ミソフォニア?
(今日も学校行かなきゃ……)
彼女の名前は荒井望実。どこにでもいる中学2年生。
朝食を食べようと、望実は適当にパンを取り出す。
彼女の家は、朝食を家族で食べる事はなく、勝手に食べるスタイルだ。
(あ、父さんが食べてる)
そんな事は気にせず、望実は袋からパンを取り出した。その時。
(ん?何か変な音するなあ)
そう思い、望実は耳を澄ました。
グチャ……ネチャ……
(……!?)
彼女は言い知れぬ不安感に襲われ、パンを持って自分の部屋に飛び込んだ。
(どうして?どうして咀嚼音を聞いただけでこうなるの?)
さっきの音が何回も脳内で繰り返される。その度にゾゾッと悪寒が走った。
(もう嫌だ…とりあえずパン食べよう)
あの音から逃げようと、望実はパンをその場で食べ始めた。
(うぅ……)
学校に着いたら、別の音でも同じ感覚がする様になった。鼻をすする音、あくびの声、シャーペンのノックを押すカチカチ音。苦痛で仕方ない。望実は授業にもあまり集中できず、その日は終わった。
望実は、帰ってからこの症状について調べた。「咀嚼音 不快」などと調べると、ある病名が出てきた。
「ミソフォニア?」
ミソフォニアで検索をかけると、そのミソフォニアの人が作ったページなどがたくさん出てくる。まさに望実と一緒だった。咀嚼音や、鼻をすする音が駄目らしい。そういう音をトリガー音というと、彼女は知った。自分と同じような人がいるらしい。そう思うと、望実はとても安堵した。私だけじゃない。私だけがおかしいんじゃない。そうはそうだけど、不安も感じる。調べたところ、ミソフォニアは理解されにくい病気らしい。周りにそんな人はいないし、理解してくれないんじゃないか。同じミソフォニアの人は理解してくれるだろうけど、ミソフォニアじゃない人からは理解されないんじゃないか。
(でも……今は、向き合っていくしかないんだ)
別のミソフォニアの人も、きっと理解されなくても頑張っているんだ。だから、私も頑張るしかないんだ。私は、理解されないかもという不安も抱え、この病気と向き合い、闘っていくと決意した。たとえ、一生続く闘いでも。