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1話 gameover time 00:05

「は?」

 

 俺は冷静になって玄関を閉めて、もう一度開く。

 やっぱり普通の青空だ。


「な~んだ! いつも通りの玄関じゃないか」


 きっと疲れているんだろう! そうだ、そうに違いない!

 だって冷静に考えてみればおかしくない? 家の向こうに空が広がってるんだよ?

 俺は、普段通りに「ただいま」と言いながら家に入り、綺麗に青空へと落下した。


「うわあああああああああああああああ!」


 どうなってんだよ! おかしいだろ! なんで落ちてんの俺!?

 全身に爽やかな風を受けながら自由落下する俺。

  下を見てみると建物の屋根が見える。

 …………え?まさかこれ?


「うわああああああああああああああああああ!ちょっと待てタンマ!タンマー!」


 ————ゴギッ。


 俺は頭から地面に落ち、体全体に強い衝撃がほとばしる。


(……いってええええええええええ! なんだよクソっ、落ちたのか?)


 どうやら生きているみたいだ、結構な高さだったと思うのだが。


(オラァ! 俺の家はどうなってんだ! だれもこんな劇的ビフォーアフターなんて頼んでねぇぞ!)


 ……………………。


 空に向かって叫ぶも、当然なんの反応も帰って来ない。

 聞こえる訳ないか。俺とした事が街中で叫んでしまった。


(!?)


 ちょっと待て!? ここ、どこだ?

 何処からどう見ても日本じゃない。街並みは西洋の建物。道コンクリートではなくて石が敷き詰められている。


(自宅がヨーロッパと繋がってしまった……)


 もしかすると、いやもしかしなくてもあの魔法陣のせいだろう。

 そのせいで俺はヨーロッパに転移させられた。

 ん? 転…移? 転…………移、異世界転移!


(そういうことかああああああ!)


 ここは異世界だ。ほら、だってよくあるじゃん? コンビニ行ったらその帰りにいつの間にか異世界にいたとかって話。

 よくよく見たらお店の看板とかも見た事無い文字が書かれている。

 うん、ここは絶対に異世界だ。さあ、早速この世界を探索してみようっと。


(それにしても痛たた……)


 ん? あれ? 全然痛くないな。

 というか痛みどころか、感覚が無い。

 地べたから這い上がると、妙に体が軽かった。

 まるで浮いているかのようだ。

 というか本当に浮いているような……?


(って、ええええええええ! な、なんだよこれ!)


 俺が目にしたのは、足元に転がった一人の男だ。

 黒髪で俺が今着ている制服と同じ服を着ている地味目な男だった。その男には見覚えがある。

 というか見覚えがあるもなにも何も俺自身なのだから。

 それだけではない。現在、自分の体が半透明になっている。

 今地面に横たわっている自分ではなく、中に浮いて意識のある自分だ。


(これはまさか、……死んだのか?)


 足には感覚が無く、フワフワと浮いている。

 今の俺は間違いなく幽霊だ。

 死んだ原因は言うまでもないな。落下死だ。


(おい! 聞こえるか俺の家を改築した奴! お前どうせならもっと地上にドア設置しとけ! どうすんだよこれ! 俺死んじまったじゃねえか!)


 声はやはり届いていないだろう。

 諦めるのはまだ早い、もしかしたら元に戻って生き返れるかもしれない。折角の異世界だし蘇生そせいができる魔法とかがあるかもしれない。

 ここは魔法の存在する世界なのだ。

 ゲームでは大抵復活の魔法とかがあったりする。

 ゲームと一緒にするのは間違いであることは重々分かっているが、今の俺にはそれしかこの状況を脱する術がみつからなかった。

 そもそも、異世界と言えど、命の蘇生なんてことが魔法ありきでも可能かどうか定かではない。

 完全にお祈りプレイだ。


(生き返れ!)


 と、念じても当然そんなことでは生き返るはずもなく。

 俺は一旦冷静になって、まず初めにどうするべきかを考える。

 このまま体に入ることで生き返ればいいのだが。

 俺は元の体に戻るべく試行錯誤するも、霊体では俺の体をするりと抜けてしまうだけだった。

 そして、この状態では物質に干渉できない事もわかった。



 まずは誰か呼んで、蘇生が出来る人を見つけてもらい、生き返る。

 よし、これで行こう。

 そんな美味い話がある訳ないが、それに賭けるしかない。


 俺は大きく息を吸って、夕暮れの街に叫ぶ。

 近所迷惑? こっちの方が迷惑してるんだ。それに緊急事態だ。仕方ない。


(おーい! 誰かあああ! 俺が死んでるんだ! 助けてくれえええええ!)


 助けを呼ぶも、静寂せいじゃくが街を包むだけだった。

 近くには誰も居ないか……。

 すると、遠くに男が歩いているのが見えた。

 あの人に何とかしてもらおう。

 フワフワと流れる風のように男の元へ移動する。

 幽霊ってのも……悪くないな。疲れないし、壁もすり抜けられるから、女湯覗き放題。


(すいません。そこの人、助けて貰えませんか?)


「…………」


(あの………………)


「ふわぁ……今日も疲れたぜ、帰って寝るか」


 男の真正面に立つもそのまま通り抜けられてしまう。

 もしかして俺は幽霊だから他の人には見えないし聞こえないということか。

 結局、男は倒れている俺にも、幽霊の俺にも気づかず、明後日の方向へと去っていった。


 …………どうしよう。早速詰んだ。


 幽霊になってしまった俺は自分の死体の元へ戻り、辺りををウロウロしていると、フードを被った不気味な杖を持った女がこちらへ歩いて来るのに気がついた。

 このまま真っ直ぐに来れば、確実に俺の死体に気づく筈だ。

 とりあえず、あの人に助けてもらおう。

 黒いローブを着ているので格好的に魔法使いとかそんなところだろう。

 よくよく考えてみたら、死体が道に転がっているなんて大事件だぞ。

 それに助けてくれる保証はどこにもない。


 普通はこのまま火葬かそうされて終わるのだろう。こんなことなら異世界なんて来るんじゃなかったな。



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