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関東大震災と酒井少尉(シ酉丼、坂口)と東十条宮
関東大震災の前日譚。
酒井少尉の率いる小隊は、「誠」の浅黄色の色あせた羽織を御旗に、現在の明治大学駅前から富ヶ谷辻経由初台行きでの道中を徒歩で進んでいた。
「新撰組の羽織なんてどこで手に入れたんだ?」
「八王子の高倉に眠っていたらしい」
「ところで、明治神宮でドンパチやるわけではなかろうに」
隊員の私語が続く。
隊長の酒井少尉は、マッチ箱を気障に手遊びしながら、
「次の戦は火事。火の用心、マッチ一本火事の元、町の衆、よく聞け、今度の火事は水では適わぬかもしれぬ。江戸の頃のように打ち壊ししたくなければ、鋤鍬もっこ、農具も一通り準備し、憂いに備えよ」
「隊長の勘はよく当たる」