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大魔王の城

「嘘木の卵苗か、こんなものを植えても何も出んぞ?」

「かもな、まぁ試してくれ。別に何も出なくても気にしない。それより温室は本当に要らないのか?」

「冬には冬の草が生え、夏には夏の花が咲く。温室など要らぬ」

自信家だ。まぁ俺は園芸など良く知らんので任せるが。

「本当に金の生る樹が出来るのでしょうか?」

できるといいな。迷宮に潜らなくて済む。

「…あれ冗談じゃなかったんだ。熱は無いよね、病院行く?」

まだ疑われていたのか。

「…では宿り樹の儀式を行う。妾が呪文を唱えるから、その間ソウドが苗を埋めて水を撒くのじゃ」

「私達はやることは無いのですか?」

「畑の周りで踊るとかしなくていいの?」

「ギャー!」

ケリーも何でもやるぞと言っている。

「何もせんで良い。重用な儀式ではあるが、あくまでも日常の出来事を祈るものじゃ、では唱えるぞ」


『平・ソウド 平・ソウド 大きな土地持ち アイリシャン アイリシャン 枝を持って祈る』


卵苗を日当りの良くない所に埋める。攻略本によるとそうすると金の生る樹が生えるらしい。事前に準備した泥水をかける。呪文が続く。


『嘘木の卵苗 嘘木の卵苗 緑豊かな土地の中 いらいらやきもきするだろう はやくめをだしちまえ』


結構ぞんざいな呪文だ。嘘木の卵苗を埋めた所からみるみるうちに立派な幹が生えてきて、自動販売機のような四角い物体が生える。とても自然界の木には見えない。

「おかしなのが生えたな、嘘木は何も生えないものじゃと思っておったが」

「これに金が実るのですか?」

「もしかしてこれって…自販機?ならお金出るんじゃなくて、お金入れるんじゃないの?」

「ギャギャギャー!」

ケリーはこんな木見たことねぇと言っている。

「うむ、本に書いてあったとおりだな。ビルの大地に早朝嘘木の卵苗を埋めるとスロットができると」

金の生る樹とはスロットマシーンのことである。ドランⅣではいくつかのギャンブル場が有ったが、森のギャンブル場には木製のスロットがあったから、それの再現みたいなもんだろう。

「ソィレォチ?なんじゃそれ?妾は何を生やしたのじゃ?」

「まぁ見ていろ」

スロットの木には穴が開いているので、そこに金貨を1枚入れる。スロットが回り始める。と、言うか突如として茶色の木が総天然色に変貌したので、皆結構驚いている。回る絵柄はオーソドックスなものだ、3つ揃えるだけでいいらしい。木の右横に有る枝を下に降ろし、発達した動体視力を駆使して777を揃える。静止して見えるので、当然っぞろ目っ!

『フィーバー!オメデトー!』

そんな音声なのか、てか音出るのか。俺の膝下くらいの所から大量の金貨が出てくる。チップを交換する必要は無い。等価交換の原則に反しているような気もするが、便利だから良し!

「…本当に金がでたのぅ」

「やはり御主人様は偉大なお方です。ざっと金貨100枚以上はあります」

「面白そ~次やる!やりたい!」

「ガギャーー!」

ケリー、お前どうやってやるつもりなんだ。前足があるからって物つかめないのに。木製のスロットマシーンは茶色に戻った、これであと一週間は使えないらしい。

「残念だが、これは週末に一回だけしか動かせないのだ。次はやらせてやるから楽しみにしてろ」

3人と1頭は頷いた。どうも話し合っている事から察するに、順番を決めている様子だ。次に俺が出来るのは一ヶ月以上先か。まぁ既に日本円にして1億以上稼いだ。意世界流に言うなら宝具を買えるほどの大金だ。

「金策はこれ1つ有れば不自由はしない、あとは迷宮の謎…いや魔物の謎を解明することか」

この世界で俺のやるべきことは、地球の書物の翻訳が天命だと思っているが、ある魔物…いや大魔王については俺が確認しておかなくてはならない。アキラが迷宮が創って1000年以上経っていることを考えるとやらなくても構わない気もするが、一応確認しておきたい。

