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30話 怒りに燃えて蹲る者

 南門に到着した俺達はモンスターに備え、バリケードや落とし穴、爆弾、大砲といった罠や兵器を仕掛け、迎撃準備を整える。

 見たところ、一面の銀世界だ。モンスターの一匹も見当たらない。


 それからしばらく、モンスターが来るのをずっと待っている。

 途中、ネフェリムが雪だるまを作って遊んでいたので、俺がその雪だるまの頭を蹴り落としてやったら泣かれたくらいの事しか特に異常という異常は無かった。


 なぜこのクソ寒い中、ずっと外でつっ立ってなくては行けないんだ。

 かなり厚着をし、加熱魔法をかけているがそれでも貫通してくる程の寒さだ。そして暇だ。



 グゥウウウウウ――

 そういえば朝慌てて、準備したから飯食べてなかったな。


「お、兄ちゃんもしかして飯食ってねえのか?」


 隣にいた、鎧を着た強面の男が話しかけてきた。


「ああ、そうなんです。朝から慌ただしかったもので」


「なら食っとけ、これ。食べねえと力が出ねぇぞ」


「ありがとうございます!助かります!」


 なんて優しいんだ。異世界の冒険者達は皆ヤクザみたいに怖いものと勝手に思っていた。後で何かお礼でもしよう。


「もう帰りたいんだけどー。……………………もう、いっその事皆でアンデッドになってこの街をゴーストタウンにしない?そうすれば死に怯える必要なんかないわ」


「それは名案だな。ゴーストならもうお前の世話をする必要も無くなる」


「馬鹿な事言ってると本当に死にますよ」




 ――ガァアアアアアアアアアア!


 そんな頭の悪い会話が繰り広げられていた中、どこからかモンスターの咆哮が聞こえてくる。

 しかし、街の外には姿はない。

 というか後ろから聞こえてきた気が……


「――街だ!街に入られている!全員戻れぇー!」


 まさか街に入られているとは……一体どうやって入ったんだ?各門には冒険者達が待ち構えていたはずだが?


 その時、遠くに巨大な翼の影が見えた。遠くからでもその大きさがわかる。

 そうか、街の壁を超えて、空から中に入ってきたのか。

 巨大モンスターは大体街の中心辺りにいるはず。辿り着くには時間がかかる。


 ――グェアアアアアアアアアア!


 モンスターの咆哮と共に、 巨大な火柱が立ち上る。

 どこかの班がモンスターと戦闘を始めて魔法を放ったのだろう。


「ねぇ本当に戦うの!? 私絶対死ぬ未来しか見えないんだけど!」


「俺もだよ!ああ、もうどうすればいいんだ!」


 火柱が上がった後も、遠くから見えるモンスターの翼は動き続けている。あの程度の攻撃では、倒れないという事だ。


 雪の中、全速力で街を駆け回った結果そのモンスターの正体がようやく明らかとなる。


 巨大な体躯は漆黒の鱗に包まれ、地を穿つ、四本の足の先には青く鋭い爪が、地面のレンガタイルに突き刺さっている。額から伸びた、深青の巨大な角は天をも貫くように剃りたっている。

