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オフィスに戻ると皆どことなく落ち着かない様子だった。緊張した面持ちで嶋田さんが立ち上がる。ごくりと生唾を飲み込むと、ゆっくり口を開いた。
「……ど、どうでした?」
「いやぁ。二人とも僕に負けず劣らずのイケメンだったよ」
「マジですかあああああ!? 次は絶対私も行きますうううう!!」
「ちょっと何の話してんのよ! 今は顔の話じゃないでしょーが!!」
「ちなみにどんな感じのイケメンでした?」
「そうだなぁ。ひとりは僕みたいな、学生時代生徒会長をやってそうな爽やか正統派タイプのイケメンで、もうひとりは実は優しいんだけど風貌が不良少年って感じのクール系イケメンかな」
「うわああああああ超見たいですぅ!!」
「ああもう! さっさと仕事の話しろ!! じゃないと嶋田さんがヤバイから!!」
……うん。皆相変わらずのテンションだ。
「え? ああ、仕事の話ね。なんとか承諾してもらえたよ」
「本当ですか!? よ、良かった!!」
嶋田さんの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。相当切羽詰まっていたらしい。
「明日またデザインの説明に行くから資料用意してもらえる? あ、エクランの家具と食器の写真も忘れずに」
「イエッサー!」
元気を取り戻した嶋田さんがキビキビと動き出した。良かった。これで私も通常業務に戻れる。
「ああそうだ。高瀬さん」
「はい?」
「今回の仕事、君に嶋田くんのサポートをお願いしたいんだけどいいかな? 主にエスポワールとの調整役なんだけど」
「えっ、私にですか?」
ようやく肩の荷が下りたと思ったところだったのに。まさかのご指名だ。
「うん。元々高瀬さんはあの店の常連だし、相手もある程度知ってる人の方が仕事しやすいだろうからさ」
「私は確かにあの店の常連ですけど、ほんの顔見知り程度ですよ? ちゃんと話したのは昨日が初めてですし……」
「そうなの? でもまぁほら、高瀬さんが居た方がこっちも何かとやりやすいから」
社長がチェシャ猫のように目を細めて笑う。何かを企んでいるような、意地の悪い笑顔だ。祥子さん曰く、こっちの笑顔が社長の本性なんだそうだ。私もそう思う。
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Yさんへ
謝らないで下さい。勝手な事をして迷惑をか
けたのは私の方なんですから。
それに、あの件がなければYさんとこうして
手紙のやり取りをすることもヤマトを共同で
飼うことも出来なかったんですから、それを
考えるとフラれて良かったって思います(笑)
Yさんのおかげで元気が出ました。励まして
くれてありがとうございます。
少し仕事が忙しくなりそうなので、私も返信
が遅れるかもしれません。その時はごめんな
さい。では、また。




