第38話 猿④
♪ピロロロン♪
防災無線が流れている。
家に帰り、テレビをつけると、またサルが放送されていた。夕方の繁盛しているスーパーで大騒ぎになっている様子だ。怪我人がでた後、テレビは手のひらを返したように、サルを完全に攻撃的な害獣として報道している。
サルは、スーパーの店先にある果物を狙っているようだった。近づいては店員に追い払われ、また近づき、ときどき屋根で様子を伺う、それを繰り返している。店先の果物棚にはビニールシートが被され、果実を簡単には盗れないようにしてあった。それでもサルは目の前にある美味しい果実を諦めきれないようで、じっと様子を伺っている。味を覚えてしまったんだ。
あ。モモちゃんだ。
バリバリに警戒心を剥き出しにして、サルに唸っている。モモちゃん、女の子なのに偉いぞ!
モモちゃん、頑張れ!
でも、リードが電柱に繋がっているから、サルは強気だ。気をつけて。逃げていいんだよ。僕も怖くて逃げちゃったんだ。
モモちゃんとサルの間に誰かが入った。
ん?
あれっ?
やっぱり、木山さんだ。
モモちゃんは木山さんの壁ができて、いっそう攻撃的になる。
そこに猛ダッシュしてくる犬が!
あれは!
シロ!
そして、ハァハァ息を切らして興奮したまま、あの般若の面でサルを睨みつけ、牙を剥き出してヴゥ~ヴゥ~と低く唸る。頭を低くし臨戦体制だ。唸りながら後ろ足を掻きはじめた。
サルがその顔面の恐さに一歩後ずさる。
リードが繋がってないことにも気がついた。
「ヴゥ〰ゥ、ブヴォン」
の低い唸り声と同時にシロが一歩踏み出すと、ビクッ!とサルは身体を震わせ、一目散に逃げていった。
さすがシロ。やったね。怖い顔は伊達じゃないね。
店員さんは念のため逃げた後もチェックし、シロのリードを握る。川中さんが手を上げてヘロヘロになりながら走って来てるよ。
川中さん。お疲れ様です。
モモちゃんも頑張ったね。
モモちゃん。すっかり木山さんを信用しているね。あぁ。甘えている。可愛いな。
シロはその様子を眺めているよ。
シロ。そんな切ない顔すんな。大丈夫だ。きっとモモちゃんはシロの勇姿を見ていたよ。
あれっ?
そういえば木山さん、研修でいなかったんだよね。トトロの家を一緒にやる予定だったのに、田中先輩と2人でたいへんだったんだ。
ん?
モモちゃんがいるってことは、タカヨさんもいるよね。
え¨~。木山さん。
いったい、どこで研修だったのよ。
その後、サルは警察官と市役所職員に市内を追い回され、翌日、そこからずいぶんと離れた九根川の河川敷で目撃された。それが、県内で最後の目撃情報となった。




