震災後のデマ
関東大震災の目撃談。
「焼けた、みんな焼けた」
「飛行機が飛んでいた」
「飛行機から何か落ちてきた」
「それだ、爆弾を落としたんだ」
「戦車なんぞ見たことない」
「このチラシだっていっても信じてくれないだろう」
「うちに赤紙が来たよ」
赤紙は、徴兵を知らせる公文書で、農家の次男三男などが連れて行かれた。
特別高等警察、通称特高。
「特攻隊とは違うのかい?
「東條閣下はどこにおられる?」
「二・二六事件に備え、籠城の構えを見せております」
「東條閣下がご自分の写真入りの新聞を配りながら、陣馬街道を通り、八王子城に閉じ籠もったという噂はどうやら本当らしいな」
「こちらをご覧下さい。海外諸国とのモールス信号での通信日記になります」
東十条は次の一文が気になった。
”Give me 呉、呉 knew Clair”
英日日英翻訳にすると、
”我が国の負け、自明、核爆弾を落とせ”
そのようなニュアンスに聞こえた。
「東條閣下はご存じなのか?」
「東十条宮様には知らせなければとのことであります」
「ポーツマス条約を、Port Mass, Port Math 条約と勘違いしている輩がいるそうです」
「江戸に大勢の外国人が押し寄せるのではないか」
「海軍が哨戒の作戦を立てております」
「worry mass, worry math, early math, nuclear bomb は実現してしまうのか?」
「核爆弾については幾らか疑問もありますが、逆墨俣城方式のNew Clear 作戦は可能であります」
「水素の爆発の様子をスケール変換した特撮により、きのこ雲の発生が認められます」
「Word, World, War. 英米にしてみれば、意味が違うが、日本人には同じように聞こえる」
「La pomme, La pomme de terre」
「林檎、或いは、馬鈴薯が欲しい」
「Bomb, Bombe」
「爆弾です」
「アメリカ軍空輸部隊の練度が低下しております。暗号が通じません」
支援物資の石油がそのまま投下された。江戸前は、再び焼け野原になろうとしていた。
「宮様!! 大変であります。三の丸で火の手が……」
東十条は地団駄を踏んだ。
これから、三の丸から避難民が押し寄せてくる。朝鮮人と鮮人の言い回しにも気がつかない連中だから、デマも不安だ。食料は近郊の諸藩県から輸送しよう。冬はどう過ごすか? 大阪に遷都するか?
「八王子の屋敷を解体しろ、いいか、丁寧にだ。川下川崎大師で再構築する。逆墨俣城方式だ」
東十条が悩んだ末の答えが、八王子の屋敷を川下川崎大師に移設することだった。
問題は軍部と報道機関である。
大地震と、密輸された豆炭による火事であることは、明らかである。
密輸したメリケンさんが大地震に乗じて火を放った、朝鮮人が井戸に毒を淹れた。
様々な噂が流れた。
上水道に下水道は、現代ほど発達していない。
花摘み雉打ちをすれば、地脈や地勢によって、民衆に毒を盛ったことになる。
また、急ぎに急ぎ、現地調達の応援組が多すぎた。本能寺の変の際、羽柴秀吉のようでもあった。
子どもは地方に疎開。
政府は食料の緊急輸入を決めた。軍部は、中国やアメリカの輸送船団をエスコートするための策を練った。
大勢の外国船が来れば、いさかいが生じる。




