5/19
関東大震災と東條英機
関東大震災が起こる少し前、東條英機は陸軍大学校の教官を務めていた。
「なるほど、シ酉口の酒井少尉は、火災が気掛かりなのだな」
「はい、それに加え、先に報告を上げた通り、豆炭の密輸により、この度の火災は容易に鎮火出来ない恐れがあります」
「そうか」
「報告は以上であります」
「ところで、環状八号線環八道路から小西に進んだ通りを”東の十条”と呼んでいるそうであるな?」
「はっ、そのようであります」
「その上、宮家将軍家に縁の者が住んでいるとか」
「東十条宮と呼ばれておりますが、影宮影武者であります」
「面白い男だと聞いているが」
「噂に尾ひれがついた、というのが実情であります」
「まぁよい。取りあえず、豆炭の鎮火対策を訓練する。必要な物品を運輸するように」