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2話 史上最悪のヒロインは死霊術師

 ローブを被った女は徐々に俺の死体へ近づいてくる。

 俺は女の持つ魔法の杖?に注目した。

 濁ったような血を彷彿ほうふつとさせる黒寄りの赤色。

 魔法の杖と言えば先端に水晶が付いていそうなものだが、女の杖にはそれが見当たらない。

 が、代わりに見るものを恐れされる心臓を模した物体が付いている。

 そして、左半分が欠けた髑髏どくろの仮面をつけている。


 どこからどう見ても、正義の魔法使いとか、明るい魔法少女的なイメージはない。

 間違いなく、この女はヤバイ方の魔法使いだ。魔女と言った方が似合うだろう。

 関わらない方がいいかもしれない。


「おーい。大丈夫?あなた?」


 おどろおどろしい声を想像していたが、案外若くて綺麗な声だった。

 魔法使いらしき女が声をかけるも、当然俺の体は動かない。

 すると女は俺の死体をゆすり始めた。

 死んでいると気づくのも時間の問題だ。

 女はさらに激しく俺の死体をバシバシと叩き始めた。


「ねぇ、こんな道端で寝てたら風邪ひくわよー」


 女は俺の死体を懸命けんめいに叩き起こそうとする。

 心配してくれてるのか、髑髏の仮面に心臓の杖と、どこからどう見てもヤバいタイプの人間だが、人は見かけで判断するものじゃないな。

 俺は先程心の中で、関わらない方がいいなどと思ってしまった事を恥じる。

 だが、この女が死んでいると気がつくのも時間の問題だ。

 俺はどうすることも出来ないため、ただ成り行きを見守る事しか出来なかった。


「冷たい……。まさか……! 死んでる?」


 女が俺が死んでいることに気づいたようだ。

 さーて。この女は死体を見つけたらどんな反応をするのか。モニタリングといきますか。


「やったわ!若い男の綺麗な死体!丁度いいわ。よいしょっと」


 悲鳴を上げるかと思いきや、女は既にそれが死んでいることが分かると突然嬉々として俺を引きずりながらどこかへ歩き始めた。


 …………………………え? 


 ちょっと待ってくれよ。一体何が丁度いいんだ。 俺の体をどうするつもりだ!


 俺は死んでいるのだからこの世界とは関係ないと言えば関係ないし、霊体の俺では全く干渉かんしょう出来ないのだから、女の奇行を止める術も無い。

 でも十七年間使ってきた俺の体の行く末くらいは知る権利はあるだろう。

 しばらく女を尾行し続けると、ある家に女は入っていった。俺もドアをすり抜けて女の家に入る。


「……ふんっ、はぁ、疲れたわね」


 女は俺の体をリビングの中央へ乱雑に投げ捨てた。

 俺の体を運んで疲れたのか息が切れている。


(おい! 雑すぎんだろ! 人の死体投げるってどういう神経してやがるんだ!)


 流石に酷い。いくら死んでいるからって物のように扱われるとは思いもしなかった。


(にしてもきったねえ部屋だなあ)


 部屋はお菓子の袋だの本だの足の踏み場も無いくらい散らかっている。

 正直言ってゴミ屋敷だ。

 若い女が住んでいる家とは到底思えなかった。


「よし、いい死体も手に入ったことだし、始めるとしましょう」


 え?……何を始める気だ?

 死体の善し悪しは分からないが、死体を手に入れようとするこの女の考えはもっと分からない。

 女は俺の死体付近の床に置いてあった物を退かし、持っていた心臓の杖を構えて、円形の模様を出現させる。恐らく魔法陣だ。

 メルフェルの時と似ているな。

 女は俺の死体を魔法陣の上へとずるずると引きずって移動させる。


 俺の死体を使って何をどうするのかは分からないが、とりあえず生き返らせるつもりはないことだけは分かった。

 恐らく、俺は生贄いけにえか何かだろう。


「よし準備完了ね!」


 女は心臓の形をした、不気味な杖を持って詠唱えいしょうを始めた。

 正直どうなるのか気になるが、俺の体で好き勝手されるの気に食わない。


(おい! 何をする気だ! 俺の体だぞ! 止めろ! このクソ女聞いてんのか!)


 当然聞こえているはずがない。女は詠唱を黙々と続けている

 。

(食らえ! ゴースト☆パンチ! うおおおおおおおおおおおおおおおお!)


 俺は女の顔面に容赦なく連続パンチを打ち込む。女に対して顔は酷い? 知ったことか、くたばりやがれ。

 しかし、渾身の攻撃もむなしく、彼女の体をすり抜ける。

 そうこうしているうちに、女は魔法を完成させてしまった。

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