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「限界だ……」
真夜中にふと目が覚めた公一は、上半身を起こして頭を抱えた。
隣を見ると、月明かりに照らされた深雪が気持ち良さそうに眠っている。
一緒に暮らし始めて半年が経った。
初めは生意気なクソガキだった近藤は、本人の努力の賜物により、今やその面影もない程女らしくなっている。
あまり陽に当たらないせいか肌は白い。喧嘩も止めた為にケガも無く、筋肉も落ちて柔らかな体になっている。
もともと細身だった体は女らしい丸みを帯び、規則正しい食事をしているお陰か胸も育ってきた。
つまり今の『近藤』は、口さえ開かなければイイ女の部類に入る。
そんな女と就寝を共にして、何もするなという方が無理だ。
しかも公一は、彼女を妻にすると決めた程に愛しているのだから。
「おい」
顔を覗き込み、声をかける。目を開ける様子はない。
完璧に熟睡しているのを確かめると、そっと唇を重ねた。
一度離し、今度は長く。
恋人同士になっても、女として見られる事にはまだ抵抗があるらしく、体の関係は初夜にして欲しいと頼まれた。公一もそれは承諾した。
しかしその欲求は、日に日に増していく。
せめてキスでもして紛らわそうと思ったのだが、柔らかな唇の感覚を得て、更に欲求が高まってしまった。
「くそっ……」
軽く反応しかけている下半身を見て、悪態を吐く。
今すぐ力で捩じ伏せて犯してやろうと思えば簡単だ。
だがそれは出来ない。
仮にも生涯を共にしようと決めた相手なのだから。
そっとベッドから下りると、上着を羽織り、夜の街へ消えて行った。