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「さて、どうするかな」
呟き、押し入れの奥から段ボールを引っ張り出す。
こんな事もあろうかと、昔仲間で回していたAVを取っておいて良かった。
暫く見ていない為、内容は忘れてしまったが。
「これは確か、新道がイイとか言ってたな」
適当に数本のDVDとイヤホンを取り出し、パッケージを開いた時だった。
「へぇ?お前、そんなのが好みなのか」
「!?」
突然後ろから深雪に声をかけられ、悲鳴にならない悲鳴を上げてしまった。
深雪は一瞬目を丸くしたが、腹を抱えて笑い出す。
「アッハハハハ!なんだよそのビビり方!気配に気付かないくらい夢中になってたのか?」
「……」
部屋に鍵をかけるべきだった。
そして、パンツを下ろす前で良かった。
万が一この最中を見られたら、立ち直れない。
「アレっつったら、アレだろ。ほら、パンツ脱いで──」
「あぁ。オナニー大会の事か」
深雪はしれっとしながら言い放ち、腹を抱えて笑い出した。
「あはは!懐かしいなぁ。そういやあったな。誰が1番遅くまで残れるかって。逆の時もあったけど」
「お前もやったのかよ!?」
あり得ない。
腕を引いて座らせ、怖い顔で詰め寄る。
「ちょっと待てよ。私にできるわけないだろ?ついて無いんだから。だからいつも、タイム係だったよ」
「…………」
絶句した。と同時に、やっぱり深雪を日本に残して行くんじゃなかったと後悔した。
肩を抱きながら、恐る恐る聞いてみる。
「まさかとは思うけど、俺がいない間──誰かにおかしな事されなかっただろうな」
「おかしな真似……?あ、当たり前だろ!だってあの時、みんな私の事を男だって思い込んでいたんだから」
「そうか、良かった」
もしも深雪に手を出した奴がいたらブッ殺してやろうと思ったが、幸いみんなもそこまでは馬鹿ではなかったようだ。
安堵の息を吐く。
深雪はふと笑みを浮かべると、身を乗り出して唇を重ねた。
突然の事に、目を丸くする。
「心配してくれたんだ。嬉しい」
「別に心配したわけじゃない」
目を反らし、ポツリと呟く。
「またまたぁ。心配してくれたんでしょ?大丈夫だよ。私、全部公一が初めてだからさ」
「深雪……」
小さく名前を呟き、そっと頬に触れる。
なんだか急に、愛しく感じた。
「あ、今抜こうとしてたんだよね?邪魔してごめん。それともタイム測ってあげようか?」
悪意のない無邪気な笑みで言われ、思考が固まった。
「ば、馬鹿な事言ってんじゃねぇ!!出て行けッ」
思い切り怒鳴り付け、部屋から追い出す。
深雪を妙な思考にしたのは新道達のせいだ。
日本に帰ったら、絶対にシメる。
ぐっと拳を握り、そう決意した。
終