「謎ですか、もしや迷宮造園士のお力を得られたのですか?」

クーが順番決めから離脱して眼を輝かせて聞いてくる。残念ながら取得条件が分からないので、今後も得られないと思う。ユーピンプレイヤー達はこの世の全てを発見したわけではない。

 この世界は人の創ったものだが、エンディングもないオープンワールドなので、イベントやアイテムは未発見の事柄もある。所詮地球ではサービスの停止された不人気ゲームだ。俺もイベントフラグを見落としていたのに、神であるアキラに会ったんだから、そう出来の良いシナリオでもない。

「いや、何か天職を得たわけではない。魔物の知性を調査する」

「魔物に知性?そんなもん無いじゃろ」

「確かに、魔物は成長することも知識を得ることも有りません」

「俺の調査するのは大魔王だ。そいつに知性があると人間世界が征服されるかもしれないからな、念の為だ」

「大魔王…書物に曰く、全ての荒野を氷河にするものです。そんな者を倒そうと考えるとは…」

「大魔王…パルィマ伝説か、倒したものは真の勇者となると伝わる存在じゃな」

「多分勝てるよ、今までだって旦那様に勝てる奴なんていなかったんだから」

三者三様に期待のこもった表情だ。倒すなんて言って無いぞ。

「ギャーズ!」

俺も連れてけと言う。

「そうだな、今回の迷宮はお前も連れて行ける。ただ、ケリーはレベルを上げて無いから死ぬかもな」

そういやレベルあるんだろうか?仮想視界で見ても確認できないが。

「ギャャー!」

絶対行くと言っている。

「そうか、では皆で行くぞ。未知箱に」

四者四様に頷く。まぁ、未知箱に入るのは正午…つまり12時ちょうどなので、まだ6時間くらいあるのだが。


「あれが未知箱か」

東国の中央に位置する賢者塔のお膝元にその箱はあった。立方体の箱は5mほど上空に停止していて、緑の太陽からの光をプリズムの如く光をビルの分散している。箱は光を石畳に照射している、あれが迷宮への入り口である。あの下に行けば迷宮に入れる。

「この迷宮が最後の迷宮になる。少なくとも俺はそのつもりだ。調査が終われば、迷宮潜ることはもう無い。図書館は例外だが」

3人は頷き、1頭は鳴く。了解したそうだ。

「正午までは20分ほどある。鎧を装着するぞ、各自クロスチェックを怠るな」

全員激質性鉄でできた装備を整える。水転の装甲靴はもう使わないので、誠信(バクテイ)の疾風靴に新調した。ケリーは自前の羽毛だけだが。

「しかし、私がこの牙を装備してよろしいのですか?これは私達の所持する武器としては最強です。御主人様が装備なさっては?」

流石に一番早く鎧を装着したのはクーであった。流石に手慣れているな。

「未知箱の作法は説明しただろう?お前が一番重要な役割なのだ」

決意の顔でクーが頷く。勿論他の2人にも宝具を与えている。迷宮の前では武装しても罪には問われないのだ。ヘルには防御用の亀の甲羅を与え、アイには世界樹の杖を与えた。やっぱりケリーは自前の牙と爪だが、仕方ない。

「作戦のミーティングは既にしているが最終確認を…ってなんだクー」

装備品と用意しておいた迷宮内部地図のチェックをして、3人の装備に赤光を込め終わると、クーが尻を叩いてきた。イヤン。

「昨日の連中です。アイの姉一味です。尾けられていた気配はありませんでしたが、やはり何らかの能力で私達の位置が分かるのでは?」

なんと、昨日激論を交わした4人組が背後からやってきた。まぁ蛙とは一切喋らなかったが。それにしても、町中で帯刀しているし、騎士団に全知のカードを提示を求められたら、叛乱者のカルマ判明で死刑か奴隷として売られるというのに、肝の太い連中だ。アイの姉が頭を下げる。

「昨日は失礼いたしました。こちらにいらっしゃると耳にしたので、一言謝罪に来ましたの」

昨日とは打って変わって落ち着いた様子だ。しかし謝罪に来るタイミングでもない。来るなら午前中はずっと館に居たのだから、もっと早く来てもいいはずだ。

 やはりなにか怪しい、無理やりにでもアイを連れて行きたいのだろうか?それとも他に思惑があるのか?

