表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/88

第78回 ツバメ④

田中先輩の提案は、大きく分けて二つだ。


1 糞などの被害を受けないように、直接的な対策を講じる。

2 お客が自主的に被害をうけないように気をつけ、ツバメをかわいいな、保護したいなという気持ちになるよう誘引する仕組みをつくる。


「1はわかるけど、2が良くわからない。」

田中先輩はニカッと笑い

「つまり、ツバメは友だちさっ、作戦だ。」と、ピースする。

もっとわかんないよ。


聞き耳を立てていた木山さんが「今、流行(はや)りのナレッジ理論ですね。」と納得しているけど、何の流行りなのかがわからない。

ナレッジリロンっていう響きがアニメキャラクターっぽい? なんか新種のモンスターの名前みたいだ。

それとも、チョコレート菓子かな。美味しそう。

木山さんは僕のギャグだと思ったのか「理論です。理論。考え方です。」って笑うけど、理論って流行るもんなのか?

チョコレート菓子ならわかるけど。



対策の方向性が決まると、具体案はポンポンでてくる。

まず、テーブルや椅子を動かし、テラスの場所を変える。少し外に出しガーデン席にするんだ。糞が落ちる場所から、食べる場所を離すだけで全然違う。

ただ、あまり人気(ひとけ)をなくすと、カラスなどに巣が狙われるから難しい。ちょっとだけ外す感じだ。

その上で、掃除もこまめにやってもらおう。清潔は大切だ。


「それに、糞受(ふんう)けは設置しなきゃならないな。」


糞避(ふんよ)けでなく、糞受けですか?」


「そうだ。糞を受け止めるんだ。」

受けとめる?

両手を広げて?

いやいやいやいや。それ、汚くないか?

チョコレート菓子だと思えば・・。

いやいやいやいや。


「ツバメに糞をするなって言っても無理だろ? だから、巣の下に糞受けを置くんだ。地べたに汚ならしく落ちないようにな。そこで、どういう糞受けにするかたな。」


「どういうものなんですか。種類があるんですか。」


「なんでもいいんだよ。だから、種類というか、何か楽しめる工夫をしてみてはどうかと思ったんだ。忘れ物のビニール傘を使って、色とりどりにするとか。野球のツバメ軍団のようだろ? 」

ああ。東京音頭ね。踊り踊ちゃう?


「傘を少し斜めにして糞が集まるように作れれば、掃除も楽だ。」


「なるほど、傘だから水で流せば綺麗になりますね。」


「ただなぁ。雛が落ちたら糞まみれになる上、戻す巣がわからなくなるだろう? やっぱり、普通に板を貼るかぁ。」

糞受けは、巣の下に一時的に糞を溜めておくもので、段ボールやラミネート加工をした紙を吊るしただけのものでも良い。それを定期的に掃除して糞をとる。

ただ、巣の下に置くので、ときどき雛も落ちているらしい。


「保護したくなるような誘引って何するんっすか。全然、イメージがわきません。」


「そうだな。例えば、人の流れを変えるために、歩いてほしい場所に足跡を描くとか。道を描くのでも良いな。何がいいかなぁ。どうしたらいいと思う?」

僕に聞くの?

田中先輩が何か案を持っていると思っていた。


「・・・。わかんないっす。」

「おまえ、本当に考えているか? 休憩してただろ。」

「心外な! 考えてます。それに、今、決めなくたっていいんじゃないんですか。」

「今、決めなくて、いつ決めんだよ。」

「そのとおりなんですけどぉ、う~ん。道の駅にも考えてもらってもいいような気がします。」

田中先輩は腕を組むと

「まあ。それも、そうだな。だけど、相手に例示する案は必要だろ。」



というわけで、できるだけ案を考えようということになった。


・テラス席からガーデン席にする。

・お客様の通る道を変える。

・糞受けをつくる。

・掃除をこまめにする。

・定期的な見回りを欠かさない。

そうすれば雛の落下も早く見つけられるからね。

・樹木は適度に剪定する。鬱蒼とした高い木はカラスや猛禽類の止り木になってしまう。

・ツバメの生態を理解できるような解説を展示する。

・巣立つまでの雛の様子を写真パネルにして展示する。

・ツバメの写真をSNSにあげる。

『今日のツバメ』なんてタイトルつけてもいいな。

道の駅の宣伝にもなる。皆から募集しても良いね。

かわいい写真が集まりそうだ。

・レストランのメニューに春のツバメ定食をつくる。

竹の子は煮物ではなくて、天ぷらがいいな。

・直売所に商品を持って来ている人達にコラボを頼む。

出入りするのはお客様だけじゃない。

むしろ、こういう人達の理解を得ないとダメだ。


いっそ、キャラクターも作っちゃう?

ゆるギャラだ。ゆるキャラ!


なんか、考えるのが楽しくなってきた。

そうだ。誘導するため、床に描く矢印には、ツバメの尾のような黒い模様をつけようかな。

へへへ。

なんか楽しい。


直売所やレストランの案は、継続するためには良いと、珍しく田中先輩にも褒められた。


道の駅には、いろいろな案を纏めずに提案し、事務局長の意見を聞いてみることにした。


ともに歩む、『共生』のバランスを上手くとるためには、人側にも歩み寄る努力が必要だ。ただ、それが負担ばかりになってしまうと嫌になるし、協力は得られない。メリットを生み出せるような仕組みできないと継続もしない。だから、難しい。



僕らが、あれやこれやとアイデアをだし、糞受けの見本を作ったり、ぎゃぁぎゃぁと騒いでいる間、道の駅では、新たな動きがあった。

どこかから、ツバメを駆除する噂を聞きつけ、老人会のメンバーがツバメ保護に立ち上がったんだ。

朝の見回りはすでに日課となり、チラシを配り、署名活動を始めた。孫に聞きながらツバメの写真をSNSにあげ、道の駅や市にも要望をだした。

それは孫世代を巻き込み、瞬く間に拡散していった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