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26話 尾行

 《ワタル様。これからどこへ行きましょうか?》


「デザイアはどこに行きたい?」


 《ん~そうですね……。あっ、そうだ!折角いい天気ですし、草原でお昼寝でもしませんか?》


「分かった。そうしよう」


 《はいっ!》


 再びデザイアは俺の腕にしがみつくようにして、歩く。

 周りからの視線が少し気になるが。別に悪い気はしない。

 今の俺は誰もが羨む、プロのリア充だ!

 堂々と街中を闊歩かっぽし、気分はラノベの主人公だ。

 俺の望む異世界ライフが実現しつつある。このグリモドールをあと二、三体購入してハーレムを築き上げる。

 異世界サイコー!!


「着いたぞ。一応見晴らしはいいし、いいんじゃないか」


 《わあ!素敵な場所ですね!》


 街の中にある、少し盛り上がった丘の上。

 住宅街からは離れているため、ここなら誰かに邪魔される事はないだろう。

 俺達は丘の上で腰を下ろす。

 デザイアの頭を俺の膝の上に乗せてやると、デザイアはそのまま目を閉じた。

 腕は俺の腰に回し、抱きしめてくる。


 デザイアにはメイド服を着せているため、普通逆では?と思うかもしれないが、これで正解だ。

 俺は甘えたいんじゃない。甘えて欲しいのだ。

 だから俺はデザイアを甘えてくるような性格にしたのだ。


 《ワタル様。私、幸せです》


「ああ」


 俺も幸せだ。一生このまま、デザイアに甘えられ、甘えて生きていこう。

 俺はデザイアの頭を撫でてやる。

 彼女の金髪はとても、柔らかくて触り心地が良い。

 なんだかいい匂いがする。草原に咲き誇る花の匂いか。はたまた彼女の髪の香りか。

 とても気持ちが安らぐ。

 デザイアの撫でているうちに、意識が奪われて眠りについてしまう。

 目覚めた時には、いつの間にか朝だったのが昼になっていた。

 ――――――――――――――――――――――――


「ふわぁ~あ。おはようレフォン」


「ネフェリム!やっと起きましたか!」


「どうしたのよ。そんなに慌てて、ワタルにセクハラでもされたの?」


「ち、違いますよ!聞いて下さい!ワタルに…………ワタルに彼女が出来たんですよ!」


「……………………………」


「ネフェリム?」


「ぷっ…………………あっははははははははははははははははははははははは!」


「ど、どうしたんですか?」


「あのワタルが彼女って、ありえないわよそんな事!だって、あの普段は部屋に引きこもって、クエストでもレフォンの後ろに隠れたりしてたあのワタルよ?レフォン、夢でも見たんじゃないの?」


「そんなはずは!しっかりこの目で見ました!さっきなんてキ……キスまでしてたんですよ!」


「へっ…………本当なの?」


 レフォンはコクコクと頷いた。

 反応からして、嘘をついているようには見えないし……。まさか、本当に?

 ワタルに惚れる、人がこの世に存在するというの?

 このまま、結婚して寿退社なんてされたら……。

 私の使用人がいなくなるじゃないの!


「よし!レフォン!ワタルの彼女がどんな女か確かめに行くわよ!あんなニート予備群に彼女なんて作れるはずがないわ!」


「ネフェリム。それはニートに失礼ですよ。……ですが、私も少し疑問です。もしかしたらワタルが悪い女に騙されてるという可能性もありますからね。もしそうなら、仲間としてその女には制裁を加えてやります!」


「さあ!調査開始よ!」


「おおー!」


 ――――――――――――――――――――――――


「そうだ!デザイア。劇でも見に行か……」


 《劇ですか?いいですね!行きましょう!》


「あっ……」


 そう言えば、デザイアを買ったせいで今俺の手持ちはすっからかんだった。


「すまんデザイア。今俺、全然お金持ってなかったわ」


 《そ、そうだったんですか。また今度にしましょう》


 どうしよう。この後どこへ行こう。無一文じゃ遊ぼうにも遊べないぞ。日本ならまだしも、異世界には娯楽なんて殆ど無い。


「あ!ワタルじゃねぇか!」


 武装した男達が前から声をかけてきた。

 クエストを受ける時にたまに会う、冒険仲間だ。


「おう!おまえら!」


 《誰ですか?この方は?》


「ああ、俺の友達だ」


「お、おい……お前どこでこんな可愛い子とあったんだよ……!」


「え?まあな。この子はデザイア。俺の嫁だ」


「よ、よよよよよよ嫁!?なんて……事だ…………」


「まさかワタルに先を越されるなんて……」


 《だ、大丈夫ですか!しっかりして下さい!》


 地面に崩れ落ちて、絶望する冒険者仲間達。

 それにデザイアは優しく手を差し伸べる。


「しかも、めちゃくちゃ優しい……!」


「こんな美少女がこの世に存在していたなんて……!」


「そういう訳で、俺たちはこれからイチャイチャデートしてくるから、じゃあな」


 同じ冒険者仲間に自慢するのは気持ちがいい。

 いつも、羨む立場だったのにいつの間にか逆転しているなんて。

 しかし、バレないもんだ。人形とはいっても、もう人形と差し支えないレベルだ。



「お、おい」


「……んなんだ?」


「あのエルフ、なんかおかしくねぇか?」


「?……普通のエルフじゃないのか?」


「いや、俺からしたら普通じゃなかった」


「まあ、あれだけ美人ならな」


「そういう事じゃなくてだ……おかしいんだよ、まるで魔力の塊みたいだ」


「そりゃ、どういう意味だ?」


「そのまんまだよ。……何か嫌な予感がするな」


「そういうことなら後を付けるぞ」


 ワタルのとデザイアの後を付ける冒険者二人であった。

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