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死神への復帰

2人の強力な仲間を得た私と姫様は、無事基地に到着することができました。


ほとんどの騎士はアンビエントが張ったワイヤーに切り裂かれ、上手くそれを潜り抜けた勇敢な騎士も隊長の大鎌の前に露と消えました。


私はと言えば、もう剣も鞘に仕舞い、それを抜くことはありませんでした。


基地に到着すると、すぐに司令官に歓迎され、私と姫様は司令室に通されました。


アンビエントは基地の周りにワイヤーを仕掛けに行き、隊長は私たちと共に司令室に入りました。


「司令官、今の状況を説明できるか?}


私の肩でガクガクと揺られ続けて逆に冷静になったのか、姫様は落ち着いて司令官に尋ねました。


「はい、説明させていただきます。聖堂教会は本日の0100に王家に対して宣戦布告、同時刻に王城内の教会が門を開き、王都内7つの教会から出撃した聖堂騎士、推定500名が王城内に侵入。

攻撃を行いました。レノア姫様、お聞きになられているかもしれませんが……」


「父と母が死んだことは知っている。気にするな。聖堂教会の目的は?」


「神託で告げられたそうです。王家を打倒せよ、と」


「宗教に理屈は通じないな。教会の目標は私の殺害だな?」


「はい、その通りです。すでに王城は完全に制圧され、議会、裁判所も制圧されました」


「なるほど。王都内の教会の勢力総数は?」


「騎士が2000名。うち、先の戦闘で3割が死んだと考えられます」


「合計1400名の精鋭か……各地の様子は?」


「残りの聖堂騎士が王都をめざし行軍しているとのことです。合流されれば、撃破は困難となるでしょう」


「……現時点で教会を撃破できる確率は?」


姫様の言葉に、司令官は初めて言葉に詰まりました。


「それは……」


「ほぼゼロだ」


言葉に詰まった司令官の代わりに、隊長が言葉を継ぎました。


「聖堂教会は次に、ここを攻めに来る。聖堂騎士は全員魔法が使えるから、夜目が効く。我々は数人しか魔法が使えない。夜間戦闘をすればどうなるかは火を見るより明らかだな」


タナトス隊長の言葉は簡潔で、否定しようのないものでした。


「状況は絶望的、か……」


姫様は頭を抱えてしまわれました。


私はなんとか姫様を元気づけたかったのですが、この絶望的な状況をひっくり返しようがないというのは私も同じでした。


重苦しい空気が司令室を包み込みます。


外から響く聖女の声と、悲鳴と怒号と歓声が私たちを追い詰めていきます。


「……実は、方法がないこともない」


タナトス隊長の信じられない言葉に、全員が顔をあげました。


「我々死神部隊が、奴らを攻撃する。守ってダメなら、攻めるだけだ」


「馬鹿な……」


「まぁ、さすがに3人なら無理だろう。だから、アサヒ。死神部隊に戻ってこい」


タナトス隊長の突然の言葉に、私はうまく反応することができませんでした。


「アンビエントとキッド次第だが、上手くいく可能性もある。まず我々4人が散って、それぞれ王都内の教会を攻撃し、制圧。その後制圧した教会と教会の間にある3つの教会を攻撃し制圧。

7つの教会をすべて制圧し次第、教会から王城への攻撃をする」


タナトス隊長の提案はとても信じられないものでした。


「1人で敵の砦である本拠地を落とすだと?正気か?」


「正気だとも。死神部隊はそれができるだけの力がある。姫様も見ただろう?アサヒの力を」


「……しかし、失敗すれば我々は死神部隊という切り札を失うことになる」


「切り札というのは使ってこそ意味がある。宝の持ち腐れは馬鹿のすることだぞ、レノア姫」


タナトス隊長は大鎌を抱えなおす。


「我々軍人は命令に従うことしかできない。だが、われわれだって犬死は御免だ」


タナトス隊長の提案を、姫様は目をつぶってしっかりと考えているようでした。


「……君は、死神部隊に戻っていいのか?君は死神部隊を辞めたんだろう?」


姫さまがこちらに向き直り、そんな言葉をかけてくださいました。


「はい。私は死神部隊にはもういられないと思い、軍を辞めて姫様に拾っていただきました。その姫様を守るためでしたら、私はなんでもします」


私の言葉に迷いはありおませんでした。


「そうか……わかった。アサヒ、君に死神部隊に戻ることを命令する。死神部隊として、タナトスの指示を受けろ」


「はい、わかりました」


「ならすぐに行動を起こすぞ、アサヒ」


タナトス隊長はついて来るように、とジェスチャーをして司令室から出なければなりません。


私もそれに続いて部屋から出なければいけません。


「アサヒ!」


部屋を出ようとした私に姫さまが声をかけてくださいました。


「腕のいいメイドを探すのは面倒なんだ!手放すつもりはないからな!」


姫様の言葉に私は笑顔でうなずき、すぐにその表情を消すと司令室から退出しました。


これにて姫様は退場となります。

ここからは死神部隊がお話の主人公となります。

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