「わざわざどうも、謝罪なんてよかったのに、また何時でも館においでください。それよりこれから迷宮に入るので、できれば打ち合わせをしたいのですが」

願わくばさっさと帰って欲しい。未知箱は危険だ。死ぬ危険がある。

「あら、迷宮にお潜りになるのですね。勇気のあること…私達もご一緒してもよろしいかしら?」

アクセントにちょっと侮蔑的なニュアンスがあったが、聞かないふりをしておこう。

「未知箱はこの国では最難関ですよ。俺達は準備をしてきましたが、貴方達は…」

実際周りには探索者どころか、商人もいない。それだけ危険の多い迷宮なのだ。オウバが声変わり前の声でしゃべる。

「問題ありません。僕達は皆凄腕ですから」

蛙がすごいビクッとした。蛙男ことググはまだ奴隷商LV1である。大丈夫だろうか?面倒見る気は無いが。

「別にいいじゃろ、未知箱の作法からいって、奴等が敵でも問題ないはずじゃ」

「確かに、むしろ囮になってくれるかもしれません」

「う~ん。あの蛙さん汗ダラダラだよ、止めた方が良いんじゃないかなぁ」

「ゲギャー!」

こっちは問題無いが、あっちは問題だらけか。いかん、結構時間とられた所為で、迷宮進入時間が迫っている。箱の光が徐々に色を変えている。もうすぐ正午だ。

 タイミングは逃したくない。心の操作をしてくる気配も無いが、一応警戒させる。心の操作を行うためのステータスの閲覧は対象が動き回ると行うのが難しくなる上に、距離が在ると出来ないはずだ。とはいえ俺の仮想視界とオウバのそれが同様のスペックとは限らないが。

「ここの作法なんかはご存知かな?正直説明している時間は無いんだが」

「別に構いませんのよ、そうだ、どちらが先にボスを倒せるか競争しませんこと?」

蛙男がビクビクからガタガタに動きを変えた。可哀想に。

「ここは本当に危険だ。責任はとらないが構わないか?」

「…議論では負けましたが、武芸では負けません」

ローザが今日始めて口を利く。対抗意識があるのか、やはりお嬢だな、負けた事があまり無い所為でこんなことをする。オウバも晴れやかな表情だ。お前達はともかく蛙男は確実に死ぬぞ。まぁ俺には関係ない。もしやオウバは攻略本の存在を知らないのかもしれない。ここの作法と敵を知るなら、こんな態度ではいられない。

「そうですか、御武運をお祈りします」

実際俺も今日は仲間の誰かが死ぬかもしれないと思い、1人で来ることを検討したのだが、皆が俺が死ぬとどの道自分達も死ぬと言いだしたので、連れてきた。まぁ俺の仲間を1人も死なせる気は無いが、覚悟はしておく、なにせボスは奴だ。

 多くの人間を闇の絶望に飲み込んだ大魔王である。何が起きるか分からん。もしも奴に知性が在ったら、この世界は終わりだ。

ステータスをチェックする。迷宮に入るのは最後の予定だから、これが最後になるかもしれない。


名前─平・ソウド─男

状態─所有物─所有技─所有技─武者─武芸百般─呼吸法⑧─歩法⑧─礼法③─剣術◎─槍術③─手裏剣術②─馬術②─…─到達者─アイテムボックス⑦─アイテムサーチ②─アイテム鑑定③─アイテム能力解放①─トラップサーチ⑤─防人─武者式防衛術─護身術⑧─盾術②─防御陣形③─武流─赤光②─跳躍者─ワープ②

天職─武者LV61─セカンド─到達者(アテインメンター)LV02─サード─防人LV56─フォース─武流Lv33─フィフス─跳躍者LV12

設定─褒章値344/655─悪行値0/108-獲得金増大2倍-獲得経験値6倍


問題は無い。フィフスは剣術スキルが上達したおかげで得たようだ。剣術を成長させたお陰で取得したと思われる剣聖(シンカゲ)を5番目のジョブにしようかとも思ったが、ワープを成長させたいという思いがあるのと、戦闘職は武流と武者で足りているという気もするので、跳躍者にした。

