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第33話 祭りとカンムリカイツブリ⑤

カラオケ大会は、昨年より出場者も観客も多かった。


「エル・オー・ブイ・イー、ゴーゴーひろし! アイラブ、ユーラブ、ひろし!」


木山さん、ひろしって言うんですね。

すんごいオバちゃんだな。少し垂れ目で穏やかで優しそうな雰囲気なのに、真っ赤な口紅をさして、色紙を貼った団扇を振って、蛍光色のレイ持って。ハッキリ言うと、ここは田舎の公園なので、その格好と蛍光色のレイは浮いています。木山さん、こんなコアなファンがいるんですね。スーパー銭湯のムード歌謡のアイドルようです。


「ひろしちゃぁ~ん! ガンバってぇ!」


僕が、アレっと声援しているオバちゃんを指差す。

田中先輩は微妙な顔です。

「・・・ああ。・・・まぁ。なんだ。」

あ。テレビも撮ってるよ。


僕は、このオバちゃんと一緒に応援するのかな。・・・、同類と思われちゃうよ。


「ほら。行くぞ。今日は木山さんの応援に来たんだ。」

田中先輩がオバちゃんに御辞儀する。

「私達も一緒に応援させてください。」

「まぁまぁまぁまぁ。ありがとうございます。」

オバちゃんは満面の笑顔だ。凄く嬉しそう。


そして、

「「エル・オー・ブイ・イー、ゴーゴーひろし!!」」」


田中先輩はノリノリで一緒に応援する。オバちゃん、はしゃぎすぎです。僕はちょっと恥ずかしい。司会の人も応援が凄いですねって、どう触れて良いのか悩んでいる。

あぁ、やっぱり一緒にやらなきゃダメっすか。


「木山くん。ガンバ!」

あ。タカヨさんだ。

木山さん、照れているよ。顔が赤くなっている。タカヨさんの腕にはモモちゃんもいる。


「まぁまぁまぁまぁ。ふふふ。」

オバちゃんはその様子を見て、嬉しそうに笑っている。


隣のシロも、そわそわしだした。僕に目で『モモちゃん、いるね、いるね。』って訴えて、意味なくその場をぐるりぐるりと回りだす。

人も多いし落ち着かせよう。

「そうだね。モモちゃん、いるね。良かったね。」と腰を曲げてシロの頭をなでる。

それを見て、田中先輩が叱る。

「シロ! オスワリ!、鈴木くんが応援できないでしょっ!」

「くぅ~ん。」

いや。僕は応援できなくて良いんだけれども。


あ。サヤカちゃんだ!

手を振ると気がついてくれた。手には僕の作ったヘチマタワシだ。あのヘチマタワシで身体を洗ってくれるのかな。嬉しいな。


田中先輩は僕の顔をじとっと見て

「お前もシロと同じような顔してるんじゃない!」

その大きな声で、立ち上がろうとしたシロは、慌ててオスワリに戻る。そのまま胸を張り、僕の目を見て『僕はいい子にしているよ。いい子だよ。』と、いい子アピールだ。


はぁ。仕方ないなぁ。

恥ずかしいけど、僕もやろう。

手を高く振りあげて、「「「エル・オー・ブイ・イー、ゴーゴーひろし!!」」」」

応援に参戦した。


まあ。やってみると楽しい。

酒も飲まず合法的にドンチャン騒ぎしているみたいだ。シロもオスワリを我慢できず、立ったり座ったりを繰り返し、応援に参戦だ。


伴奏がはじまり、木山さんが歌いだすと、皆が静かになり歌声に聞き入りはじめた。


「ワオォーン。ヴォン。ヴォン。ワオォォン。ワオォーン。」

しかし、興奮冷めやらぬシロだけは、ノリノリで遠吠えを始めた。


木山さんも苦笑だ。ただ、シロの遠吠えと木山さんの歌声はベストマッチしていて、さらに間奏では他の犬まで遠吠えし始めるから、木山さんまで、途中のコーラスを『ヴオォ、オオォン。ヴォン。オオォン。』と犬の真似をしたりして、なんだか、とても和やかな雰囲気になった。

お祭りはドタバタしたけど、結果的にはとても楽しかった。


その日の夕方、飾り羽の美しいカンムリカイツブリがテレビで紹介されていた。怪我をして1羽だけ寂しく泳ぐ様子を映しながら、アナウンサーは釣り人のマナーの悪さを嘆き、お茶の間の話題の一つとして、お茶を濁していた。

クビアカツヤカミキリには全く触れられず、お膳立てした守る会の人は、まるで漫画のようにキ〰️ッ!っとハンカチを握りしめて悔しがっていた。

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