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再会のクーデター

「お前の次の台詞は『なぜ死なぬ』だ」

『なぜ死なぬ』

別にハッ!としない。やはり知性が無い、大魔王どころか案山子である。リドラーが何十回と繰り返した右のフックを再び放つ。俺のこめかみに命中するが微動だにしない。

「お前の次の台詞は『なぜ死なぬ』だ」

『なぜ死なぬ』

別にループしているわけではない。

俺に攻撃が効かないのはレベルの差の為だ。ユーピン初期はまだリドラーを倒せるほどのプレイヤーは居なかったが、それでもこの場所に到達した奴が居るのだからゲーマーは恐ろしい。残念ながらゲーム内では、光明の光玉を入手する方法が無かったので、弱体化出来なかったこともあり、やはり倒せなかった。

しかし多くのプレイヤーの挑戦でリドラーのレベルは100付近だと推定された。俺の総合レベルは200を軽く超えるので、ダメージが通らないのだ。理不尽すぎるがそんなもんだ。

最上級ジョブのLV1は下級ジョブの100に匹敵する。現在俺の最上級ジョブは武流と到達者の2つである。これだけで下級200分だ。魔王LV100は下級の幾つに相当するかはハッキリとは分からないが、現状俺の総合レベルよりは大分低いのは確かだ。

『なぜ死なぬ 死こそ喜び』

「行動もセリフもパターン限界が有るか、もう付き合う必要も無いから殺すぞ」

知性は無いのは確かだ。こいつ等のような魔王に知性が有ると世界の危機だと思っていた俺が馬鹿みたいだ。赤光を先端に込めた多頭竜神珍鉄剣を振るって袈裟切りにする。

『この程度でははっはっはははっはああはっはっはああああああああああああああああああああああ』

バグッた。多頭竜神珍鉄剣は切っ先は9つに分かれているので、先端でなぞるように切るとダメージが加速する。ユーピース・オンラインにおいては激レアドロップ品であり、全盛期のリアルマネートレードでは100万円の値が付いた事も有る反則装備である。

上手く使うと、恐ろしいことにダメージ計算時に9回攻撃として処理されていたという。さらに2回目以降のダメージは防御力を無視するらしい。頭おかしい…まぁ素人が作って、デバッグされたかも怪しい世界だ。こういうのも有るんだな。

実に強力な剣だ、わざわざ階段を登り降りしてヒドラキングを3回も復活させて倒した甲斐が有った。最強装備の1つを入手する割りには大した苦労でもなかった。仲間達は大層いぶかしんでいたが仕方ない。

『あああああああ 光在る時また闇も…』

言葉が続くがどうやら死んだらしい、リドラーは変身しないボスだ。いわゆるラスボスの定番セリフである。光在る時闇もまた其処に在る、正義在る時悪は滅びぬ、ゲーム業界で始めて云ったのはこいつらしい。

Ⅲが名作と云われる所以の1つである魅力有るラスボスだ。ⅢはRPG史上最高傑作とまで謳われた。まぁ俺はリメイクもやって無いので思い入れは無いが。

「外伝でよく合体素材にしてたんで、リドラーは便利に使ってたな~」

『さらばだ。グフッ!』

あ、死んだ。会話になってない辺りやっぱり知性は無かったか、これでもう迷宮に潜る事はない。金が入用になったら潜るが。

「お疲れ様です。御主人様」

クーが部屋の外からやってきた。知性の確認に時間を掛けたから心配して見に来たらしい。

「終わったよ、これで迷宮に潜る事もない。さて帰るぞ」

「アイテムはよろしいのですか?」

「大魔王からはアイテムを貰えないのだ」

そう云うものかとクーが返事をする。そう云うものだ。しかし酷いバランスだ。経験値はすごい貰えたようだが、もうレベルなどあまり関係ない。生産職のレベルはスキルを上げる方が重要なので、いまさらレベルの数値は関係ない。体も充分頑丈だしな。天井から光が射してきた、城が消える兆候だ。

「城が光に包まれてきたな。これで脱出できるはずだ。武器を仕舞っておくか」

「では、牙をお返しします」

別に返さなくても良いのだが、とにかく牙を袋に入れる。全身が光に包まれる。

光が消えると、どうやら街に戻ってきたらしい。迷宮に入った時より日がだいぶ落ちてもう夕方だ。ちゃんと全員居る、オウバは全身血だらけだ。まぁ俺もそうなんだが、オウバと違い返り血のみである。

「ゲコゲコゲッ!」

蛙男ことググは俺に何度も頭を下げて、立ち去った。何だったんだ?

「ググさんは、一生感謝するそうじゃ」

アイがそう通訳した。それはいいんだが何故立ち去る?

「ググは家族の元に帰るそうです…彼にも悪いことをしました。これから自首しようと思います」

アイラエルもそう言って立ち去る。ローザもアイも止めないな、俺がリドラーを倒すのを待つ間に話し合ったんだろうか?

