新しい読者
望実ははそれからも、ずっと小説を書き続けた。
見てくれる人はちょっといるけれど、評価をしてくれたり、コメントをしてくれるのは斗真だけ。
最近、望実のモチベはだだ下がりしていた。
「はあ……」
モチベは下がる、学校は最悪。
最近心の底から笑った事なんてないかもしれない。
「おはよ……」
望実は教室に入り、ぽつりと呟く。
「この小説面白くてさー」
「お前ほんと小説好きだな」
「まあ、読んでみるとガチで面白い奴ばっかだから、読むんだけどなw」
斗真と友達が大声で喋っていた。
斗真は大の小説好きで、よく友達に色々な小説を布教しているのだ。
望実は気になって、斗真の所へ向かった。
「まーた小説の布教してんの?」
「別にいいだろ?面白いものを教えてるだけなんだから」
小説の話になると、斗真は少年のようになる。
なんやかんやで、そういう斗真の一面も好きだ。
「まあ確かにみんな喜んでるね」
「ほら、別に迷惑じゃないから」
「そっか」
私はなんとなく相槌を打って、斗真の所を離れた。
ーー放課後ーー
望実は学校の係の仕事で、学校から出るのがかなり遅れた。
帰ったらご飯を食べないといけない。
小説を書きたいのにと、望実は深いため息をついた。
「ただいま」
「遅かったわね。夕飯食べましょ」
「う、うん……」
咀嚼音がトリガーのミソフォニアにとって、会食は生き地獄。
咀嚼音を聞いて不快になり、イライラして味もしないご飯を食べ続けないといけない。
ミソフォニアじゃない人も、これは想像つくのではないだろうか。
望実はは光の速さでご飯を食べ切った。
「ごちそうさま!私部屋行くから!」
「あ、ああ。そう」
望実は怪しまれない程度に早歩きで、部屋まで向かった。
「あーもうご飯とか地獄……」
望実は部屋のベッドにダイブして、愚痴を漏らした。
そして、小説の執筆ページを開いた。
書きかけを終わらせなければと、あせあせ文字を打つ。
「……斗真以外も、読んで評価したりコメントしたりしてくれないかなあ」
私はため息をつく。
そして、「この話を投稿しますか?」と書かれた所を押した。
投稿完了というページが出て、望実はスマホを閉じた。
「ま、斗真に喜ばれて、嫌な思いはしないけどね」
望実はは小さく呟き、少しの間眠ってしまった。
ーー数十分後ーー
「ふぁ……寝ちゃってたんだ」
私は起き上がり、スマホを手に取った。
自分の小説のページを開くと、いつもより閲覧者が多い。
しかも、斗真以外のコメントもあった。
『友達に勧められてみましたが、とても面白かったです!頑張ってください!』
「……あっ。斗真が布教してたの、私の小説だったんだ」
新しく私の小説で喜んでくれている人がいる。
私はそれが嬉しくて、画面に向かって微笑んだ。