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今日も今日とて、耳栓を持って学校へ向かう。不快音がたくさんする場所に飛び込むと思うと、気が重くなる。
(憂鬱だなあ……何でこんな病気に……)
学校なんて、地獄だと思う。
トリガー音を出す人を殺したくなるし、毎日気が狂いそうになるほど追い詰められる。
前は好きだった学校が、いつの間にか嫌いになっていた。
ため息を何回も何回も吐いているうちに、学校に着いてしまっていた。
生徒の楽しそうな話し声が四方八方から聞こえて来る。
(こんな病気なければ私も……)
望実はミソフォニアじゃない自分を想像しながら、校舎に入っていった。
ー放課後ー
学校が終わった。
(何とか誰にも手を出さずに済んだ……)
望実はほっとして帰路に着く。
「望実」
後ろから、不意に声をかけられた。
「あれ、斗真」
幼馴染の斗真だ。
斗真はポーカーフェイスで、感情が全く読めない人だ。
もう帰った後だったらしく、私服を着ている。
「どうしたの?あんまり声かけてこないのに」
「ちょっと見てほしい物があって。ほら」
斗真は望実の前にスマホを差し出す。
スマホの画面に写っていたのは
私が書いた小説だった。
望実は驚き、目を見開く。
声を上げそうになったが、何とか堪えた。
「これ、最近見てる小説で、ミソフォニアって病気を題材にしてるんだ。コメントも書いた」
斗真はコメント欄までスクロールし、1つしかないコメントを指差す。
望実の小説にコメントを書いていたのは、斗真だったのだ。
「これ、読んでいけば読んでいくほど、辛い病気なんだなって分かってくんだ。……俺も、ミソフォニアの人の力になりたいって思ってんだ」
望実は、そう言う斗真の顔を覗き込んだ。
斗真は、真剣な表情だった。
「わっ」
思わず、望実は声を上げてしまった。
「斗真が!斗真がシリアスな表情になってる!」
びっくりしすぎた望実は、その場でぴょんぴょん跳ね始める。
「……ったく、何なんだよお前。そんな事でいちいち騒ぎ立てんなよな」
斗真は右頬を手で覆い、そっぽを向いた。
「……?」
どうしたのか気になった望実は、斗真の顔を覗く。
覆われていない左頬は、赤くなっていた。
(うーん……。斗真、どうしたのかな?)
何故か顔を赤くしている斗真に、望実は少し疑問を抱えた。