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恋です。

恋です。2話

作者: 新垣新太

飯塚のいるクラスでは国語の授業が行われていた。そして、国語担任の松永先生が新入生同士の親睦を深めようとよからぬ勧めで、隣の席の人と早口言葉遊びをする事になった。飯塚の隣に座るのは藤川由衣。飯塚はハンカチの件があってから、何故だかそわそわ感を隠せずにいた。


松永先生「じゃあ、教科書の56ページを開いて。そこにあります早口言葉シリーズ百選を、隣の席の人と交互に読みあって下さい。最後に、どこまで噛まずに読むことが出来たのかを聞きます。ペアで協力して進めて下さいね!では仲良く始めー」


先生の合図と共に、ざわつき始める生徒達。飯塚はハンカチの件以来、藤川とは目も合わせていなかった。緊張で少し震える手を抑えつつ、教科書を開いて隣にいる藤川の方を見る。


飯塚「、、あ!」

藤川「何よ。急に大きな声出さないで」


藤川は飯塚よりも先に準備をしてこちらを向いていた。それに驚き飯塚はなぜか興奮していた。


藤川「やるわよ、早口言葉」

飯塚「え、お、、うん」

藤川「ちゃんとやってよ。こんなんで授業の評価下がったら格好悪いでしょ。飯塚が先に読んで、次に私が読むから」

飯塚「わかった。、、飯塚だ、俺、は、飯塚って言うんだ」

急に自分の名前を呼ばれて驚いた飯塚。

藤川「何?、早くやってよ」

飯塚「うん、あ、はい。、、1番、赤巻き紙青巻き紙黄巻き紙、赤巻き紙青巻き紙黄巻き紙、赤巻き紙青巻き紙黄巻き紙」

藤川「2番、イシシッピ川ニシシッピ川ミシシッピ川、イシシッピ川ニシシッピ川ミシシッピ川、イシシッピ川ニシシッピ川ミシシッピ川」

飯塚「3番、うちのツルベは潰れたツルベ、隣のツブレあ違う。うちのツルベは潰れたツルベ、隣のツルベは潰れぬツブレあー。、、うちのツルベは潰れたツルベ、隣のツルベは潰れぬツルベ、潰れたツブレおー、何でツブレ?」

藤川「落ち着いて。飯塚、ツブレじゃない、ツルベ。私に潰されたいの?」

藤川は足を組み、飯塚を睨み付ける。

飯塚「わかってる、目にはちゃんとツルベって見えてんのに、口に出すとツブレって出てしまうんだよね」

藤川「言い訳はいいから、私の目を見て。私に潰されたいの?、飯塚」

飯塚「潰されたいです。、、違う違う!ちゃんと読むから、、集中!」

藤川「はいどうぞ」

飯塚「うちのツルベは潰れたツルベ、隣のツルベは潰れぬツルベ、潰れたツルベと潰れぬツルベ、うちのツブレは、あー。ごめんもう一回」


そして、飯塚はツルベの早口言葉から抜け出すことが出来ずに授業が終わった。その結果、飯塚藤川ペアはクラスでビリとなった。飯塚は罰として、お昼休みに売店のおばちゃんから緑鶴高校名物のパンの詰合せ袋を500円で購入し藤川に渡した。


飯塚「俺のせいで、申し訳なかった。これ最後の1袋だった。あって良かったよ」

藤川「ありがと」


その時、一瞬だけ口角を上げた藤川の顔を飯塚は見てしまった。パンの入った袋越しに見た藤川のあの表情。最悪の結果に終わった授業だったが。それは今、最高の瞬間を見る為に用意された伏線だったのかと感じていた。飯塚はさりげなく、ズボンのポケットから取り出したハンカチを口元に当てた。

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