「ま、待って!アイラエル?どうしたの?どこに行くの?」

疲労が溜まっているらしく、オウバはまともに喋れないし歩けない。よく見ると背中に傷を負っている。血も流れているな。

「ヘル、治療してやれ」

ヘルが治癒の風を送り込む。多分助かるだろう、そう重傷でもない。全治3週間くらいの傷だ、命に別状はない。

「さて、俺達も帰るから、全員武器を渡せ」

皆の武器を仕舞い、その間にクーが俺の鎧に付いた血を布巾で拭く。気が利くな。

何故かローザが近づいてきた。もしや心の操作だろうか?一応警戒する。

「…一応お礼は言っておきます。助けてくれてありがとうございました。ではこれで…もうお会いすることは無いと思いますが…」

そう言って2人とも足早に去る。オウバは何かブツブツ言っているが、聞き取れない。

「では、またその内会えると良いな。さようなら」

彼女達の後姿に挨拶して手を振る。オウバはともかくローザは美人なのでまた会いたいものだ。帰りはケリーに乗って帰るので、各自の鎧を脱いで袋に入れる。4人でケリーに乗り館に帰る。


「郵便受けにダイレクトメールが沢山有るのはこっちでも同じか」

館に帰ると門柱の郵便受けにえらい数の紙束が有る。ケリーがヤギなら食わせるのだが。

「恐らく商人の営業です。殆どは見なくてもよい物です」

やっぱりそうか、足の靴を払い、館に入る。書斎は1階と2階にあるが、応接室にはソファーが有るので、手紙の閲覧は応接室でやる。時間的にちょうど飯時なので、皆で食事の準備をしながら寛ぐ。

「…なになに、投石器のセール?カタパルトなんて何に使えばいいんだ?」

チラシの中身は殆どそんなものだ。良く分からない食品や美容化粧品のチラシも有る。

「へぇ~今お金持ちの間でくらげをペットにするのが流行ってるんだってぇ~」

買わないぞ、くらげなんて見ても面白くない。封筒も2通有ったので開ける。一枚はアカシュからの礼状であった。ルンの葬儀は滞りなく終わったと書いてある。文面からは感謝の気持ちが見て取れる。もう一枚はササーからである。

「ふむ…アイの姉と思われるエルフはまだ見つからないようだ」

「探さんでもよいのじゃぞ?もはや今生で会えるとは思っておらん」

「一応手は尽くす。一応ササーの仲間にも声を掛けておいた」

「…惚れ直してしまうじゃろ。小姉さままで蕩かしおって…」

アイの体が抱き付いてくる。頭の方は俺の膝上に座ってくる。すっかりなれたものだ。もう某公国の最終兵器以上に頭だけで動けるのではなかろうか。

「アイの姉が惚れるのも無理は有りません。この館にも新たな人が来るかもしれませんね。掃除しておきます。勿論使わない部屋の家具は布を被せて埃を被らせ無い様にします」

クーは真面目だ。正直助かる。

「子供とクーの姉のどっちが早く来るかな?」

だがアイラエルはどうなるのだろうか?まさか即日死刑になることは無いだろうが、緑布党の残党に何かされるかもしれない。一応警戒しておくか。

「産めるならすぐ産みたいけどねぇ~魔人もエルフも獣人も人とあんまり変わらないんだってぇ~」

そういやヘルは魔人だったな、尻が青いだけだからよく忘れる。

「無事に産まれさえすれば問題ない。皆養生しろよ。それと…アイラエルがどうなるか予想できるか?」

「このビルは智恵の都と呼ばれるほど学者が多いのです。そのせいか残酷なことを嫌う者も多いです」

「小姉さまも公警に出頭したが、罪を少しは減じられるはずじゃ。恐らく出品されるじゃろう」

アイは期待のこもった眼をしている。姉に助かって欲しいのだろう。

「何か俺に出来る事は無いのだろうか」

「この国は賄賂を嫌いますから、下手に手を出さないほうがよろしいかと。アイラエルは頭目と言うわけでもなく下っ端ですから、叛乱者といえど大した罪にはなりません」

「…クー、励ましてくれるのじゃな、ありがとう…じゃが叛乱者は死罪になってもおかしくはない悪業じゃ、妾もこの館で姉達と暮らしたい気持ちはあるが、あまり期待してはおらぬよ」