 そして遠くからも見えていた巨大な翼は棘に覆われて翼膜は青く染まり、所々傷ついている。恐らく飛行の為だけでなく武器としても使用するのだろう。


 まぁ、全てひっくるめて分かりやすく言うと【ドラゴン】だ。

 まさか、こんなラスボス級モンスターが街のど真ん中に降り立つなんて誰が想像できようか。ゲームバランス崩壊もいいところだ。



 昔からドラゴンには憧れていた。ゲームやアニメには欠かせない超王道モンスターであり、知らない者はいないだろう。

 そんな画面の中から飛び出してきたようなそれをいざ目の前にするとかっこいいなどという感情は湧かない。

 代わりに湧いたのは恐怖心だった。


「ネ、ネフェリム、レフォン。に、逃げるぞ。こんなの無理だ」


「はわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわわ」


「あ、ああ―――――」


 普段はモンスターを見ると即刻、叩きに行くレフォンも今回はあまりのドラゴンの迫力に硬直して動かなかった。


 ドラゴンがこちらを睨みつけている。

 琥珀色の眼が南門班の俺達の存在を捉えた。

 直ぐには襲って来ない。様子を伺っているのだろうか。ドラゴンは深く呼吸をして、こちらをじっと見つめている。




 ――ジ、ジジジジジジジジジジッ



 ドラゴンの口から火花が散り始め、大きく口を俺達に向けて開く。

 ドラゴンと言えば、アレだ。ブレス以外ないだろう。


「ヤバい!お前達逃げろぉ!」


 南門班の誰かが大声をあげる。先程俺に飯をくれたあの冒険者だ。


「ワタル!ネフェリム!捕まって下さい!『スピード・エンハンス』!」


 俺とネフェリムはレフォンにしがみつき、速度増強でその場から離脱する。

 ドラゴンの方を振り返ると口内から、つい目を覆ってしまう程の強烈な光が発せられた。


「う、うわああああああああああああああああああああああああああああ!マントが!私のマントがあああああああああああ!うわあああああああああああ!」


 ドラゴンが放った炎のブレスは一直線に放射され、射程内の建物などを焼き尽くした。


 俺達は間一髪ブレスから逃れ、近くの家の影に身を隠した。

 ネフェリムのマントは半分以上焼け落ちていた。あともう少し、逃げるのが遅れていれば三人揃って炭に変えられていただろう。


「嫌だ、私もう帰りたいよー!うわああああああああああああああああああん!」


「ヤバいです。あんなの勝てる訳が…………」


 ネフェリムは大泣きした。これはいつもの事なので問題ない。しかし、普段強気なレフォンまでもが諦めかけていた。

 ここはもう逃げるしか…………


「おらああああああああああああああ!」


「喰らいなさい!『トルネード』!」


 ドラゴンの近くでは他の冒険者達が勇敢にも戦っている。彼らを見捨てて逃げるなんて事ができるだろうか。


「覚悟せい!やあああああああああああ!」


 そこには陽真の姿もあった。

 俺も戦おう。どのみちこの街に逃げ場は無いんだ。


「ワタル?まさかあのドラゴンと戦うの?」


「ああ、そうだ。今戦っているアイツらが負けたら俺達の死ぬ」


「私も行きます!」


「レフォンまで!? じゃあ私も行くわよ!きっと何か弱点とかがあるはずよ!」


 ん?弱点?


「そうだ!それだよ!お前たまには役に立つじゃないか!」


「急にどうしたのよ?あとたまにってなによ!たまにって!私はいつでも皆の役に立ってるわよ!」


 猛反論してくる、ネフェリムを放置して俺は避難ように準備していた鞄からグリモワールを取り出す。


「《検索!ドラゴン!》」


 ――クガアアアアアアア!


 いつの間にかドラゴンはいつの間にか、俺達の近くまで迫って来ていた。


「私が時間を稼ぎます!二人はここであのドラゴンの弱点を探していて下さい!『パワード・エンハンス』!」


 レフォンはドラゴンに杖を振りかざした。しかし、その頑丈な鱗を破る事は出来ずに弾き返されてしまう。


 検索したはいいが、肝心の奴の情報が出てこない。

 ドラゴンと検索しただけで、アイスドラゴンやらバハムートやら色々な名前が検索候補に上がってくる。


「はっ? ドラゴンってこんなに沢山の種類がいるの?」


「あのドラゴンの情報は…………ネフェリム。あのドラゴンの種類は分かるか?」


「分からないわ、ドラゴンには結構な種類がいるから」


 幸い、グリモワールには各種の画像が載っているため判別は出来そうだ。

 俺はページをめくりまくって、あのドラゴンと一致するものを探す。


「あった!黒い体に青い角!コイツだ!【ニーズヘッグ】!」


 えっと弱点は…………()か。少しは正気が見えてきた気がする。

 俺とネフェリムは家の影から出て、戦闘に参加する。


 ――――――戦闘開始!


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