第八話 ある意味最強
今日もまたまた憂鬱。
藤田の奴……。いい加減僕にかまわないでくれ、と言いたかったが、残念ながら、もう快挙を起こす気にもなれない。藤田に反論なんてしたら、何をされるかわからない。あいつはなにしろ、ワガママで妙に怪力が評判の藤田だ。そういえば、藤田は何部だろうか。多少気になるが、まあ、放っておこう。
早速きた。諸悪の根源藤田だ。
「よう古一。今日はお前のために早起きしたぞ」
優しさの押し売りってこういうことか。君んちの目覚まし時計を壊しに行きたいよ、と、心の中で呟いてみた。
「今日はな、俺がちょっと仕組んでやったぞ。お前のガールフレンド君をだな……」
言うと、藤田は耳元でゴニョゴニョと計画を言ってきた。この計画は、藤田にしては上出来だった。だが残念ながら、実行する気はない。その計画には少し無理があった。
「無理だよ」
言う。しかし、藤田は食い下がる。
「じゃ俺がやってやる」
「や、やめろって」
「やめない。大丈夫、絶対成功するさ」
昼休み
E組の教室の前に、藤田が立ちはだかる。出入り口の前でくっちゃべってる女子達の背後に、なにやら凄い威圧感で仁王立ちしている。気づいてない女子たちに、藤田が、おい、と話しかける。女子達はビックリする。
「藤田君。なんですか?」
何故に敬語か、というのは置いておこう。
「ちょっと夏目を呼んできてくれ」
「はい」
女子の一人が春奈を呼んだ。春奈は、相変わらず自分の席に座って妙に緊張していた。女子の呼びかけに反応し、小走りで入り口に向かう。古一もそれに気づき、あの野朗、始めやがった、と、コッソリ見る。
「なあに……て、藤田君!?」
これもビックリ。藤田がくると、皆ビックリする。
「何かな?」
しかし気をとりなおし、普通に話す。
藤田は、重い雰囲気を一転させ、明るい顔できりだした。
「夏目。君は帰宅部だったな?」
「うん」
「なんで部活に入らないんだ?」
「いや、それにはいろいろ事情が……」
「よし、新聞部に入りたいけど入るのは恥ずかしかったんだな?」
「は?」
待て。きりだし方がおかしいぞ? のっけから。これは案の定、春奈を古一のいる新聞部に入部させようという計画である。でも残念ながら、藤田に任せたのが間違いだった。そんな言い方で、入るわけがない。もうその策戦は諦めろ、藤田。
「実はね、私が部活に入らない理由は……」
「なんだ?」
「その通りなんだよね。新聞部って男子しかいないらしいから」
驚きと喜びが入り混じった瞬間だ。初めての感覚だね! 嬉しいね!
「何言ってんだ、新聞部には女子も古一もいるじゃないか。よし、入部決定!」
そう言うと藤田は、勝手に入部届けにはんを押し、入部させてしまった。
君がワガママでよかった、藤田。