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4話 一日の終わり

 

「ネフェリム。終わったぞ」


「くかー。くかー」


 俺が掃除しているというのにいつの間にか呑気のんきに寝てやがった。

 しかし、言動がいちいち腹立つヤツではあるが腐っても美少女だな。仮面を外した所は初めて見た。

 これで性格が良かったら、完璧なんだがな。

 まあ、そんな女存在するのかすら怪しいが。

 俺はまとめた、ゴミの量を見て呆然とした。

 なんでこんな事になったんだろう。

 元はと言えば全てあの落下からが始まりだ。一体誰がこんな事を?


「あー疲れたぜ、休憩するか」


 勝手に休憩していいのかは分からないがとりあえずあるじが寝ているので自己判断することにする。

 家の中を散策していると、恐らく使われていないであろう、一室があったのでここを俺の部屋(勝手に)と言うことにしておこう。


 さて、風呂にでも入るか。異世界にも風呂はあるだろう。


「くかー。くかー」


 にしても家に初対面の男がいるのに、よくこんな無防備な状態で寝ているな。

 流石に、寝込みを襲うようなことはしない。

 見た目は良くても、中身はゴミ同然だ。

 そう、あのパンパンになったゴミ袋のように。



 やっぱりひと仕事終えた後は風呂に限るな。

 窓の外はもう真っ暗だ。異世界に来たから数時間は立っている。

 さて、ここが風呂か、蛇口が無いな。どうやってお湯入れんだよ。

 風呂場は浴槽以外何も無い。ということは当然、シャワーもない。困ったな。異世界では何もかも違うってか。ん?

 俺は壁に書かれた模様が目に止まった。円の中に図形が何重にも重なった青い模様だ。恐らく魔法陣だろう。ネフェリムが出したものに比べれば小さいが、これも魔法発動のキーである可能性はあるだろう。

 触るか? 触っちゃうか? よし、触っちゃおう。 

 俺は好奇心を抑えきれず壁の青い魔法陣に触れてみた。

 触れた瞬間、魔法陣は輝きだし、浴槽にお湯が満たされていく。

 ……おお、凄い。ちょっと感動した。

 この世界では魔法が日常的に使われているのだろうか。

 よく見ると天井の照明も魔法陣から光が発せられているものだった。


「ああー 生き返るわぁー。傷に染みるなぁ」


 俺は湯に浸かり、落下で受けた傷を癒す。生き返って痛みは無いが、傷だけが残っている。


「俺、これからどうなるんだろう。……ネフェリムの使用人ねぇ……」


 性格は少し曲がっているが、根は悪いやつじゃないのだろう。

 彼女は何者なんだろう。

 《死霊術師(ネクロマンサー)》——小説やゲームでは何度か目にする言葉だ。アンデッドや死者に関する魔法を使う者がそう呼ばれる。

 ちょっと不気味な能力だと思ったけど、案外かっこいいかもな。


 それよりも………………。

 俺はこれからどうしたらいいんだ?

 このままじゃ自宅には帰れねぇし、ネフェリムには奴隷扱いされてるし、詰んでね?


「クソっ!」


 俺は握り拳を浴槽の水面に叩きつけ、バシャンと水しぶきが天井まで上がる。


「にしても、魔法かぁ~俺も使って見てぇなぁ~」


 狭い風呂場によく響く。そんな事を言っている余裕が俺にあるのかは分からないが、チャンスはいつか来るだろう。

 死霊術師なんてものがあるのだから、きっと正統派の魔術師とかもいるはずだ。

 手から炎や雷を出したりして、それで凶悪なモンスターをバッサバッサ討伐して、「キャーワタル様素敵! 抱いて!」なんて言われながら過ごして…………ぶくぶくぶく。


 おっとつい長湯してしまった。危ない危ない、のぼせて溺れ死ぬ所だった。


「やっぱり異世界最高ー! さよなら日本! また来てハーレム!」


 そんなことを言いながら、高校の制服にもう一度袖を通し、俺は勝手に決めた自分の部屋へ向かった。


「服も調達しないとなぁ」

 

 さっき外で見た人達と比べると、俺の服は奇抜だ。

 この世界にあった格好良い服、いや装備が欲しい。

 ポケットに手を突っ込むとスマホが入っていたのを思い出した。当然、異世界に電波は通っていない。カメラかライト位しか使い道は無いかもしれないな。

 それにスマホは充電は切れたらただの文鎮と化してしまう。

 一応電源は切っているが、スマホは電源を切ってもある程度の電力を消費する。

 これは日本からの記念品として取っておくか。

 風呂から上がってもネフェリムは未だにソファーで寝ていた。


「はぁ、異世界生活一日目がこれとか、先が思いやられるな」


 俺は勝手に二回の部屋に置かれていたベッドに潜り、異世界生活最初の一日を終えた。

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