表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
30/88

第30話 祭りとカンムリカイツブリ②

「ほら。これはストロベリービネガー味ですよ。あ、アップルビネガーもあります。これはピーナッツですね。蒸したササミにかけたら担々風になるのかな。」

それは、担々(麺)でなく棒々(鶏)の間違いではないでしょうか?

木山さんは、1つ1つ味を確認しながら楽しそうにドレッシングを袋にいれている。すると、後ろから主婦の軍団がガンガンに攻めてきた。僕達がサクラなってあっという間に詰め放題に人が集まって来たんだ。

「何をチマチマやっているの。ほら、こうするのよ。」

ビニール袋をぐわっと取りあげ、ぐぃ~っと手で膨らませ、ドレッシングをわし掴みすると、片手でぐいぐい入れ込む。

「はい! あんたのもやってあげるよ。ほら。」

僕の袋も引ったくる。隣の木山さんは放心状態だ。そんなにショック受けなくても。大丈夫です。ストロベリービネガー味も、アップルビネガー味も入ってますよ。


主婦軍団に形だけの礼を言い、そのまま猟友会ブースに行く。味噌と酒粕の良い匂いがぷーんと漂ってくる。蛍光オレンジのベストを着た人の良さそうなおじさんが、鍋をかき混ぜていた。田中先輩はその横でレジをしている。

「田中さん。」

木山さんが声をかけると、

「ありがとう。来てくれたんだ。ぜひ食べていって。」

こういうときは言ったもん勝ちだ!僕は叫ぶ。

「田中先輩。御馳走様です!。」

すると、田中先輩は大袈裟にぶすっとした表情をながらも「仕方ないなぁ」と言って、自分のポケットから小銭入れをだす。

「いいよ。いいよ。田中さん。お金はいい。今、誰も並んでないし、内緒にしとくから。」

「菅原さん。すみません。」

鍋をかき混ぜていた人が田中先輩の手を止める。

菅原さんは猟友会から選出された鳥獣保護管理員なんだと紹介してくれた。アホウドリは菅原さんと捕まえたんだ。ちょっと、見たかったな。


「確か、君はわな免許を取ったんだよね。良かったら猟友会にも入らないかい?若手が不足しているんだ。」

狩猟者も減っているし、狩猟禁止区域も増えているから、猟友会は、加入者が激減している。だから、各地区猟友会でこういったジビエ試食会をしたりして、周知活動を行っている。

さっそく勧誘だ。若手って、もしかして、こういうときの手伝いしなくちゃいけないんだよね。

ここは逃げるが勝ちだ。

ごまかすように苦笑いをし、周りを見る。誰か来ないかな?

あ。掬水酒造のお孫さんだ。祭りに来てたんだ。前より少し日に焼けて健康的な感じだ。


ん?

いた!

あれは、シロ!

こっちに気づけ!

走って来い!

来い!

・・・

くぅ~。

こう思うときに限って、シロは気がつかない。


「あれ。もしかして木山くん? 」

少し痩せていて、上品な大人の女性って感じの人だ。木山さんの同級生かな?

まぁ、誰かわからないけど助かった。

「・・・タカヨちゃん?」

「やっぱり。木山くんだ。見た目が変わってたけど、雰囲気でわかったわ。」

「今はこっちに住んでいるの? 都内でバリバリのキャリアウーマンしているって聞いたけど。」

「まぁね。いろいろあったのよ。」

頭を傾げておどけてから、抱いていた犬を地面に放す。コーギーだ。

僕の視線に気がつくと

「モモっていうのよ。」


コーギーはかわいい。フサフサの柔らかい毛なみに桃のようなプリンッとした真ん丸のお尻、そのお尻をマリリンモンローのようにフリフリ、フリフリしながら歩く。

僕は屈んで掌を見せ、モモに匂いを嗅いでもらう。早くフサフサの毛を撫でたいけど、安心してもらうまで我慢だ。


そこに左の方から、何かがすんごい勢いで走ってくる気配が!

この気配は! ?

シロ!!


シロ、ハァハァしているし、目が飛び散っていて怖いよ。川中さんがリードをグイッと引っ張り、静止させる。それでもぐいぐい引っ張り、こちらに向かって歩く。

僕でなくモモちゃんに一直線!? それも、我慢できずにお尻に直行だ。

「あ”~。シロ。もう。お尻くんくんしすぎ! 恥ずかしいでしょ。」

グッとリードを引っ張り、引き留める。僕はシロと向き合い『メッ!』と注意する。

『どうして、お尻くんくんは犬のあいさつでしょ?』って顔しない!

挨拶でも、レディのお尻に鼻は突っ込みません! がっつきすぎ!

目が飛び散っているし、心なしかほっぺも赤い。そんなにがっつくとレディに嫌われるよ。

ほら、タカヨさんも笑っているよ。飼い主さんが穏やかそうな人で良かったよ。

シロは納得いっていない様子で、仲良くなりたいんだアピールでお尻を追いかけようとする。

「シロ! コラ! 」

「もう、すみません。」

「良いんですよ。シロちゃん、モモと仲良くなりたいのよね。」

シロは、『いいの?いいの?』って嬉しいそうな顔だ。シロ、遠慮という言葉を覚えなさい。


「木山さん。同級生? 食べ終わったら祭りを案内してあげたら? どうぞ、美味しいですよ。 一杯200円です。」

田中先輩、売り方が上手いです。

結局、木山さんが支払っているよ。

「時間は大丈夫?」

タカヨさんはウンウン頷きながら、リードを左手に持ちかえぐるりと回転する。モモちゃんが後ろに回り込んだんだ。シロは嫌われたな。

「あ。あのブースのドレッシングはオススメなんだ。そこで入手したドレッシングにあわせて、地場産の直売ブースで野菜を買おうと思っていたんだ。」

タカヨさんは木山さんの購入済みドレッシング袋を覗きこむ。

「ふふふ。ふふ。私も買おうかな。食べてから行こう。連れてってくれる?」

木山さんは嬉しそうに頷くとテーブルまでエスコートする。僕も行こうと思ったら、田中先輩に止められた。

なんで?立ち食いなんてやだよ。

半強制的にレジの椅子に座らされた。

えぇ~。猟友会のブース。僕は手伝わないよ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