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第11話 少年ディオのお仕事

「では、デイジー改めディオ頼んだぞ」


「宰相様……口元ひくついてますよ」


「……気のせいだ」


 キリッとカッコいい顔を更に引き締めて芸術的に美しくしてみせるが、流石にそれに騙される程の間抜けではない。

 本当にこの人はデイジーの男装姿がツボらしく、見るたびに楽しそうにする。


(そこまで可笑しな姿じゃないはずよね。ノエル様は普通に反応してないし)


 ノエルは第一騎士団から秘密裏に宰相が借り受けている。

 デイジーに何かあった際には駆け付けられる場所に待機しておいて貰うのだ。

 実力はご存じの通りだし、実直な性格のようで信頼ができる。

 その上でデイジーを心配してくれている。

 なんて良い人なのだろう。

 デイジーの中での評判は鰻登りだ。

 しかし、今は姫の命を守る大事な仕事を控えている上に、女性の姿ではまだ対面していないので、中々アピールが難しい。


 もちろん、まだ婚活は始まったばかり。

 婚活ターゲットをノエル一人に絞るつもりは無いが、条件的にはこの上無いので、もし興味を持ってもらえれば突き進んでサッサと田舎に帰るのも良いだろう。


 デイジーは結婚相手に恋愛感情を求めていない。

 多くの貴族がそうであるように。

 ……モテる妹達がいるせいで諦めている面が大きいが。

 とにかく一家を背負う者として、考えるべきは条件なのだ。

 婿入りしてくれそう。

 その一点は譲れない。


 まあ、それは今回の仕事が終わってからゆっくりと考えよう。


 王宮にはエヴァン宰相の息のかかった者があちこちにいる。

 その一人、使用人を統括する執事のフェルナンドと引き合わされた。


「こちらが……スミシー令嬢……ですか」


 フェルナンド氏は片眼鏡を付け直して、デイジーをマジマジと観察する。


「ご機嫌よう」


 一応淑女っぽく挨拶する。

 それを見てフェルナンドは慌てて挨拶を返す。


「いや、失礼しました。執事のフェルナンドと申します。

 あまりに見事な変装で……つい見入ってしまいました。

 お任せください、宰相閣下。

 彼女を上手くサポートいたします」


「頼んだぞ、フェルナンド。そして、デイジー嬢……いや、ディオしっかり頑張りなさい」


 含み笑いをしつつエヴァンは立ち去った。

 デイジーはむむっとしたが我慢する。

 この我慢強さが長女の証だ。

 

 「では……デイ……ディオ様」


 機嫌が良さそうな宰相を見送ったフェルナンド氏が、おずおずと話しかけてくる。


「いえ、様付けは可笑しいですよ。呼び捨てにしてください」


「あ……そうですね。ディオ……その、仕事を教えます。

 いや、教える。

 ある程度本物のように動けないと不審がられるだろうから」


 そして、フェルナンドは丁寧にやるべき仕事を教えてくれた。

 とりあえず仕事場の掃除をひたすらする事になった。


「私は外に出る用事がある。……しばらく一人になるけど、それは宰相様の作戦だから安心して欲しい。

 いや、でも気を付けて」


 フェルナンド氏は良い人らしく、デイジーに何度も心配する言葉を掛けながら外出した。

 

 (さあ、ここには仕事熱心な少年一人になったわよ。

 毒を渡すなら他に人が居ない今よ!)


 ホウキで床をあちこち掃きながら、その時を待つ。


「今……一人かしら?」

 

 

◯主人公の家族


 デイジー・スミシー

  主人公。目立たない。茶色の髪と瞳。


 スミシー伯爵家

 父ジョン 金髪碧眼。デイジーと顔は似てる。

 母ジェーン 茶色の髪と瞳。美人。

 ローズ、リリー 長身スタイル抜群金髪碧眼の双子。姉を慕っている。トラブルメーカー。


◯王家

 ベアトリーチェ・エルミア・グランディア王女

 プラチナブランドにエメラルドの瞳の12歳。ワガママ。

 レオンハルト王

 アマンダ王妃

 ベリダ側妃(父はアーガイル侯爵。愛人はメイドのペネロペ・ガードナー)レイ王子は体が弱い


◯エヴァン・アラバスター 銀髪長髪灰眼。女嫌いで有名。デイジーの男装がツボ。


 メアリー・アダムス侍女長 侯爵夫人。いつも眉間に皺が寄ってる。


 ダスティン師匠 昔は有名な傭兵だった。おじいちゃん。


 ノエル・ジョンソン 第一騎士団所属。子爵家の三男。


 ディアナ・ドウ 粗忽者のメイド。この度王女のお食事を運ぶ係になった。


 

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