告白
「おはよう……」
望実はぽつりと呟き、教室に入る。
「あ、望実望実!」
「斗真。どうしたの?」
望実が教室に入った瞬間、斗真が望実の所に突っ込んできた。
「ほら、この前見せたサイトの小説、結構読者増えてるみたいなんだよ」
「そ、そっかー……」
斗真はそれから、望実の小説のベタ褒めを始めた。
(うーん……ここまで褒められると書いたのが自分だとは言いづらいな……)
実は望実は、書いたのが自分だと、斗真に打ち明けようとしていた。
ただ、いつも小説の話になるとベタ褒めをするから、中々打ち明けられなくなっているのだ。
「ほらーここの表現がー……って、望実聞いてるか?」
「え!?あ、うん……」
「お前、何か疲れてないか?」
斗真はそう言い、望実の顔を覗き込む。
「そ、そうかな?あ!昨日遅くまで勉強してたからそのせいかな!いや、それ以外疲れることしてないからそうだ!」
「そうか?ならいいけど……」
「うん!そうだ、私ちょっと用事あるから!じゃっ!」
望実は斗真から逃げるように踵を返した。
ーー放課後ーー
今日もいつもの学校が終わった
「望実!」
帰ろうとした時、斗真から声がかけられた
「あ、斗真。どうしたの?」
「ほら、俺がこの間からずっと言ってる小説。お前にも勧めたけど読んだ?」
「ああ、うん」
もちろん作者だから読んでいる
「面白くないか?」
「え、あ……」
望実は返答に困る。
自分の小説を面白いか聞かれるなんて、変な場面だ。
「あ、ああ……あれ、斗真が好きそうだよね」
「だろ?!……あれ、どんな人が書いてるのかなあ。一度会ってみたい」
斗真が夢見る少年のように呟く
小説が絡むと、いつもからは考えられないほど感情が出てくる
(書いてる人……目の前にいるんだよね……)
望実は心の中で苦笑いする
(そろそろ……私が書いてるんだって、言おうかな)
望実は、ベタ褒めされて、期待されていると思うたびに、プレッシャーに押しつぶされそうになっていた。
もっともっと良いものを書かなきゃ。
そう思わない日はない。
「あ、あの!斗真!」
「お!?おう……」
「あのね……えっと、そのね」
斗真は、しどろもどろになる望実を見て、顔をしかめる。
「何だよ。言いたいことあるなら早く言え」
斗真が少し怒っているように感じて、望実は少し怖がった。
「そ、その!斗真が読んでる小説を書いてるのは……私なの!」