃあ、麻衣が負けたら今日の晩御飯は茄子のフルコースね」
麻衣お姉ちゃんは茄子が大の苦手だ。曰く
『あれは観賞用の実よ?食べちゃいけない色してるでしょ?』らしい。
農家さんに謝った方がいい。
「無理ならやめてあげてもいいけど?」
今度は亜衣が皮肉たっぷりに言う。
たのしそうだなぁ、この人達。
「できらぁ!負けなきゃいいのよ!」
それは負ける人が言うやつです。
どうやら罰ゲームは決まった様だ。
「芽衣はどっちの罰ゲームにする?」
亜衣が私に言う。ん?ちょっと待て。
なにその二択・・・。私もどっちも嫌だ。
今日は私の好物のハンバーグの予定だ。茄子にされては堪らない。
でも男装もなぁ・・・
「・・・な・・・s。いや、男装で・・・」
私は泣く泣く男装を選ぶ。
「ま・・・負けなきゃいいのよ・・・」
あ、これあかんやつだ・・・。
なんだかんだで私ものせられている。
順番もルーレットで決める。
麻衣が最初で亜衣が2番、私が最後。
早くゴールした人が勝ちでは無く、途中稼いだお金が多い人が勝ちという、
何とも資本主義なゲームだ。
勝負の行方はというと、
麻衣は大きな数字を出し続けトップ爆進する。
いろんなイベントは無視しながら突き進む。
亜衣はと言うと片っ端からマイナスイベントを回収する。
数字は大きかったり小さかったりとバラバラだ。
かく言う私はと言うと数字がひたすら小さい。牛歩もいい所だ。
お陰でいいイベントも悪いイベントも全部踏む。
最後の方は私だけがルーレットを回していた。
最後に勝ったのは誰だろう?
何と勝ったのは亜衣だった。
麻衣は一番にゴールしたけど1着のボーナス以外お金はあまりなかった。
一方、亜衣はマイナスイベントが多かったがそのマイナスイベントの
一発逆転チャンスを成功して大逆転した。9分の1を2回も出すかね・・・。
じゃあ、罰ゲームは誰かと言うと・・・。
私は今、鏡の前で男装メイクをさせられている。
「眉はもう少し太い方がカッコ良くない?」
「私は太眉より細眉がいいかなぁ」
「ほうれい線、書き足しちゃう?ジェントル目指そう♪」
「嫌だ。中性的イケメンがいい」
こいつら好き放題だな。
もう好きにしてくれ・・・。
私は最後の落とし穴イベントを踏んだのだ。
お陰でこの有様である。
人生もこんな感じでルーレットの様なものを回して進んでいるのだろうか。
決められたイベントの上を駒を進める様に・・・。
まぁ事前に割り振られたマスが分からないなら同じか。
何が起こるか分からないレールの上を走っている。
誰かが決めたルールに従って。
ではゴールとはなんだろう・・・?
ゲームは凄く楽しかった。
3人で大騒ぎしながら喜んだり哀しんだり。
怒ったり、笑ったり。
『私はゴール何てしたくなかったよ。』
それでも無情にも終わりは訪れる。
結果、待ち受けていたのがこの罰ゲームか。
私は物思いに耽っていると二人はもう本当に好き放題していた。
額に肉は男装じゃねぇ!
ちょび髭にほっぺにグルグル・・・。
中性的なイケメンはどこに行った!?
二人は涙を流しながら腹を抱えて笑っていた。
そんな二人と鏡の自分見て、私も大声で笑う。
これはゲームだ。占いでもなければ予言でもない。
楽しければいいのだ♪
大声で笑い合ったこの思い出は、母の哀しい思い出をそっと包み込む。
今度、このボードゲームを見た時、私達はきっとこの時の事も思い出し、
暗い顔では無く笑顔を見せるのかもしれない。




