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短編集  作者: 石月 ひさか
AV上映会
25/28

1


「限界だ……」


真夜中にふと目が覚めた公一は、上半身を起こして頭を抱えた。


隣を見ると、月明かりに照らされた深雪が気持ち良さそうに眠っている。


一緒に暮らし始めて半年が経った。


初めは生意気なクソガキだった近藤は、本人の努力の賜物により、今やその面影もない程女らしくなっている。


あまり陽に当たらないせいか肌は白い。喧嘩も止めた為にケガも無く、筋肉も落ちて柔らかな体になっている。


もともと細身だった体は女らしい丸みを帯び、規則正しい食事をしているお陰か胸も育ってきた。


つまり今の『近藤』は、口さえ開かなければイイ女の部類に入る。


そんな女と就寝を共にして、何もするなという方が無理だ。


しかも公一は、彼女を妻にすると決めた程に愛しているのだから。



「おい」


顔を覗き込み、声をかける。目を開ける様子はない。


完璧に熟睡しているのを確かめると、そっと唇を重ねた。


一度離し、今度は長く。


恋人同士になっても、女として見られる事にはまだ抵抗があるらしく、体の関係は初夜にして欲しいと頼まれた。公一もそれは承諾した。


しかしその欲求は、日に日に増していく。


せめてキスでもして紛らわそうと思ったのだが、柔らかな唇の感覚を得て、更に欲求が高まってしまった。


「くそっ……」


軽く反応しかけている下半身を見て、悪態を吐く。


今すぐ力で捩じ伏せて犯してやろうと思えば簡単だ。


だがそれは出来ない。


仮にも生涯を共にしようと決めた相手なのだから。


そっとベッドから下りると、上着を羽織り、夜の街へ消えて行った。

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