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29話 異常気象、再び

 ああ、もう嫌だ。日本に帰りたい。もう外へいけない。


 ネフェリムとレフォンにはどう思われているのだろうか。

デザイアとデートしている所を街のいろんな人に見られてしまった。

 俺はこの後、変質者として扱われるのだろうか。ただ世間体を気にし過ぎだろうか。

 学校サボりがちだった俺のクラスメイトからの扱いは空気と同じだった。

 周りの視線とか、周りにどう思われているとかそんなことを気にしてしまう。

 誰もお前の事なんてどうとも思ってねーよって言われそうだが、その事を分かっていてもなお、周りからの視線を気にしてしまう癖がある。


 考えても仕方ないし、もう寝よう。今日は何もする気になれない。

 ああ、明日ドラゴンが世界が滅ぼしてくれればいいのに。


「グリモワール。七時に起こしてくれ」

 《左様》


 本当に優秀な本だコイツは。

 目覚まし機能があると知ったのも、つい最近のことだ。

 声質や起こしてくれる台詞まで好みに設定できるとは恐れ入った。この本を作った人は天才だと思う。


「『スリープ』」


 俺は自分に催眠魔法を掛けて、夢の中へと落ちていく。

 使い方を間違えているかもしれないが、どんなに寝付けなくても一瞬で寝れてしまうのだ。


――――――――――――――――――――――――


 《おはよぅ~お兄ちゃん!朝だよ!急いで早くしないと学校遅れちゃうよ~!》

「…………」

 《あれっ!今日土曜日だった☆ じゃあ、わたしお兄ちゃんと一緒に寝ちゃお~と!》

「ふわぁ~あ」


 ああ、素晴らしい朝だ。

 こんなに気持ちのいい朝は生まれて初めてだ。

 やっぱり異世界に来て良かったな。やっぱり持つべきものは家族でも友達でも仲間でも金でもない。グリモワールだ。

 これさえあればどんなに辛いことがあっても半年は頑張れる気がする。

 気分のいい内に朝食を済ませるとしよう。


「おはよう諸君。素晴らしい朝だな」


「大変ですワタル!」


「どうしたレフォン?君らしくないな、可愛い顔が台無しだよ」


「今はそんなボケてる場合ではないのです!」


「じゃあ何があったというんだ?」


「緊急警報です!超危険モンスターの襲来が予報されました!」


「集会所ギルドの情報によると『今日、なんかしらのモンスターがカルデラを襲う』と」


「曖昧すぎだろ!」


「街には避難勧告が出ています!冒険者はギルドで防衛作戦を立てているので、急いで準備をして下さい!私はネフェリムを起こしてきます!」


「そんなにヤバいの?」


「ヤバいですよ! ほら、見てください!」


レフォンが窓のカーテンを開けると外は見事に猛吹雪で包まれ街全体が真白となっていた。

 冒険者達はそのモンスターを何とかしてくれと言われた気がするが、正直、俺達は足でまといにしかならないだろう。

 レフォンはともかく、俺とネフェリムは絶望的な弱さなのだ。

 きっと強いモンスターが来るのだから、俺なんて秒殺間違いなしだ。


「ネフェリム!ネフェリム!起きて下さい!この街にモンスターが来ますよ!」


 二階からレフォンの大声が聞こえてくる。

 とりあえず俺は、衣類、食料、金、武器、スマホにグリモワールをまとめていつでも逃げられるように準備を整えておく。


「朝からなんなのよもう、もう少しだけ寝かせてよー」


「そんな事言ってる場合じゃありません!」


 ネフェリムを起こしてきたレフォンが下に戻ってくると。早速、ローブを羽織り、杖を持って戦闘準備万端ですとでもいいだけな様子だ。


「レフォン、まさか戦う気じゃないだろうな?」


「当然でしょう!何をすっとぼけた事を言っているんですか!」


「マジで?俺とネフェリムも一緒に戦うの?」


「え?何?戦うって、一体どういう状況なの?」


「冒険者だったら、勿論二人にも戦場に出てもらいますよ!」


「こ、殺す気か!相手の正体がまだ分からないんだぞ!無対策で挑む様なものだ!」


「それでも街を守るのは私達冒険者の役目です!」


「う……分かったよ」


「私は家で寝てていいわよね?ほら、外は寒いし」


「「駄目に決まってる!」」


 準備を整えた俺達は、外に出ると。世界の終わりかと思う程、吹雪で荒れていた。

 寒さも過去最高レベルに寒く、いよいよ何かが起ころうとしている事を予感させる。

 積雪も多いし、こんな状況で戦闘なんて可能なのか。

 幸い、道真ん中は除雪されており、歩くこと位はできる。

 街には人が全くいない。住民はもうとっくに避難してしまったのだろう。



 結局、防衛作戦に参加する事となった俺達は集会所ギルドで作戦の説明を聞いている。


「このクラスの警報が来たということは、相手はかなり強力なモンスターであることが予想される。今ここにいる冒険者を四班に分けて、各方角の街の門の前で迎撃する。モンスターが一匹とは限らないから油断しないでくれ」


 ギルドの集会場で指揮に優れているであろう、多分ベテラン冒険者の男が正確に指示を出す。


 俺とネフェリムとレフォンは南門の防衛に割り振られた。

 俺達以外にもそれなりに強そうな人がいる。ちなみに陽真とは別の班になってしまった。

 俺達の所へモンスターが来ない事を祈るばかりだ。


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