忍び寄る影
「居場所がわかった」
部屋の窓から轟く雷鳴と雨音は、外が酷い嵐だという事を如実に表していた。
蝋燭の炎が揺れる薄暗い室内に、異形のもの達が集う。
鋼の如く強い岩の体を持つもの。
鋭く長い犬歯を覗かせる、青白い顔のもの。
9つの蛇の首が、不気味な音を立てている頭を持つ者。
例をあげればキリがない。
とりわけ恐ろしい姿の3人が、最初に口を開いた、緑の髪の男に向かって跪いた。
9つの蛇の首をもつ女が、口を開く。
「エルサルト様、私めにお任せ下さい。このナーラが必ずや……件の小娘を捕まえてみせます」
緑髪の男──エルサルトは、女をちらりと一瞥し、また窓の外に向き直った。
それが彼で言うところの了承の意味だと知るナーラは、一層深く頭を垂れると、同じく控えていた他二人を連れて、部屋を後にした。
三人が部屋から去るのと同時に、そのほかの気配も消えたのを確認して、エルサルトはゆっくりと、長い前髪をかきあげる。
窓に映る自身の顔を見つめながら、ポツリと、独り言をこぼした。
「漸く……漸く見つかった。……我が君の探し人…………
魔導帝国リオニアの世継ぎにして、
破壊の神の力の継承者…………
アシエリス皇女よ……」