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第27話 グリーンカーテンの後始末(ヘチマ編)①

グリーンカーテンは、つる性の植物をカーテンのように建物に沿わせて育てるものだ。日光を遮ったり和らげることで、室温の急激な温度変化を抑えるため、節電・省エネ効果もあると言われている。

最近では、剪定など他の依頼にあわせて相談されることが多くなった。会社もグリーンカーテンをお客様へのサービスとして考えていて、一緒に頼むと材料費くらいしかお金をとらない。

この間、グリーンカーテンを設置した福祉施設では、利用者がキュウリの収穫を楽しみにして、水をあげるのが当番制になったと聞いた。そんな話を聞くとなんだか嬉しくなる。


会社に設置したグリーンカーテンの世話は僕の仕事だ。今年はヘチマだ。昨年はゴーヤだった。豊作すぎて、みんなで分けても食べきれないほどなって、しばらくゴーヤは見たくない。だから、今年はヘチマにしたんだ。


そして、今日は、ヘチマでタワシを作る。

自分は初めてだ。


収穫したヘチマを一か所に纏めておいたら、木山さんが3つのグループに分けてくれた。大きさかと思ったら、『成熟度ですよ』と言われた。

まだ、小さい実もあったけど、今日の作業にむけ全て収穫した。実がなくなったら蔓の根元を切り、枯らしておく。そうしないと蔓が網から外れないんだ。今日の仕事は、タワシ作りを終え、枯れた蔓の撤去までできたら満点だと言われた。


さっそく、木山さんが、タワシの作り方を教えてくれた。

作り方は簡単だ。種をとり、適当な長さに切って、鍋で煮込んで柔らかくする。柔らかくなったヘチマをきれいに洗い、繊維だけにする。残った種などをとり除き、乾かす。


話をしているそばから、木山さんが黄色く成熟したヘチマをとり、自分の太ももにパーンとぶつけた。底が、パカッと蓋がとれるように抜け、ヘチマを振ると中からザザザッ、ザザザッと種が落ちてくる。


「おおぉ!」

新聞紙を敷いていたのは、このためか。


「こちらのグループの種は来年の種まき用ですので、別にしておいてください。それ以外は未熟なものです。それに、未熟なヘチマはこんな風には簡単に種は出てきません。」

1本のヘチマから数えきれない量の種がでてくる。すぐに新聞紙の一面は埋まる。そこに日枝さんが様子を見に来た。


「やってますねぇ。鈴木さん。上手くできたら社長がお客様に配ろうと言ってましたので、頑張ってください。丁寧にね。火傷しないようにね。」

日枝さんは、いつも、にこやかで丁寧な言葉使いだか、仕事には、自分なりの拘りというか、手順があって、それが実に細かい。

今回も、配布用ならヘチマは短めに切った方が良いとか、取れる種は煮る前にできるだけ取っておく、火傷するから菜箸でなくトングでやりなさい、煮たヘチマは熱いので水に一度つけなさい、皮をむくときはゴム手袋をしなさい、それに、換気扇は絶対に回すこと、意識して水を飲みなさい・・・ets。もう、たくさんで、途中から、はじめの方の指示がよく分からなくなる。


そして、よく分からなくなった僕に、木山さんがフォローしてくれる。

「とにかく、丁寧に、安全にやってほしいということですよ。」

はじめから、その一言でよかったんじゃない?


でも、やってみると、日枝さんの注意事項がよく分かる。量があるから流れ作業のように行う。炊事場は熱気でむんむん蒸れる。換気扇を回さないとダメだし、汗をかくので水を飲まないと倒れる。菜箸だと握るのに疲れてきてヘチマを重たく感じる。水に浸けても完全にヘチマの中まで冷えてないから、ゴム手袋しないと火傷する。


お昼休みも御飯を食べながら頑張って、まだ煮る作業が終わらない。もう、へとへとだ。こんなに時間がかかると思っていなかった。やっと最後のヘチマグループだ。煮込んでいるときの熱気と匂いで、なんだか気持ち悪くなってきた。

ヘチマを鍋に入れると、ドカッと椅子に座り、少し休憩だ。ああ、冷たい炭酸が飲みたい。シュワ~ッてするやつ。こんな温くなった水ではなくて、そう、キンキンに冷たいやつ。


グツグツ煮える音が響く。そろそろかな。椅子から立ち上がり鍋を覗き込む。


「あれっ? ん? 繊維がない? あれっ?溶けてる?」

トングで感触を確かめる。ヘチマは鍋の中で消えていた。

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