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13話 レッツ、マジック!

 

「「ただいまー」」


「…………」


 案の定、返事はない。

 ネフェリムが午前中に起きている所を、ここへ来てから一度も見ていない。アイツの正午起床は何とかならないものか。

 グリモワールでも適当に読むとしよう。

 ネフェリムに貰ってから、グリモワールで異世界の情報収集にハマっている。

 なんだか、ゲームや小説の裏設定を漁っているようでページをめくる手が止まらないのだ。

 さてさて、今日は何を読もうか。


【職業】


 この世界には様々な職業が存在し、職業によって行使できる魔法は異なる。

 冒険者は皆、職業ごとに役割を分担してクエストを行う。


 職業か……俺も何か魔法が欲しいな。


 職業に就くには、何かしらの魔法を覚えると自動的に習得できる。

 多くの魔法系統職には適正があり、人によって異なる。



 そして昼過ぎ――――


「――という訳だ、魔法を教えてくれ!」


「「はぁ?」」


「別にいいけど、あんた魔法使えなかったの?」


「今まで使っている所を見た事なかったので、まさかとは思っていましたけど、本当に使えないとは……」


 二人揃って呆れ顔を浮かべる。

 え? この世界の人は魔法を使えるのが普通なのか?


「頼む、教えてくれ!」


「しょうがないわね! そんなに死霊術士(ネクロマンサー)になりたいのなら教えてあげるわ!」


「なっ! 死霊術士ネクロマンサーよりも、付与魔術師(エンチャンター)の方が良いに決まってます!」


「なんでよ! ネクロマンサーの方がいいわ!」


「そんな、攻撃に使えない職業(ジョブ)のどこがいいって言うんですか!?」


「うるさーい!俺が覚えたいのはそんな奇抜で独特な魔法じゃないんだよ。ほら、手から炎を出したりとか、風の刃で敵を切り裂く、的な!」


「「つまんな」」


「なんでだよ!」


「そんなの普通過ぎて、全然面白みがありませんよ!」


「そうよ、もっとなんかあるでしょ!自分だけのオリジナルとか」


「俺は面白みなんて重視してない。正当かつ、強さを求めた魔法使いになりたいんだ」


 俺がそう思うのも、昨日の事だった。

 ある日、魔法使いのお姉さんが魔法の練習をしている場面に遭遇したのだ。

 立ち上る火柱、丸太を両断する水の刃、岩をも貫く光の矢。

 俺はこの時決心した。こんな風に強くなりたいと。

 そして、強いモンスターを狩りまくって、有名になって、それから清楚系美人な女の子と結ばれて、それから…………。


「ねぇ、さっきから何をニヤニヤしているのよ。気持ち悪いんですけど」


 そんな妄想をしていたら、いつの間にか口元が緩んでいたみたいだ。


「え? あ、いや、なんでもない。とにかく俺は魔法使いになりたいんだ」


「つまりは魔術師(ウィザード)に転職したいという訳ですね」


「そう、そういうことだ!」


「私が教えられるのは基礎だけですが、戦力アップに繋がるというのなら協力しましょう」




 それから、俺とレフォン先生の魔法訓練がスタートした。


「いいですか? よく見ていて下さい。『ファイア』――!」


「『ファイア』――!」


「その調子です。これで基礎魔法はだいたい終わりました。ここまでは誰でも出来ます、魔法使い職でなくともです。ですがここからとなると、少し難しくなります」


 俺達は早く朝から草原に出て、基礎魔法の練習を始めた。

 レフォンに毎朝叩き起されて外に引っ張り出されるのはなかなかの苦痛だ。

 それに早朝である必要性はないのだからもう少し寝させて欲しい。

 そんな過酷な訓練も次第に成果が現れ始め、一通りの基礎魔法は簡単に習得出来てしまった。

 魔法訓練からわずか、一週間である。基礎魔法と言われる位だし、簡単なのだろう。

 ファイアなんて、実にそれっぽい魔法だが、とても戦闘に使えたものではない。

 例えるならば、火の着いたマッチ棒を投げつけている様なものだ。

 基礎なんて所詮、その程度の火力しかない。


「……ですが、少しだけ工夫すれば基礎魔法でも戦えます 『マジック・エンハンス』――!」


 俺はレフォンの魔法から発せられた、光に包まれる。まるで感覚が違う。

 血管が熱くなり、体を魔力が巡っているのが感じ取れる。

 


「その状態で、火炎魔法をあの木に向かって撃ってみて下さい」


 俺は手の先に魔力を集中させ、魔法陣を構築していく。

 そして、――――。


「『ファイア』――!」


 俺の放った、ひ弱な筈の火炎魔法は大きな業火球と化し、命中した木を見事に焦がし、炭へと変えた。


「私の魔法があれば、ここまで威力が上がります。それに杖を装備すれば、更に威力は上昇すると思います」


「…………」


「あれ? どうしたんですか? そんな悲しそうな顔して」


「いや、結局レフォンに頼らなきゃいけないんだと思って……」


 そりゃ、素直には喜べない。

 結局レフォンの助けを借りているではないか。


「…………そこは敢えて触れなかったのに」


「やっぱり思ってたのか!」


「面倒臭いですね! いいじゃないですか! これでもネフェリムよりは活躍できますよ!」


 俺は今までアイツ以下だったのかと思うと少しだけ悲しくなる。


「へっくしゅん!」


「どうした? 風邪か?」


「そろそろ寒くなる季節ですからね。もう少し着込んで来ればよかったです」


「確かにそうだな、そろそろ戻るか」


「そうですね、そろそろお昼ですしネフェリムも起きる頃でしょう」


「そうだ! こういう時はアレだろ『ヒート』! どうだ、これで暖かくなったな」


「早速使いこなしてますね、基礎魔法!いつかきっと魔術師になれますよ!」


 レフォンは可愛くていい子だなぁ。

 ネフェリムとは大違いだ。

 俺たちは寒くなる前に、家へ戻った。


「で、ネフェリムは相変わらず寝てるのか」


「そうみたいですね、これはずっと前からなのですか?」


「多分な」


 俺もネフェリムと出会ってまだ三週間位しか経っていないから分からないが。


 さてさて、俺の適正職業はなんだろう。俺は早速グリモワールを開いて見てみる。

 一度手をかざすだけで、自分の生年月日や血液型と言った情報まで読み取れてしまうのだから恐ろしいものだ。


【適正職業:狩人ハンター


 はっ?

 いや、待てよ。魔法職じゃないじゃねぇか。



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