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第31話 祭りとカンムリカイツブリ③


「あ。良かった。いた。田中さんだ。」

ブースに掬水酒造のお孫さんの掬佑くんが訪ねてきた。

「おぉ。どうした? 食べていくかい?」

「いえ。あの。川で綺麗な鳥を見つけて、種類がわからなかったから、また、名前を教えて欲しいと思って来たんです。」

田中先輩にスマートフォンの写真を見せる。

「へぇ。カンムリかな? 菅原さん、これカンムリですよね。」

「ん?」

菅原さんは一緒にスマートフォンを覗きこむ。

「良く撮れているね。どこにいたの?」

「そこ。」

「そこ? ・・・、???、そこぉ?」

菅原さんが目を見開き二度聞きしている。掬佑くんは大きく頷く。

菅原さんは鍋蓋をしめ、ビニール手袋をススツと外した。

「田中さん。確認しに行こう。この時期にこの辺りでカンムリカイツブリはいない。君、案内してくれるかい? 」

さすが鳥獣保護管理員だ。判断が素早い。菅原さんは後ろで話し込んでいる猟友会のメンバーに少し席を外すと伝える。井戸端会議中の重鎮達は、聞いているのかいないのか、不安になるような返事だ。

「鈴木さん、少しの間だけ手伝いをお願いできる?」

ええ~ぇ。それは、ないでしょ。

もうじき昼時だよ。かきいれ時だよ。

きっと忙しくなるよ。


しばらくすると、田中先輩が双眼鏡を取りに戻って来た。どうやら本当にカンムリカイツブリらしい。それを聞いて、後ろにデーンとしていた猟友会の重鎮方もぞろぞろと席を立つ。

僕も行きたい。そわそわしていると

「鈴木さん。店番してるから行って来て良いよ。実は少し座りたいんだ。できればシロを連れて行って。」

イノシンの豚汁を食べ終わった川中さんが店番をしてくれるという。

「でも、悪いです。それに、そのままカラオケ大会の応援に行ってしまうかもしれないので。」

「誰か戻って来たら私がそっちに行くよ。本当にもう少し休憩したいんだ。」

「いいんですか?もうじき昼だから、ちょっと、忙しくなるかもしれませんよ。」

「皆、すぐに戻って来るでしょう? それに、シロは今は大人しいけど、ここは食べ物の場所だからさ。」

シロはモモちゃんのいる方向をジッとみつめオスワリしている。すっかり恋するオスの瞳になっている。

「シロ。行くよ。」

リードをぐぅっと引っ張ってもオスワリし続ける。川中さんはやれやれという顔だ。

「こういうところが、かわいいところでもあるんだけどね。大変なのよ。」

仕方なく、強引に立たせる。

シロは何度も振り返りながら、諦めきれない様子だった。



現場に行くと、お揃いの蛍光オレンジのベストを着た猟友会の重鎮達が話し込んでいる。

「やっぱり、カンムリカイツブリだよな。」

「この辺りでカンムリが留鳥になっている場所ってあったか? 」

「いや。聞いたことがない。この上流の浄水場の辺りに冬場はいたけど、この時期は見たことがない。渡りだと、ちょっと早いだろ?」

「そうだよなっ。」「冬鳥だよな。」とお互い確認しあっている。カンムリカイツブリはこの辺りでは渡り鳥なんだ。一部の地域では留鳥になり繁殖もしている。

「1羽だけって、おかしくないか。」

「やはり何かあるな。怪我してないか?」

全員が水面に浮かんでいる1羽のカンムリカイツブリに注目した。


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