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余韻(仮)  作者: ユキノコタロウ
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なにもかもがすべて

気が向いたら書くかも

「ただいま」

そう言いながら扉を閉める

自宅に入る時は周りに人がいない時は毎回言う台詞

俺は独り暮らしなのであって、このただいまには誰かに言っているのではない

なんとなく、そうなんとなくという理由である

決して寂しいとか彼女が欲しいとかそういうものではない

リア充とか正直どうでもいい

ただ、言っていたい

それだけだ



時に人生とは何だと問いかけたい

幸せ?やりがい?欲望?ステータス?

正直わからない

俺は特に人生の目的がない

結婚とかマイホームとか、出世して金や名声なんてどうでもいい

生活費はバイトして稼いでるし、腹が減ったらカップ麺でも食べればいい

何時間も並んで外食する意味が理解できない

俺はそんな男だ



俺は趣味なんて言えるものがない

しいて言うなればゲームをするくらいだが、ゲーマーと言えるものでもない

暇な時に話題のゲームをするくらいだ

世の中の流行っているものを知りたいからだ

俺は感情が乏しいのだが、人には興味がある

何を考え、何を求めているのか

そして、何故そう思うのかを知りたい

それを知って、俺自身が何か変化するのか

それが知りたいのだ



バイトが休みの昼間、俺は駅前に行くことがある

趣味なんてないし、やることもない

ただ、人には興味があるからして、人通りの多い駅前に行くのだ

特に何かをするわけでもないのだが、なんとなく人混みを眺める

言うなればこれが趣味みたいなものだろうか

良く言えば人間観察、悪く言えばストーカーか

そんな中、ふと話しかけてくる青年がいた



「こんちわーっす。今大丈夫ですか?」

「あっ俺?大丈夫ですけど」

「今、アンケートをとっていまして、お時間5分くらい大丈夫ですか?」

「今日休みですし、大丈夫ですよ」

「ありがとうございます。あの、政治の話になるのですが…」



20代前半と思われる青年は、爽やかという言葉がよく似合っていた

アンケートは簡単な質問をいくつか答えただけで、正直つまらなかった

なんのためにこんなアンケートをとっているのか、俺には理解出来なかった

しかし青年は、なんの躊躇もなく初対面の俺に爽やかに、しかし淡々と質問を投げかけてきたわけだ

この青年は、楽しいのだろうか?いや、仕事だから嫌々やっているだけなのか?それでも嫌な顔を一切せず、爽やかスマイルを維持できるのはもはや才能というものではないのか?

そんなことを思いながら青年の質問は終わり、最後に爽やかに挨拶をされ、その場から去った

そしてすぐさま別の人間にアンケートの協力を仰いでいた

よくできた人間だなあ

俺はそう思い、近くのベンチで休むことにした



1時間くらいだろうか俺がベンチに座ってからそのくらいたったと思う

俺は人混みの中の人間が、ロボットに見えて仕方がなかった

時間を気にし、決められたルートを辿って決められた電車に乗る

電車を待ってる時間はスマホを眺めるか、音楽聴いてるか

年齢が高くなるにつれて読書している人もいた

そんな情景の中、いつもとは違う違和感に気づいた

あの爽やかな青年だ

いつもはいない、あの青年が違和感であり、異物であり、唯一人間味を感じる存在だった

あれからずっとアンケートをとり続けた青年の背中には、明らかに疲れが見えていて、いつしか俺はあの青年を目で追っていた




青年は、俺の視線に気づくとそそくさとこっちにやって来た

「隣、いいですか?」

「はい、お疲れ様です」

「あっコーヒー買ってきます。ちょっとだけ待っててください」

そういうと、青年はわざわざ俺の分まで買ってきて、俺の隣に腰かける

「あの、アンケートではないんですけど、1つ質問していいですか?」

「はい、なんでしょう」

「貴方、人間ですよね?」




俺はわけがわからなかった

そんなの当たり前じゃないか、しかし質問の意図が全くわからない

青年の目には俺がロボットにでも見えていたのだろうか?いや、これは喧嘩を売られているのか?でも何故だ?こんな爽やかな青年が俺に喧嘩を売る理由が全くもってわからない、それともあれか、実は性悪な青年っていうオチなのか?うーんわからん


