Side 亜衣 メッセージ
前回のあらすじ
2022年8月23日
はなしは亜衣が記憶を取り戻した時に戻る。
芽衣は亜衣に、麻衣のメッセージを告げる。
私はまず麻衣が最初に書いていた話を読む。
「やっぱり私が書いたものじゃ無かったんだな」
それは私の思想とは違っていた。
麻衣に駄目出しをしながらよく話していた事を思い出す。
「最初に比べたら随分、読みやすい文章になったなぁ」
私は溢れ出る涙を拭う。
そして記憶を無くした自分が書いていたものを見る。
「これを・・・私が書いたの?」
私は不思議な気分だった。
そこには希望に満ちた、何とかハッピーエンドを目指しもがく主人公の姿があった。
私はこの時の事をぼんやりと記憶している。
この小説から何かを感じた。
その想いに守られて私は今、正気でいられている。
それを探し出さなければ・・・。
私は結局この作品のハッピーエンドに、
どうしても辿り着けないでいたのだ。
でも、その答えがこの中にある。
私は麻衣のスマホのメモを読み始める。
懐かしい会話文中心でキャラ名が書いてある会話文。
「え・・・もしかしてあの段階で最後まで書いてた?」
たぶん修正を行い、修正出来たものからアップしていたのだろう。
私は思わず笑ってしまう。
麻衣らしい。
あの人はいつも猪の様に突き進んで、その後で綺麗に道を作っていくのだ。
それが何故か意外と上手くいく。
まるでどこぞの主人公の様だ。
話を読み進めていく。
ここで私は気付く。驚いた事に私が付け足した内容は、
麻衣が書き残したストーリーと数多くの共通点を持っていたのだ。
皮肉な事に私は記憶を失った事で初めて麻衣の感性に触れたのだろう。
以前の私なら、ここまで作者の想いを吸収しようとはしなかった。
私が私を取り戻す為、私だと思って吸収したからこそ理解出来た。
そして取り込んだ麻衣の想いが今、私を支えている。
「芽衣はとんだ策士だな。あの子には本当に感謝しないとだ・・・」
私は笑っていた。笑えていた。そして涙を流していた。
そして続きを読み始める。
読み進めていく事で主人公の、そしてヒロインの過去が明らかになって行く。
思ったより随分と重い内容を考えていた様だ。
内容はそれほど長いものでは無かった。
とは言え全て修正して掲載すれば、読むのに3時間くらいはかかる量だろう。
私はそれを一気に読んだ。
そして気づいた事がある。
「そうね。私が・・・いなくなってから1時間後、
何も無ければこのスマホを芽衣に渡して欲しいの」
あの時の麻衣の最後の言葉。
あれは小説の中で出て来るセリフを捩ったものだった。
道理で妙にセリフがかっていた訳だ。
私はあの時、麻衣は自分の死を確信していてあんな事を言ったのだと思っていた。
自分を犠牲にして私を先に行かせたのだと・・・。
そして私はそれを激しく後悔していた。
でも実際は違っていた。彼女は死ぬつもりなんて微塵も無かった。
麻衣は作中で自己犠牲なんて自己満足だと語っていた。
そしてヒロインは無事生還してみせるのだ。
麻衣は帰らぬ人となってしまった。
でも最後のその瞬間まで全力で生きようとしていた。
それが分かっただけでも私の心は少し軽くなった。
その後も読み進める。
それは間違いなくハッピーエンドだった。
こんなストーリーになるとは思っていなかった。
「麻衣は凄いなぁ・・・」
私は心の底からそう思った。
そして後書きを読んで更に衝撃を受ける。
『今作品は私の思想が過分に含まれます。そのものと言ってもいいかもしれません。』
確かにその通りかも知れない。
『人は幸せを求めなければいけない。
求め続けていなければ生きていけないのだ。』
作中でも語られた言葉。後書きでも強調していた。
まるで今の自分に向けられている様な気すらしてしまう。
『「死にたい。」と「生きたくない。」は別物だと思います。
私は人は皆、生きたいと思っていると思っています。』
その通りだった。麻衣の死が辛かった。
逃げ出したい、死にたいと思った。
でも私は生きたいと思っていた。
そう気付かせてくれたのは・・・麻衣と芽衣だ・・・。
そして最後にこう綴られていた。
『皆さんに少しでも多くの幸せが訪れますように心より祈っております!
これからも何卒宜しくお願い致します♪』
麻衣は本当に凄いなぁ・・・。
私も麻衣の様になれるだろうか?
そうなりたいと思った。まずはその為に進もう。
そして、疲れたらまた振り返ろう。
この物語を・・・。
・・・
「芽衣、読んだよ」
私は芽衣を病室に読んだ。
「随分とスッキリした顔をしてるね♪大丈夫そう?」
芽衣は泣きながらも嬉しそうに言う。
きっとこの涙は哀しみだけではない。
これで完全復活と行くほど現実は甘くない。
私はこれからもフラッシュバックに苦しむだろう。
「芽衣、これからも迷惑かけるかもだけど宜しく♪」
私は極めて明るく言う。
「なんだか複雑な気分ですね。
卑屈になっている様なら頭引っ叩いてやろうかと思ったのですが
そんなこともないのですよね?」
芽衣は小説の中の妖精のセリフをそのまま使って言った。
私達は顔を見合わせて笑った。
「私達ってほんと麻衣に毒されすぎだね♪」
・・・
私はここでもう一つの大切な事を考えていた。
「芽衣は気付いている?
もう一人、この物語を伝えないといけない人がいる事・・・」
そう。私はこの人に伝えなければいけない。
きっとこの小説は私達にも向けたものだ。
でも、当時の麻衣が今の私達の様な状況を想像出来た訳は無い。
きっとこの小説はあの人に向けられたものだ・・・。
この作品に出て来る小説は、私がこの作品の前に書いたアイテールとリンクしています。
作中の後書きに至ってはそのまま引用しています。もしお時間を頂けるならばアイテールの
後書きだけでも読んで頂けると今作をより楽しめるかと思います。




