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短編集  作者: 石月 ひさか
恐怖を感じない理由
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自分は必要な人間なのだろうか。


5歳になったばかりの深雪は、日々そう感じていた。


帰る家はある。


そこにいる人もいる。


だが、待っていてくれるわけではない。


テレビを見ていても、外で遊んでいる時も、漠然とした寂しさや悲しさを感じていた。


深雪は、日中は1人きりで公園の遊具で遊んでいる時間の方が長かった。


近所には年の近い友人はいたが、彼らは皆、昼過ぎまでは帰って来ない。


どうやら幼稚園や保育園という所で、他の友人達と遊んでいるらしい。


そのどちらにも通っていない深雪は、彼らが帰ってくるまで、1人で時間を潰すしかないのだ。


公園でブランコに乗っていると、立ち話をしているおばさん達が、こちらを見ながらヒソヒソと話をしているのが見えた。


話は聞こえなかったが、自分の事を話しているのだろうとわかっていた。


時おり聞こえてくるのは「ほうちご」や「かわいそう」「はんざい」という言葉だ。


意味はわからないが、自分は「ほうちご」と呼ばれる存在で「かわいそう」らしい。


家に帰れば父親はいる。だが、ただいるだけだ。


深雪を見ることも、深雪の為にご飯を作ってくれる事もない。


寝る場所も決まっておらず、寝具が敷きっぱなしの部屋のどこかで眠るか、押し入れにこもる。


他の場所を知らない深雪にとって、それが当たり前で、みんなもそうなのだと思っていた。


だが、寂しいのだ。


特にそれを感じるのは、夕方、友人達が帰ってしまう時だった。


空がオレンジ色に染まると、彼らの母親が名前を呼んで迎えに来る。


手を振って去っていく彼らの背中を見ると、無性に寂しさが込み上げてくる。


そしていつも思う。


どうして自分は、誰も迎えに来てくれないのだろうか。


自分は、誰かに必要とされているのだろうかと。


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