 しかし剣術は完成したのだろうか?素振りや動かない的を斬る技術はこれ以上ないくらいに上手くは成った。しかし動きながら斬る場合は別だ、完成しているとは思えない。

 それとも俺の才能の限界だろうか?スキルにはまだ謎が多い、別に解明する気も無いが。続いて仲間のジョブもチェックする。


所有物─従愛奴隷─クー・ル・ギ・シ・ジュウイン─神狼依り代LV0─セカンド─猟人LV37─サード─森絆人(ロビン)LV12

所有物─伴愛奴隷─ヘル─風流士LV53─セカンド─魔法使いLV59─サード─魔導師LV30

所有物─絆愛奴隷─アイリシャン・ル・バズィフィール─樹海巫女LV37─セカンド─魔戦士LV33


アイが少々不安だが、一応問題はないはずだ。レベルについての考察と攻略本の情報通りなら、総合レベルが70あれば大丈夫なはずだ…ギリだな、やっぱり心配だ。

 クーとヘルにも一番最初にアイと合流すべしと言っているが、上手く行くとは限らない。さて…ジョブは全員問題ない。今回の迷宮の攻略の要である特殊装備を取得する。


設定─特殊装備取得─グラム─蜻蛉切─獅子王─和同開珎─剃刀─エクスカリバーの鞘─教祖の剣…─光明の光玉─潮満玉─…


光が2つ被っている玉を取得する。あぁ…褒章値がちょうど100ポイント減った…ヒドイ…酷すぎる。掌に小さなオレンジ色の玉が出現する。こんなもんに使ってしまったのか、別にどうしてもこの迷宮を攻略する必要なんて無いんだがなぁ~まぁ魔物の知性確認はいずれやらねばならない事だ。玉を袋に入れる。

「準備完了だ。さて行くぞ」

大所帯で光の元に入る。光を潜り抜けるとそこは、町並みから一変して大草原である。草も普通に緑色だし、草の高さも最大で踝までである。そして俺から見て右前方遠くに黒く聳え立つ城が在る。奴の住む城だ。ここはX12Y25の辺りか、早く皆を見つけなくては。

「ギャーーー!」

後方から人の叫び声が聞こえた。足に赤光を集中させ、草原を駆け抜ける。500mほど向こうに巨大な魔物が見えた、市営住宅くらいのサイズのドラゴンである。

 蝙蝠に似た羽根はヘリのローター並のばかげたサイズだ。実にばかげている。全身の鱗は緑色で鱗一つとっても畳並みのでかさだ。尻尾も長い、小川の様だ。まだ後姿しか見えないが、実にデカイ。仮想視界で視る。


獅子面獣竜(マントゴン)LV69


マンティコアの親戚だったか、つまり爬虫類よりは哺乳類に近い。間違い無い、ドランⅢの敵だ。ラストダンジョンに登場する怪物である。レベルも雑魚だというのに高い。

 マントゴンは俺の接近に気付かない様子なので、大火焔棒を尻の穴に突き刺す。座薬と違って死ぬほど熱い、穴とは基本的に弱点である。

 突っ込んだ大火焔棒を滅茶苦茶に振り回し、マントゴンの尻穴を拡張してやり、ケツをぐちゃぐちゃにしてやった。辺りに鱗と血が飛び散る。

「ガォオオオオオォン!」

断末魔を上げる。やはり問題なく殺せる、俺はここの敵に一撃も貰うことなく殺せる。今の攻防も奴のケツに突っ込んでから、時間にして1分も掛かっていない。

 死体をつつく、アイテム回収が目的ではなく、バカでかい死体をどけるためだ。今は散り散りになった仲間の回収が最優先である。まぁインゴットは拾うが。死体が消えて見通しが良くなり、正面に人影が見える。

「ゲコゲコゲェツ!」

お前かよ。

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