いいお兄ちゃんの日
「おはよう!お兄ちゃん、起きて!今日は、いいお兄ちゃんの日だよー!」
お布団の中でぬくぬくしていた俺は、妹のそんな一言で起こされた。
「そうか。それはよかったな。おやすみ」
「お兄ちゃん、起きてたんじゃん。おそよう!ねー今日っていいお兄ちゃんの日だってー!」
おやすみと言いつつお布団の中で体を丸める。妹がなにか言ってるが聞こえない。今日はせっかくの1日空いてる朝の時間を気にしなくていい日なのだし、まだまだ寝足りない。
「お兄ちゃんってば!!」
「ちょっ、、、!」
妹の特段大きな声とともに、お布団が剥がれた。とっさにとられたお布団を取り返そうと立ち上がってしまった。そしてその腕を妹にとられる。
「捕まえた!おはよう、お兄ちゃん!」もう寝かせないからね!、となぜか得意げに宣言する妹。
これは何か企んでるな、と思いながらおはようと返した。
「お兄ちゃん、今日なんの日か知ってる?」
ソファの方へ補導されると、妹は俺の隣に座りそういった。
「知ってるも何も、さっきからお前がずっと言ってるだろ。いいお兄ちゃんの日、だっけ?」
「そうだよ!よく知ってるね!今日は『いいお兄ちゃんの日』なんだって!」
妹がこれでわかるよね!!という目で俺を見てくる。
「…さぁ?」
俺は全然わからない、という顔をしながら嫌な予感をしていた。
わざわざ祝日の朝から起こしてくる。母さんと父さんは2人でお出かけ。妹は今日一日中空いていて、俺も(妹から見れば)1日暇をしている。そして今日はいいお兄ちゃんの日らしい。
…めんどくさい。
「今日はいいお兄ちゃんの日なんだよ!?たった1人の妹に対して、お兄ちゃん孝行する日だよ!」だから、遊園地連れてって!
妹は期待で目をキラキラさせながら、自信満々にそういってくる。
「……」
妹の期待の視線を浴びながら、俺は知らんぷりをしてみた。…無駄だろう。うちの妹は言い出したら聞かない。誰だ、いいお兄ちゃんの日なんで作ったのは。どこかにいるはずの誰かを責めてみる。
めんどうだなぁ。だけど、
「しょうがないなぁ」そう答えてしまった。
「やったー!お兄ちゃん、ありがとう!大好き!」妹はそういって、あらかじめ用意をしていたらしいリュックを部屋から持ってきた。
…はめられたな。俺はちいさくため息をついた。
5つ下の妹はめんどうな時も多々あるが、可愛い。俺は結構妹に弱いらしい。それが分かってるからこそ、妹も無茶振りもしてくるのだが。
せっかくの休みの日は家に引きこもっていたいけど、可愛い妹のためだ、なんて。
早くいこーよー、とせがむ妹の頭を少し乱暴に撫でながらちいさく笑った。
読んでくださり、ありがとうございました。
こんなお兄ちゃん、欲しいです。
誤字・脱字ありましたら、教えてください(>_<)