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短編集  作者: 石月 ひさか
AV上映会
28/28

4


「さて、どうするかな」


呟き、押し入れの奥から段ボールを引っ張り出す。


こんな事もあろうかと、昔仲間で回していたAVを取っておいて良かった。


暫く見ていない為、内容は忘れてしまったが。


「これは確か、新道がイイとか言ってたな」


適当に数本のDVDとイヤホンを取り出し、パッケージを開いた時だった。


「へぇ?お前、そんなのが好みなのか」


「!?」


突然後ろから深雪に声をかけられ、悲鳴にならない悲鳴を上げてしまった。


深雪は一瞬目を丸くしたが、腹を抱えて笑い出す。


「アッハハハハ!なんだよそのビビり方!気配に気付かないくらい夢中になってたのか?」


「……」


部屋に鍵をかけるべきだった。


そして、パンツを下ろす前で良かった。


万が一この最中を見られたら、立ち直れない。



「アレっつったら、アレだろ。ほら、パンツ脱いで──」


「あぁ。オナニー大会の事か」


深雪はしれっとしながら言い放ち、腹を抱えて笑い出した。


「あはは!懐かしいなぁ。そういやあったな。誰が1番遅くまで残れるかって。逆の時もあったけど」


「お前もやったのかよ!?」


あり得ない。


腕を引いて座らせ、怖い顔で詰め寄る。


「ちょっと待てよ。私にできるわけないだろ?ついて無いんだから。だからいつも、タイム係だったよ」


「…………」


絶句した。と同時に、やっぱり深雪を日本に残して行くんじゃなかったと後悔した。


肩を抱きながら、恐る恐る聞いてみる。


「まさかとは思うけど、俺がいない間──誰かにおかしな事されなかっただろうな」


「おかしな真似……?あ、当たり前だろ!だってあの時、みんな私の事を男だって思い込んでいたんだから」


「そうか、良かった」


もしも深雪に手を出した奴がいたらブッ殺してやろうと思ったが、幸いみんなもそこまでは馬鹿ではなかったようだ。


安堵の息を吐く。


深雪はふと笑みを浮かべると、身を乗り出して唇を重ねた。


突然の事に、目を丸くする。



「心配してくれたんだ。嬉しい」


「別に心配したわけじゃない」


目を反らし、ポツリと呟く。


「またまたぁ。心配してくれたんでしょ?大丈夫だよ。私、全部公一が初めてだからさ」


「深雪……」


小さく名前を呟き、そっと頬に触れる。


なんだか急に、愛しく感じた。


「あ、今抜こうとしてたんだよね?邪魔してごめん。それともタイム測ってあげようか?」


悪意のない無邪気な笑みで言われ、思考が固まった。


「ば、馬鹿な事言ってんじゃねぇ!!出て行けッ」


思い切り怒鳴り付け、部屋から追い出す。


深雪を妙な思考にしたのは新道達のせいだ。


日本に帰ったら、絶対にシメる。


ぐっと拳を握り、そう決意した。


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