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 Rさんへ

 気にしないで下さい。

 可愛がっていたのはそちらの方が先みたいで

 すし。

 名前、気に入ってくれたみたいで安心しまし

 た。引かれたらどうしようかと内心ヒヤヒヤ

 してたので(笑)

 ついでに僕の事はYとでも呼んで下さい。僕

 だけイニシャルを知ってるのは不公平だから




 Yさんへ

 さっそくYさんと呼ばせていただきます。

 引いてませんよ(笑)

 逆に面白いと思いました。

 ところでYさんは猫が好きなんですか?




 Rさんへ

 ありがとうございます。

 ええと……そこまで猫が好きってわけではな

 いです。でもその猫は特別かな。こうやって

 素敵な縁を繋いでくれたし。

 そういえば、黒田に金の王冠の美味三昧をあ

 げたらとても喜んで食べていました。




 ヤマトが手紙を届けに来るのは基本的に夜の一回。多い時は朝晩の二回。あとは気まぐれで数回来たり来なかったり。


 なんだかんだでやり取りは続いている。


 そして、何通目かの手紙でようやく相手の名前……というかイニシャルがわかった。


 Yさん、というらしい。


 やすし、ゆうき、ゆうた、ゆうと、よしき……。Yのつく名前なんてこの世にごまんとある。その中で一つを見つけるのはほぼ不可能だろう。でも、予想するくらいは許してほしい。


 ふと、顔に笑みが浮かんだ。


 こうやって少しずつ相手の事を知っていける事がなんだか嬉しく感じる。まるで恋に恋する乙女みたいだ。学生の頃に戻ったような初々しい感じが妙にくすぐったい。……なんて、いかんいかん。私こんな事考えるキャラじゃない。どうやら遥香ちゃんの恋愛脳が移ってしまったようだ。頭を左右に振って雑念を払う。


 そんな私をヤマトは不思議そうに見つめていた。


「……特別な猫だってさ。良かったねぇ、ヤマト」


 ぽつりと呟くと、心なしかヤマトも嬉しそうだった。

 でも、素敵な縁とかそういう単語を恥ずかしげもなく書いちゃうあたり、彼はよく言えばロマンチスト、悪く言えば中二病患者なのだろうか。何歳なのか知らないからあまり強く言えないけれど。



 Yさんへ

 私にとっても、ヤマトは特別な猫なんです。

 落ち込んでる時に元気づけてくれたり、た

 くさん救われましたから。

 おお、なんだかロマンチックな表現ですね

 ヤマトが繋いでくれた縁、大事にしましょ

 う。

 あと餌、喜んでくれて良かったです。



 ……いや。こんなことを書いてしまう私も、だいぶロマンチストなのかもしれないが。





「やぁ~ん美味し~い! しあわせぇ~!」


 遥香ちゃんはフォークを片手に持ったままとろけそうな笑顔で叫んだ。よほどここのパンケーキが気に入ったんだろう。一口食べる毎にふにゃふにゃと幸せそうに笑っている。良かったね、ほんとに。もっとお食べ。


 今日のランチは約束した通り女子三人で外に食べに来た。テーブルの上には綺麗にデコレーションされたパンケーキが三種類ほど乗っている。


「チョコとホイップクリームの組み合わせはやっぱり最高ですぅ! 王道万歳!!」

「あんたよくそんな甘だるい食べ物に甘だるい飲み物選べるわね」


 祥子さんはブラックコーヒーを飲みながら顔をしかめる。ちなみにパンケーキもモカホイップを注文している。ちょっと苦めの大人セレクトだ。


「甘だるいって、これミルクココアですよぉ! 祥子さんこそよくそんな苦いの飲めますよねぇ」

「そりゃあたしはあんたと違って大人だから」

「ひどーいなんですかそれぇ! 私だってもう立派な社会人ですよぉ!」

「は? 立派な社会人? ならまずその頭悪そうな喋り方なんとかしなさいよ」

「ひどーい! これは癖なんだからしょうがないじゃないですかぁ! 直そうと思ってもなかなか直らないんですぅ!」


 祥子さんと遥香ちゃんの息の合った掛け合いが繰り広げられる中、私は一人もくもくとパンケーキを味わう。うん、美味しい。

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