表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/88

第13話 鳩②

「本当に鷹なんですか。」

少年を見送ると、警察官が疑わしげに再度確認してきた。

「猛禽類は獲物の首を狙うんです。

たぶん、鷹の種類だと。

ほら。空にいるでしょ?

旋回している。

首が短くて、凧のカイトのような影が飛んでいるでしょう?」

その場にいる全員が空を見た。

小さなゲイラカイトのような影が宙を旋回している。

「獲物をガラスの壁面に追い込んで、逃げ場をなくして首をガバッって、狩りをしてますね。狩りの途中で人が来たので置いて逃げたんでしょう。」

雑木林からガラスの壁面までのルートを手で示しながら、実際に見ていたかのように説明する。

「この雑木林は小鳥が多い。きっと良い餌場なんですよ。」


「良い餌場?」


「ええ。きっとこの近くに巣がありますね。縄張りにしている鷹がいるんです。」

「・・・頭のない鳩の死がいが、今後も続くということですが?」

「そうですね。たぶん、また来ますね。

野生でも崖に追いこんで獲物をとるのは狩りの手法の1つですし、ここで獲物をとれたという成功体験がありますからね。」

田中先輩が空を見ながら説明していると、納得していない警察官が会話に割り込んでくる。

「本当ですか? ここは街中ですよ。

それに切り口が刃物のようにスパッっとしてます。獣に食いちぎられた様子ではない。ほかに大きな外傷もないです。」


「逆に、人がやったんじゃ、こんなふうにスパッとはいきませんよ。鳩は生きてるんですから捕まえるだけで大騒ぎです。羽根が散らかったり、何かしら形跡が残ります。傷をつけずに捕まえるなんて熟練の猟師だって難しい。」


言われて見ればそうだ。

人間の方が狩りは下手だ。まして、少年なんて出来るわけがない。

警察は、初めから人がやったと疑っていたんだ。だけど、そこが間違ってたんだ。


「首を一発で仕留めている。実に狩りがうまい。

たぶん、獲物の大きさによって狩りの仕方も変えている。

これまで見つかったはのは、鳩の死がいなんですよね?

鳩より小さな鳥は足で捕まえて、そのまま巣に持ち帰っているんでしょう。巣に持ち帰って食べるから食い散らかしてもない。

それに、その場で食べれば、カラスに横取りされますしね。

この鷹は人の住む街中での狩りに慣れている。

住む場所がなくなって人里に住み始めた鷹の子世代か、孫世代か、シティ派の鷹という印象ですね。

まあ、実際はわかりませんので、あくまで私の見解ですが・・。」


「た、対策はあるんですか?」

「うーん。正直、難しいですね。

ワナにかかる鳥ではないですし、街中で鉄砲は撃てないですから。

それこそ警察に捕まってしまう。

それに、まだ、種類まではハッキリしませんが、もしかしたらオオタカではないかと思うんです。もしそうなら、県の準絶滅危惧種ですからね。捕獲はもう無理です。

諦めて静観するしかない。」

館長は何も言えず、固まっている。


「たびたび・・・あるんです。首から先がなくて、清掃を受けてくれているシルバーサービスの御婦人方は触るのも嫌がって、職員を必ず呼ぶんです。職員もちょっと気持ち悪くて。」

館長は目線を下げながら、本当にどうしたらよいのか途方に暮れている様子である。


図書館の雑木林は、剪定をあまりやっておらず、ビオトープのように青々と茂って自然豊かだ。落ち葉や枯れ枝も根の周りに置いたままで土も乾燥しておらず、木の実もいたるところに落ちている。

だから虫も多く、それを捕食する小鳥も多い。隠れる場所も多い。

そして、公共の施設で人の出入りが多いから、気が強くて集団で襲ってくる面倒なカラスがいない。

鷹は良い場所に目を付けたと思う。


「一度、市の環境課か、県の環境事務所に相談してみてはいかがでしょう? 

駆除するだけが解決策ではないので、予防や共存の例を知っているかもしれません。

そこからお願いして、鳥獣保護管理員に鷹の種類を特定してもらうのも1つです。

申し訳ないが、私では、もう少し近くで見ないと判別できない。

それに、もし本当にオオタカなら保護に一生懸命なNPOがあるので、捕獲した後からわかったらトラブルになりますよ。」


鳥獣保護管理員は、違法捕獲や鳥の不審死など、野生動物の監視員のような役割を果たしている。主に猟友会や日本野鳥の会のメンバーから、県が専門家として任命する。

当然に野鳥に詳しい人が勢ぞろいしている。ときどき、別のマニアもいるけど。

この間なんか、コウモリ(を主とした哺乳類)を研究している学者さんで、熱く語る内容がサッパリわからなかった。

まあ、原因がわかっていないなら、鳥の不審死という問い合わせただけで、しばらくの期間、この雑木林を巡視してくれる。

鳥獣保護管理員は共通して野生動物が好きだ。

だから、バードウォッチングとかを趣味にする人もいて、オオタカが営巣していると聞けば、必ずその後も巡視する(趣味でだけど)。


ショックから立ち直っていない館長をそのままにして、警察は事件性がないからとそそくさと帰って行った。

あっさりしたものだ。

きっと、今日のことは沢山ある仕事のひとつ、すぐに忘れてしまうんだろう。泣かしてしまった少年のことも。

大丈夫かな。

心のキズになってないといいけど。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