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#4 - 『スライム少女に迫る陰謀』

◇前回のあらすじ◇

スライムは女の子だった(?)

「あー。うん、大丈夫。――――私は私だよ?御主人様マイマスター?」


 明るく微笑むスライム……もとい少女の笑顔は綺麗だった。


「ごめん。」


 僕は謝った。


「何が?」


 当然の返しだろう。僕も慌てていた。しどろもどろにになりながらも、理由を説明しようとする。


「……少し混乱しているんだ。どうして君はスライムだったんだ?」


 少女は僕の質問に頭を悩ませていた。説明に悩んでいるようだ。


「詳しく言う必要は無いよ。なにか原因があるのかなって。」


「そうだね……。私は元々、人間。スライムになったのは、一種の呪いのようなものかな。スライムになる呪い。それでこんな姿になったの。」


 少女は一度、スライムに戻ってみせる。確かに少女は紛れもなくスライムだ。ツルンと瑞々しいボディ。うん、スライムだな。


 スライムから人間の姿になるのを待って、僕は再び質問をする。


「呪いっていうのはスキルの一種?」


「ううん。スキルはスキルなんだけど、洗礼で授かるものではなくて、何らかの機会で堕神・魔神の類いに受け取るものなの。」


 どうやらこの世界は一神教ではなく、多神教らしい。18年経って初めて知ったな。まさか僕の18年間は無駄だったのか……。それはそうと、堕神や魔神もいるのか。


「それがどうして人間の姿に戻ることが出来たの?」


 すると、少女はずいっと前のめりになって僕を見る。


「マスターのスキル。【スライム使役(スライムテイム)】? それが原因みたい。」


 まさかー。そんな訳ないじゃないか。少女を信じない訳じゃない。僕が信じたくないのは、あの自称不憫神だ。あの神の言うことを聞くのは、僕のプライドが許さない。


『ひどいです!!』


「そうなんだ!このスキルってそんな力があったんだ。」


『えっ、ちょっと、無視ですか?ちょっとー!!!!!』


 僕の脳内ではあの不憫神がひたすら騒いでいる。控え目に言って……煩い。ウザい。こういう神のことを堕神って言うんじゃないか。


「そのスライムが秘めている力を解放する能力じゃないかな。」


 少女は予想を告げる。確かに。そう言われれば、そんな気がする。


『フフフ……。』


 違うこと言ってるのがいるけど、気にしない。というより気にするな。


「今更なんだけど、君の名前は?」


 名前が分からないと、色々と不便だろう。一応、脳内では少女という呼称を使ってたけど、そろそろ限界が来たようだ。今聞かずして、いつ聞く!!


「名前……ああ、言ってなかったね。私はシエラだよ!」


 そう言って一回転する。靡くワンピース。シエラはどこまでも優雅だった。うん、可愛い。


「じゃあ、シエラ。君はどうするの?」


「どうするって?」


「これから。」


「マスターさんの家に行く?」


「なんで疑問形?」


「うーん……なんでだろ。」


 そんなやり取りがあって、シエラは家にいた。


「ただいま!」


「お、おかえり……。」


 慣れない。僕の18年間は伊達じゃない。ぼっちパワーなめんな。……というのは置いておこう。シエラは興味深そうに家の中を見て回っている。


「綺麗な家だねー!」


 煉瓦造りの家で意外と由緒がある家なのだ。僕のこの世界での祖父の妹の夫の母の従妹の息子の妻の兄の妻の従弟の娘の彼氏だった人の先祖の家みたいだ。因みにその人のことは知らない。見たこともない。


「部屋はいっぱいあるからどれか使って。」


「うん、わかった。」


 シエラは頷く。それから一旦僕は家を出る。依頼物であるイメレラ草を渡さなければならない。


「すみません。」


「ああ、あなたですか。どうしたんですか、ナンパですか。」


 相変わらずこの受付嬢は僕に対して冷たいな。まあ、どうでも良いけど。


「いえ、依頼の件です。」


 僕はバッグからイメレラ草を取り出す。


「はい、ちょうどですね……」


 しばし無言が続く。気まずい雰囲気に僕は話題を変える。


「僕って戦う術を持てば、依頼を受けれる範囲が広くなるんですか?」


 受付嬢は怪訝な表情をする。僕が能無しスキルの使い手だと知っているからだろう。だが、僕にはシエラという強力な助っ人がいるのだ。昔の僕とは違う。だが、そんなことを知らない受付嬢は冷たい態度をとる。


「戦う術を手に入れていない方に言う必要は無いことです。」


 反論することも出来るが、険悪なムードになるだけだ。僕は黙っておいた。


「……それでは、依頼完了です。」


 受付嬢から依頼達成金を受け取る。ちっぽけなお金だ。だが、これは僕の大切な生活費。


「ありがとうございます。」


 僕はギルドを出た。それから家に帰る。


「シエラ、ただいま。」


 何年ぶりか分からない言葉を使う。懐かしいような気分だ。返事は返ってこなかった。代わりに香ばしい香りが漂ってくる。


「魚……?」


 リビングに行くと、料理をしているシエラの姿が。


「料理……しているのか?」


「何ですか! 私だって料理ぐらいしますよ!」


 頬を膨らませる素振りを見せるが、実際は怒っていないのだろう。すぐにシエラは笑顔になった。


「おかえりなさい!」


 僕の世界は暖かくなったかのようだった。僕に対する受付嬢の態度は冷たいままだけど。

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【裏話】


「ああ、あなたですか。どうしたんですか、ナンパですか。」

(ナキさんはいつも明るくていいな……。)

「いえ、依頼の件です。」

(え、依頼達成したの? 大丈夫だったの!?)

「はい、ちょうどですね……」

(私もナキさんみたいに明るくなりたい。)


第5話もお楽しみに。

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