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第77回 ツバメ③

鳥獣対策は、その鳥獣の生態を理解していないと難しい。今回のように捕獲しない場合は特にだ。


「ツバメの雛って、そんなに巣から落ちるもんなんですか。事務局長は毎日って言ってましたけど、自然界で巣から落ちたら雛は死んでしまいますよ。僕は信じられない。毎日ですよ。毎日。」


「自然界というか、ツバメは人家に、人間界に巣を作るけどな。」

田中先輩がつかさず突っ込む。

そういうことを言いたいんじゃないんだよ。


「まぁ。でも、確かに、人家。ん? そうか。そうだ。うん。そうだ。 きっと、人が助けることも織り込み済みなんだ。だから、ツバメはあんなにかわいい風貌なんだ。」

なんとなく、納得。

思わず、人が助けたくなっちゃうよね。


「はぁ? 鈴木は相変わらず発想が豊かだな。かわいいとか関係ねぇだろ。ツバメは卵をいっぺんに産まない鳥だからだろ。だから、小さいのが落ちちまうんだ。きっと。」


「いっぺん? どういうことっすか?」


「言葉どおりだよ。卵を産んだら、次の卵を別の日に産むんだ。羽化も少しずつズレる。早く羽化した方が雛もデカくなる。最初の雛は、親が餌を運んでくると、口を大きく開けて貪欲に餌を食べ、狭い巣の中で丸々と太っていく。最後の小さい雛はどうしても出遅れる。押し退けられて、巣から弾き出されてしまうんだ。」


「なんて弱肉強食の世界なんだ。」


「そうだな。まぁ、仕方ないだろ。自然の摂理だ。すべての雛が巣立つ訳ではないからな。ただ、親ツバメはすぐには育児放棄しないぞ。しばらく餌を運ぶ。」


「それでも、生まれた順番で生きられるか変わるなんて、なんか不公平だ。これは差別だ。やはり、落ちた雛は僕らが助けなくっちゃいけない。」

事務局長の気持ちがよくわかるよ。助けたい。


「差別? 差別かぁ? 違うんじゃないか。生き残れない雛は多いと言ったつもりなんだが。俺は逆に落ちたツバメを本当に助けて良いのか悩むけどな。補食するヘビやカラスだって、生きるために食うんだ。摂理に反しないか。」


「ええ~。ツバメを助けましょうよ。なんだってヘビの味方するんすか。それに、ツバメって、人里に住むんだから、人とともに生きていく鳥でしょ。人が助けるのも自然の営みの一つですよ。共生です。共生。」


「わかったような、わかんない説明だな。ヘビも人里にいる気がするけどな。確かにコロニー化してなきゃ、巣がわかるから人が巣に戻せるけど。」


「そうですよ。」


「じゃぁ、どうする? 糞も鳴き声も雛の落下も防げない。ツバメを助けりゃ、当然にさらに増える。だから、被害も増える。どうするよ? 」


それがわかれば、とっくにしています。

田中先輩にわからないものは僕にもわからないです。


ツバメを保護したいんだから、巣の撤去はできないし、保護するんだから巣を作られないようにする対策も講じられない。


本当に、何ができるんだろう。



考えても良いアイデアなんて出てこない。そこで、まず、田中先輩と課題を整理することにした。


はじめに、道の駅を利用するお客の気持ちで考えよう。

巣はテラスにたくさん作られているから、糞害と雛の落下は問題だ。だって、壁から離れていても、食べているテーブルの横に糞が落ちてるなんで、嫌な気持ちになるし、衛生面で好ましくない。

トイレの出入口にも巣があった。普通にトイレに入って、頭の上に糞が落ちてくるのも嫌だ。せっかく、手を洗って、髪型チェックして出たのに、糞が落ちてきたら、げぇぇってなる。デート中だったら最悪。


鳴き声は、数羽であればさえずっている声に癒されるけど、集団だと五月蝿い。雛の鳴き声は、どんな鳥でも甲高いから、気になりはじめたら耳につくんだ。昨年は30以上の巣が確認できたと聞いた。

う~ん。

でも、爆走族のバイクのパラララ、パララララに比べたら静かなもんだ。そう考えると大丈夫か?

いや。比較がよくないか。


巣立ちまで雛を守るという点では、補食するカラス対策をしなければならない。カラス対策っていっても、鳥避けみたいなことはできないよな。ツバメも寄り付かなくなっちゃう。

落ちた雛も問題だ。落ちた雛はカラスだけでなく捕食する奴らを呼び寄せてしまうから、直ぐに対応しなくっちゃいけない。巣がわかれば良いけど、戻す巣がわからなくなるとヤバいな。そのためにも、落ちてしまった雛はすぐに拾わないと、雛がヨタヨタ動いてしまう。


補食者はカラスだけじゃない。例えば、飼い猫。

壁は登りにくそうな場所だから、わざわざ巣を狙いはしないだろうけど、落ちた雛は違う。自分の飼い猫が落ちたツバメの雛を咥えて見せに来たら、ゾッとする。それにしても、猫はなんで獲物を見せに来るのかな。


それに、落ちても元気ならいいが、無残な状況なら、お客も気持ち悪くなるし、高病原性鳥インフルエンザではないかと不安になる。

やはり。職員がこまめに見回らないと駄目だな。


道の駅の立場からも、死骸の放置は良くない。衛生的に汚いところでは食品は買いたくない。客足が遠退き、直売所の売り上げに影響が出てしまう。万が一、なんかの感染症が起きたら、責任問題になるし、その噂だけで売上が激減だ。大問題だ。


う~ん。どうすりゃいいんだ。


田中先輩も机をトントンしながら考え込んでいる。

どう考えても、対策が難しい。


「道の駅だけの対策じゃぁ限界があるな。そもそも被害をなくすことはできないんだ。やはり、客にも協力してもらおう。そのためのツバメ対策を考えよう。」

そのための?

「客に協力してもらうための、ということっすか?」


「そうだ。名付けて『キャプテン・ツバメ大作戦』!」

・・・。

ええー。何、それ。

どこかの漫画からパロってますよね。

何をするのかわかんないし、なんか、嫌な予感しかしません。

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