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短編集  作者: 石月 ひさか
母親
22/28


「全く。馬鹿笑いして」


あの後久しぶりに家族で夕食を食べた。


深雪に何度頼んでも、脱ぐ許可を得られず、結局今までずっと『お揃いの服を着た仲良し兄弟』のまま過ごす事になってしまった。


よほどツボにハマったのか、父は終始腹を抱えて笑っていた。


「深雪のせいで馬鹿にされたよ」


ベッドに座り、不満気に呟く。が、深雪は楽しそうに笑っている。


「あら、凄くよく似合ってるわよ。兄弟揃ってペア……3人だからトリオルックって言うのかしら?仲が良くて素敵じゃない」


「全然素敵じゃない」


始めはただの好意かと思っていたが、どうやら違うらしい。


恐らく確信犯だ。


どう仕返ししてやろうかと考えていると、それに気付いたらしく、深雪は悲し気に目を伏せた。


「ごめんなさい。怒った?」


「別に怒ってはないけど」


そんな顔をされると、怒るわけにはいかない。


本当にコイツは確信犯だと思った。


「良かった。ねぇ、キスしていい?」


「すればいいだろ」


一々聞くなよ、と呟いて顔を上げる。


深雪の長い髪が頬を撫で、柔らかな唇が重なった。



なんだかこの態勢はおかしくないだろうか。


まるで自分が女みたいだ。


深雪は立ったまま、公一はベッドに腰かけた状態で、そのままベッドに押し倒される。


「お、おい。なんで俺が押し倒されてるんだよ」


普通は逆だろ、と手を伸ばすと、ふわりと懐かしい香りが鼻孔をかすめた。


思わず肩を掴み、体を離す。


「待て。待って、深雪」


「なに?」


不満そうに頬を膨らまし、髪をかきあげる。


「今、薔薇の匂いしなかったか?」


「薔薇?」


キョトンとしながら呟く。が、すぐに笑みを浮かべ、覆い被さってきた。


「ん……!?」


唇を塞がれ、息苦しさに喘ぐ。


その時また、あの薔薇の香りがした。


「い、1回離れろっ!死ぬ!」


「もう、ムードないわね」


溜め息を吐き、髪をかきあげる。


また、あの香りがした。


その時やっと気づいた。


これは深雪の匂いなんだと。



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