「あっ特に意味なんてないですよ。貴方の反応を見たかっただけですので」

俺は更に困惑した

反応を見たかっただけ?何だその好きな人にちょっかいを出してその言い訳みたいな理由は、まさかこいつそっちの趣味か?いや、でもこの爽やかさに限ってそれは違う気がするしなあ


「僕は貴方以外の人間がロボットに見えていました。これなら納得できますか?」



「お前、何が言いたい

話の筋がわからんぞ」


「今言った通りですよ。貴方以外の人間がロボットに見えていました。それが答えであり、すべてです」


「俺は人間だ」


「ですよね。貴方は人間だと確信していました。だから話しかけたのですよ。」


「ちょっと待て、他のやつらだって人間だろ?というか人間以外の答えなんてないだろ?お前疲れているんじゃないか?」


「いいえ、少なくとも僕が駅前でアンケートをとっていた間、人間に出会えたのは貴方1人でしたよ」





「今から約3分後、この駅前で交通事故が起こります。正確に言うと14時07分24秒に横道から飛び出してきた軽自動車にトラックが突っこみ、軽自動車の運転手は重症を負います。そしてトラックの運転手の前方不注意でこの交通事故は処理されます。」


「お前は何を言っているんだ?そんな未来予知みたいな話、真に受けるわけないだろう」


「まあ見ててください。本題はその後お話ししますよ。」


青年はそういうと、缶コーヒーを一気に飲み干した

俺はただ、その時間が来るのを待っていた


「さあ、きますよ。あと5秒、4、3、」


キイイイィィィィィィィィィィィィッッッッ!!!!!!


予言は的中した

俺は気持ち悪くなり、しばらく金縛り状態のようになっていた





「さて、これで信じてもらえますか?」


「何を信じろというのだ?お前目の前で交通事故が起きて、それで、でも何で的中したんだ?そんな、信じれるかよ」


「はい、でもこれが現実なのです。こんな交通事故の時間まで確定しちゃっているのですよ。これが今の現実になります。」


「お前さ、結局何が目的なんだ、俺に何をしようとしてる、お前は一体なんなんだ」


「僕が望んでいるのはたった1つだけ。こんな世の中を破壊することです。」


「破壊?そんなことできないだろ、大体何を破壊するって?世の中をだ?頭おかしいんじゃないのか?」


「僕が貴方以外ロボットに見えていましたってのは覚えていますか?実は本当にロボットだと思っているのですよ。この世界は狂っている。事故の時間まで確定していて、それを受け入れるなんて僕には出来ない。それが誰かの、いや、組織の意図したものだとしたら、それを貴方は受け入れることができますか?」


「ちょっと待ってくれ、つまりこの世界は誰かの意図した世界に出来上がっている、そう言いたいんだな?」


「交通事故の時間がわかったのが証拠です。あれは僕の所属するレジスタンスが得た情報だったのです。そして僕は貴方をスカウトするためにここに来た。」


「…一旦考えさせてくれ、頭の処理が追いつかん」


「無理もありませんよ。連絡先を渡しておきますので、よろしければご連絡ください。それでは失礼します。」


青年はそういうと、速やかに帰っていった

まるで未来人か超能力者とでも話しているのかという体験だったが、いざ出会ってみるとこんな胡散臭い話があるのかと言いたくもなるのもわからんではない、しかし交通事故の件もあるし本物なのか、それとも本当に誰かの陰謀か何かなのか

ふと気づくと事故った軽自動車とトラックもなくなっているし、ここで交通事故が起きたなんて言わなければわからない程いつもの風景に戻っていた


「世の中は確定している…か」


俺はもう何も考えるのはやめにして、自宅に帰ることにした

気が向いたら書くかも

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