聖女相対
正門より突入したタナトス隊長は大鎌に魔力を集中させると、大鎌をクルクルと回転させて連続で光波を飛ばします。
次々と王城に直撃する光波は、外にいた騎士たちのほとんどを切り裂きました。
裏門のほうから、断末魔の絶叫が響いてきます。
アンビエントが動き出したようです。
初撃が決まったことを確認した私は、スカートの端を摘まんで王城に一礼します。
今までお世話になった王城に対する礼であり、これから行う残虐な行為へのせめてもの懺悔でもありました。
「総員、突撃ッ!!」
「「「「「おう!!」」」」」
王城に果敢に突っ込んでいく兵士さんたちを横目で見ながら、私は魔力ブーストで一気に正門から王城に飛び込みました。
飛び込んですぐ、嵐のような攻撃を見せる隊長がいました。
「斬れ、アサヒッ!」
「わかっています!」
私は隊長の光波による援護射撃を受けながら、一気に王城の奥深くに侵入していきます。
予想通り、王城内には数多くの騎士が詰めていました。
全員を相手している余裕はありません。
狭い廊下を塞ぐように守っている騎士さん達には悪いですが、まともに相手なんかしていられません。
魔力ブーストを全開にして、同時に自分の体の正面に魔力防御を張ります。
右手の剣を振りかぶり、騎士たちの目線がそちらに誘導されたことを確認して私は左手でキッドの銃を抜き出しました。
引き金を引き、魔力弾が騎士たちに殺到します。
鎧にぶつかった魔力弾は爆発を起こし、騎士たちを肉塊に変えました。
私は魔力防御でそれを無理やり潜り抜け、王城のさらに奥に進んでいきます。
王城のいたるところに兵士たちがなだれ込み、乱戦状態になりました。
しかし兵士たちは魔法が使えないし、数だって騎士のほうが多いのです。
タナトス隊長やアンビエントが獅子奮迅の働きをしているとはいえ、我々の劣勢は明らかでした。
廊下を疾走し、途中で窓から下の階などが見えるのですが、そこには大抵腕や首や胴体が千切れた兵士たちの姿がありました。
あまり時間はありません。
時間をかけすぎれば、タナトス隊長やアンビエント、そして何より姫様に危険がおよぶかもしれません。
全力疾走する私の前に、騎士が現れました。
しかし普通と違うのは、彼らがメイドを人質にとっていることでした。
メイドは、私の顔見知りの子でした。
「止ま」
騎士の言葉を聞き終わるまでもなく、私はしっかりとメイドごとその騎士を斬って捨てました。
メイドの目は、最後まで恐怖の色で彩られていました。
あまりにも咄嗟に斬ることができたので、私が驚いたくらいでした。
走り続けて、私はついに王の間に辿り着きました。
扉を蹴り飛ばし、剣を構えて入るとそこには確かに聖女がいました。
色素の完全に抜け落ちた白い髪、病的なまでの真紅の瞳。
先ほど王都の上空に映し出された姿、そして、私が見逃した少女の姿そのものでした。
「来ましたか……」
聖女は右手に握った杖を構えました。
背中から光の翼が生えました。
「死神の剣……貴女が、私の目的です」
光翼が2枚から4枚に増え、さらにその輝きを増します。
「枢機卿たちは全員死にました。ここにいるのは私と貴女だけです」
聖女が杖で指した先に、男の死体が10個ほど転がっていました。
「さぁ、始めましょう。死神……!!」
甘さを完全に捨て覚醒したアサヒ。
ついに聖女との対決に挑みます。