死神の死
『こちらエリア。キッド、タナトス、アサヒが制圧に成功。基地から教会に兵員を輸送します』
脳内にエリアの声が響き、隊長とキッドも制圧に成功したことを知る。
『アンビエントも制圧に成功しました。作戦の第一段階は成功。引き続き、第二段階に移行します』
私は教会に兵士が来たことを確認すると、再び全身に魔力を循環させ外に飛び出す。
『第二段階として、それぞれの制圧した教会の間にある教会を挟撃してもらいます。タナトス隊長がオヤミ地区の教会を、アンビエントがサリー地区を。アサヒ、キッドは2人でドウサ地区の境界を落としてください』
『『『「了解」』』』
『聞いた通りだ、アサヒ。2人で突っ込んでさっさと片付けるぞ』
「フォーメーションは?」
『私たちにそんなもんいらねぇよ。その場のノリでいくぜ』
「了解」
私は足をドウサ地区に向け、魔力ブーストを利用して一気に教会に接近する。
私がドウサ地区の教会に到着した時、すでにキッドは交戦状態に入っていた。
キッドがマシンガンから魔力弾を雨あられと教会に浴びせ、すでに数えきれないほどの騎士が体を撃ち抜かれて死んでいた。
「よし、それじゃあ突っ込むぜ」
私が到着したのを確認して、キッドはマシンガンを乱射しながら教会に突っ込んでいく。
キッドの相変わらずの猪突猛進ぶりに呆れながら、私も剣を抜いて走り出す。
教会の中に、修道服を着ていない少女が見えた。
教会に避難した一般人だ、と頭で理解するより早く、私はキッドに体当たりをしていた。
「なっ!?」
キッドは驚きの声をあげて、空中で体勢を立て直した。
キッドの放った銃弾は外れ、教会の壁を抉り取るにとどまった。
「どうしたアサヒ?」
「教会の中に一般人がいる!銃は使えない!」
「はぁっ!?正気かテメェッ!!」
体当たりされた理由を知り、キッドは激昂した。
正直、私もどうしてキッドが撃つのを止めたのかわからなかった。
ただ考えるより先に、体が動いてしまった。
「私たちは殺し合いをしてるんだッ!やらなきゃやられるッ!死にてぇのかテメェ!!」
「でも、私は無関係の子は斬れない!」
「どけッ!代わりに撃ってや……馬鹿テメェどきやがれッ!」
キッドは私に躊躇なく銃口を向け、引き金を引いた。
私の足元に突き刺さった魔力弾は爆発で私の身体を吹き飛ばす。
私が慌てて立ち上がり剣を構えた時見たのは、どこからか現れた聖堂騎士に斬られているキッドの姿だった。
斬られるのと同時に発砲し、キッドはその騎士の額を撃ち抜いた。
騎士がどさりと地面に崩れ落ち、キッドは足を振るわせながら立つ。
「クソッ……この私が……こんな最期かよ……」
しかし耐え切れずに地面に膝をつき、そのまま地面に突っ伏す。
「キッド!」
「体が勝手に動いちまったんだよ……畜生……」
「キッド……」
キッドの手から力が抜け、瞳から光が消えた。
教会から騎士たちが雄叫びを上げながら突っ込んでくる。
キッドが死んだことにより、より気勢を上げていた。
私はキッドの銃を左手で掴み取り、右手の剣を握り直す。
そして振り返り、
「ッ!!」