27話 その正体
「いましたね。あの二人」
「ええ、そうね。全くイチャイチャしちゃって」
「ネフェリム、もしかして妬いてるんですか?」
「馬鹿言わないで頂戴!誰がワタルなんかを!」
私とレフォンはワタルの愛人らしい、デザイアとか言う女を調査するため、二人を尾行させてもらうことにした。
今まで愛人だなんて居なかったはずのワタルが急に彼女持ちになるなど不自然すぎるのよ。
ワタルはぜんっぜんイケメンじゃないし、お金持ちって訳でもない。
となると、ワタルが雇った彼女代理か、ワタルが謎の組織とかに騙されているかとしか考えられないのよね。
ワタルに一目惚れする女がいるのだとしたら、一度見てみたいわね。
そして何よ!あの絵に書いたような美少女は!しかもエルフ!更にはメイド!
「レフォン。なんであの人はメイド服なんて来ているのかしら?」
「私もそれはずっと疑問に思っていました。今朝すこしデザイアと話しましたが、メイドって感じではなかったですね」
「となると……」
「となると?」
「そのデザイアとか言う女は、色んな男を魅了し自分に貢がせようとしているんだわ!」
「まさか!」
「いやだって、見てみなさいな!あの、距離感!どう考えてもワタルを誑かしているようにしか見えないわ!」
デザイアはワタルの右腕を自分の方へ寄せて、抱きつくようにして歩いている。
百歩譲って、二人の関係が恋人だとしても、最近知り合ったにしては距離が近すぎるわ!これは絶対裏があるはずよ!
「そう言われて見れば……そんな気がしてきました。もう少し様子を見ましょう。確たる証拠を掴むのです!」
「ええ。使用人と言えど、ワタルに何かあれば、主である私の高貴たる品格が下がってしまうわ!」
「もう下がる品格なんて無いと思いますけど……」
――――――――――――――――――――――――
昼過ぎ、私は物陰に隠れながら二人の尾行を続行中。
ずっとつけて回っていたら、お腹が空いてきたので、レフォンにはアンパンを買いに行かせている。
「ネフェリム!アンパン買ってきました!」
「ねぇレフォン。レフォン。あの人達、ワタルの冒険者仲間達だわ!ワタルは私が知らぬ間に知り合いが増えてるの!」
「あっ!久しぶりです!」
目の前に現れたのは冒険者の男二人組だった。
「おう! レフォンじゃないか!」
レフォンと知り合いみたいだ。というか知らないの私だけ……?
「レフォン!いい所に!」
「どうしたんですか?」
「今さっき、レフォンの仲間のワタルとあったんだが……」
「いま私達もワタルを尾行しているんです」
「尾行?」
「ええ、あの金髪のエルフ。あれはもしかすると悪い女かも知れません」
「実は俺もあのエルフが少し気になりました。アレからは魔力の塊のような匂いがする……!」
「ねぇこの人達は一体誰なのよ?」
「え?ああ、冒険者仲間達の方々です。ほらたまに集会所ギルドで会うでしょう? で、こっちはネフェリム。パーティメンバーです」
「あなたもレフォンのお仲間だったのか!ちょうどいい、ワタルの恋人とやらを探っているんだよな?」
「そうなのよ!あの女は百ぱー黒よ!」
冒険者二人組もあのエルフが怪しいと踏んでいたみたいだ。
間違いないわね、あのエルフに一発分からせてあげる必要がありそうね
「魔力の匂いがするとはどういう意味ですか?」
「さっきワタルとエルフの二人と話した時なんだが。普通エルフからは妖精族特有の匂いがする物なんだ。俺は鼻が利くからな。エルフの姉ちゃんからはそれが無く、代わりに魔力の匂いがするんだ。普通に人間や妖精が持つ魔力とは違って、彼女は魔力の塊のように思える」
「どういうことですか?」
「あのエルフは人口的に作られた物なんじゃないかと思ってる。ってのが俺たちの意見だ」
彼らが出した答えは、あのエルフは人口生物と結論づけた。
「じ、人口生物って事?」
「そうだな。ワタルを騙してまで得られる何かがあるとは思えねぇし、俺たちが見た限りじゃ、あの男は高い魔力を持っている訳でもなければ、強い訳でもない。金目的のクソビッチかもな」
「ワタルが聞いたら泣きますよ」
「そう言えばワタル、人形を買うとかいってなかったっけ?」
ネフェリムが顎に指を当てながらそう呟いた。
………………………………………。
私達はしばらく沈黙した。
「人形……確かにそれなら合点があうな。しかし人形というのは……」
「あっ! 俺聞いた事があるぞ! グリモドールっていう、大人の……」
「「はっ?」」
ネフェリムとレフォンは同時に声を上げた。
そのグリモドールとやらをグリモワールを使って検索してみると……。
何やら凄い色気のお姉さん達の画像が出てきた。
えっ……まさかこれ……。
「レフォン、あなたにはまだ速いわ」
ネフェリムは慌てて、レフォンの目を隠す。
「は、はい……!」
顔が赤くなっている。隠すのが遅かったみたいだ。
ワタルは一体どこで知り合ったのかしら。
「これでデザイアが一体なんなのかがハッキリしましたね。まさか、私から借りたお金であんな物を買われるとは思いませんでしたよ! 今すぐぶちのめしに行きましょう!」
「待って、レフォン。今から私が会ってくるわ」
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