<その後>図書館の鳩
「田中さん! これ。これ。このオオタカ!?」
図書館の出入口のすぐ横のスペースに、オオタカの写真が展示してあった。前に見せてもらったから間違いない。掬水酒造の掬祐くんが撮ったものだ。
「あぁ。なんか図書館の取組みだとか言っていたな。聞いてみるか?」
ちょうど、図書館職員が来た。今日は鳩の被害について対策を相談したいと言われている。
「こんにちは。白浜造園です。今日はよろしくお願いします。」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします。まず現場の御案内から。その後事務室で対策の相談と提案をいただく形で良いでしょうか。」
揃いのエプロンを着た穏やかそうな年配の女性だ。話し方も、ゆったり柔らかい。
田中先輩は頷いてから、なにげに展示の方を向く。
「なかなか良いアイデアですね。」
「はい。あの後、職員皆で話し合いまして、オオタカも含め、この雑木林の豊かさや有り様を利用者の皆さんに知って頂き、理解を深めて頂く取組みを行っていこうという案がでたんです。運良く東中学校の生物部の生徒の皆さんにも御協力いただきまして、とても和むと言いますか、良い展示になりました。」
雑木林の散策路の植生の地図に、野鳥が写真付きで紹介されている。中学生のお手製だ。
この生態系ピラミッドは誰が作ったのかな。リアルだ。オオタカの上にカラスがいるよ。カラス、でかっ。見ているだけで楽しくなる。
「これが意外に利用者には好評で、写真を確認して散策路に戻る人や、毎日のように観察に来る人もいらっしゃるんです。あ。その分野の蔵書も増やしたんです。私達、職員はあらためて、図書館は本を貸し出すだけでなく、教育機関としての役割もあるんだと気づかされました。本当に勉強させて頂きました。」
嬉しそうに話す。
雑木林はちょうど紅葉がはじまり、木漏れ日の中、はらはらと色付いた葉を落としている。この散策路の散歩は気持ちが良いだろうな。
今回の現場である屋上には、何体もソーラパネルが設置されていた。複合施設でもあるため、非常用電源としても活用するためだ。そのパネルの下に鳩が巣を作っていた。
「こちらなんです。どこでも巣を作る鳥だとは聞いてましたが、コンクリートの上にも作るんですね。驚きました。数羽なら目を瞑ろうかと思ったですが、数が増えてきまして。」
羽や糞などが散らばり、臭いもする。確かに、そろそろ対策をした方が良い。
「ソーラパネルがあるから、上から見つけられにくいのを分かっているのでしょう。」
『上』から、つまり、オオタカやカラスから身を守っているんですね。なるほどです。
「最近は雨水がつまりがちですし、コードを囲う小さなボックスのようなものに入り込んでいることもあって。非常用ですのでショートしては困ります。また、建物のメンテナンスのことも考えると、やはり対策を講じたいんです。」
彼女が指差した先を見ると、羽などがつまって雨水が流れず、苔や草木が生えはじめていた。
「わかりました。有害鳥獣捕獲と予防策のセットで提案させて頂きます。」
これまでニコニコと穏やかな表情のままだった女性は、あからさまにほっとした。
田中先輩はその様子を見て笑っている。
「あの後、何羽か鳩の死骸が発見されたんですか。」
「はい。実は何回か。展示があるので利用者には説明できますが、それでも、いつ見ても気持ちが良いものではありません。触るのもちょっと。」
本当に嫌なようで顔をくしゃりと渋い顔をつくる。
「鳩が減って、その数も減るとよいですね。」
彼女は涙目でウンウン、ウンウン頷いていた。