「大丈夫だってばぁ~今までだって何とかなったんだから、これからだって何とかなるよぉ」

ヘルが無責任な事を言う。まぁ俺達が何をしても変えられないことは有る。

祈るのは無料だから、祈るとしよう。でもあの神に祈るのはちょっとなぁ~

「…ん?続きが有るな、ゴィゴで集会が有るらしい。緑布党の壊滅を祝してなんかやるらしい」

しかも明日だ、随分急だな。

「そうですか、お召し物を用意しておきます。何時からですか?」

「いや、平服で良いらしい。現地で着変えるそうだ。明日の正午に集合だから、速めに昼飯を食べるな」

飯が出ないらしい。けち臭いことだ。

「分かりました。消化に良い食べれる物を用意します」

いつの間にか参加することになっている。まぁいいが。武器や鎧を整理しながら考える。別に参加しない理由もない。

「あぁ頼む」

しかし何の集会なのやら。


「こういう集会か…」

ゴィゴでササーから貰った封筒を案内人に手渡し、衣装を貰い近くの建物で着替えさせられてから、大きな黒い建物に移動させられた。中はパッと見大学の講堂に見える。

「大学の講堂でこんな格好して講義受けてた奴いたなぁ~」

今の俺の姿は一言で言って黒いオバケである。この衣装が白い場合は人種差別団体になる。そんな格好の人間が500人近く一箇所に集まっているのは正直どうかと思う。

ちなみに衣装には手袋や股引に靴まで真っ黒の物を着用しているので、大変暑い。もうすぐ本格的な夏だというのに。

「えぇ~皆さんお集まりですね~ではこれよりゴィゴを考える会を始めようと思います」

挨拶するのは年輩の黒いオバケだ。声も老いている感じだし、同じ黒い衣装でも随分くたびれている。見分けがつくのは良いんだろうか?

「えぇ~今年も旬になり~多くの奴隷が買われますが~そのうちの何割かは~」

肝心の話は…まぁつまらない話の連続である。飯を食った後なので、眠いったらない。話の内容は奴隷に対する差別をどうするかとかそんな話だ。

「えぇ~緑布党や奴隷解放連は~ま~過激すぎる組織では有りますが~反政府主義者にも~三分の利といって~」

別に盗人に賛同しているわけではないと前置きして、奴隷解放について訴える。場内からはあまり良い反応が無い。しかしここに居るのはどういう連中なんだろうか?俺は奴隷を買った人間だが、他もそうなんだろうか?壇上のオバケは奴隷を庇護すべしという論調だから、もしかすると奴隷なのかもしれない。ひょっとしてこの服装は身分に関わらない議論をするための道具なのだろうか?

「えぇ~つまりですな~奴隷を働かせるにしても~本人の資質に合った~」

いや、それにしては壇上の男は既に30分以上話している。質問も討論もしていない、立場は強いのか?誰も止めないし、手を上げる人も居ない、よく分からん会合だ。そう云えば何時に終わるのか書いてなかった。周りには寝ている奴も居る。いいのか?

「えぇ~それによって社会参画が~?なんですか貴方達?」

講堂に入ってきたのは…ローザか、また会ったな。それと複数の鎧姿の男達だ。全員武装している。オウバは居ないな、別行動か。

「オイっ!ここには黒衣を着ていないものは!?」

大柄な黒いオバケが鎧姿の男に切り捨てられた。死んだようだ。諸行無常。場内のオバケ達が騒然となる。鎧の男達の中からチャライ外見の茶髪男が天井に黒い何かを向け…いやあれは…

『ズキューーン!』

銃だ。銃を持っている。ピースメーカーという奴だろうか?かつての友人である軍事オタクならすぐに分かったろうに…とにかくリボルバー拳銃の銃身の長い奴だ。西部劇でよく見るあれだ。

「はいー皆さんー落ち着いてー私の名前はーハイ・ジャック。ギャグじゃないよージャックだよー」

また地球人が面倒起こしたのか、若干申し訳ない。しかしそんな名前にするとはふざけた奴だ。俺も適当に付けたが、犯罪関連の名前は変な誤解を招くぞ。

「はいー皆さん落ち着いてるねー疑問に思う人も居るだろうけどーこの人はービルの騎士団長のローザリウスさんですー本物だよー」

ウザイ喋りの奴だ。体格もなんかムカツク体型だ。声も人をイラつかせる声だ。要するにクラスに1人は居た悪いことをしているわけでも無いのにムカツク奴だ。

 まぁハイ・ジャックは悪いことしてるが。ローザがジャックの隣に進み出る。

「彼女もー緑布党でーす。リーダーが死んじゃったなんて嘘を訂正しに来ましたーこの人が新リーダーですーつまりローザリウスさんがリーダーでーすー」

何が有ったんだろうな、昨日はヒロタの死を認めてなかった。ローザが壇上の中央に行き、宣言する。

「奴隷を自由にできる時代は終わりました。我等はビルと東王国12カ国を束ね、帝国に対して攻略作戦を開始する!」

かわいらしい声でそう言った。折角美人なんだから兜取れば良いのに、そういやローザは鎧をいくらか新調しているな、昨日壊れたからか。さてクーデターか、俺はどう動けば平穏な生活が送れるかな?

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