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首無しの耳長美女

瓶の中の金貨をすべて袋に入れるのに時間がかかったが、何とか終わったので瓶の中からでる、問題はこの瓶だ。

「地面と癒着していないから、持って帰れるんだろうが…うん、持てないことは無いが目立つな」

どうしよ、館のインテリアにしたいくらいの値打ち物なのは確かだ。綺麗な星空の描かれた陶器、玄関とかに飾りたい。出来れば持って帰りたいが、何せ目立つ、余計な視線は排除して起きたいのだが。

「こんなこともあろうかと、風呂敷を用意しておきました。多少は目立たないでしょう。探索者が獲物を過大に見せようとするのは良くあることですから、それほど目を惹かないかと思います」

「ふ~ん、そうなんだ。でも綺麗な壺だよねぇ」

壺じゃないぞ、まぁ似たようなもんだが。3人で協力して瓶を包む、クーは本当に用意が良い。伝統ある台詞も使いこなしているしな。

「さて、壁の文字は…あった。『出』だ」

北側の壁に記された文字に触れると、部屋の中には特に何も出現しない。恐らく以前ルンを運ぶ時に使った階段は現れているんだろう。

「ヘル?階段は新しく出現したか?」

ヘルが黄色の風を送り、1分もしない内に頷く。どうやら見つけたようだ。

「では帰るぞ、瓶を抱えて帰るから、ぶつけないように指示してくれ」

担ぐより良いんだろうか?これが宝具なら良いんだが、残念ながら鑑定の結果宝具ではない。瓶の中身は全部宝具だったが。2人の声を頼りに迷宮を進む、敵がいないのでありがたい。

「それにしてもルンはボスを倒したんだろうか?食当たりが死因だったようだが」

「恐らく倒してから何かの毒物を服用して死んだのでしょう。故意か偶然かは分かりませんが。御主人様も毒や食品に気を付けなくてはなりませんね。骸塚の死体達の様にはなってほしくありません。これからは…」

「私が毒見するよ~」

クーの言葉をヘルがつなぐ。ヘルは魔人だが、元は人間だが…毒見の意味あるんだろうか?

迷宮から出ると、周囲の人間が少し見てくるが、すぐに冷笑される。どうやら背負った物はでかいが虚言だと思っているらしい。まぁ当然といえば当然か。いつもは寄ってくる商人も今日は寄ってこない。まぁ今日は買うものは特に無いが。

(御主人様、どうやら迷宮制覇により、新たな力を得られたようです)

クーが耳打ちしてくる。嬉しそうな様子だ。ステータスを視るとサードジョブを得ている。俺と同じ数か、撫でてやりたいが両手がふさがっている。

「よくやった。お前の努力が実を結んだな」

「御主人様のお陰です。これからも誠心誠意お仕えいたします」

本当に嬉しそうな顔だ。クーは強さにコンプレックスが有ったから、成長出来て嬉しいのだろう。さてサードジョブは何を選ぶんだろうか?楽しみだ。


「あんた、そんなもん持って来られても困るよ。ここはあんたの土地だけど、まだ建物ないんだよ?何処に置くの?」

迷宮を出てから5kmは歩いたが、冷静に考えると確かにそうだ。だからって宿屋にも置けない。整地はかなり進んでいるから、その辺に置いてもよさそうなもんだが、ルチにも段取りというものがあるだろう。

「まぁとりあえず、うちの作業員の泊まってる小屋が有るから、そこの前にでも置くかい?てか他に置く場所ないけどね」

小屋をこんなに早く作るとは、腕の良い奴だ。小屋は…これ普通に核家族が住めるんじゃないかというようなサイズだ。良く数日で造ったな。

「分かった邪魔にならないように置いとくよ。しかし整地はかなり進んだんだな」

森の中に平地が出来ている。以前ルチの示した木を伐採する場所はもう完全に終わり、地面も均されている。

「強腿竜が5匹もいるんだ。これ以上掛かったら青白腕だな、整地は終わったから門までの路を造る。黄炭でいいか?あれが一番路に向いてるんだが」

「素材は任せるよ。そういや門とか路に規定はないのか?」

江戸時代は門柱や住む場所も決められていたはずだ。帝政のこの世界はどうなんだろうか?いまさらそんな事聞くなよと言う気もするが…我ながら見切り発車だ。

「帝国法とビル自治法の建築関連は頭に入ってる。別に門に規定なんてないよ。塔の規定だけだ、この館には関係ないけどな」

「そうか、分かった。まぁあんたに任せるよ。ところで金は何時渡せば良いんだ?」

「館の出来栄えを見てからで良い。あんたはアオミの紹介だ、金については信用する」

自信家だな、俺が払えなくなったらただ働きだけど良いのか?その場合はアオミが払うんだろうか?

「分かった。館が出来たら家紋入れてほしいんだが」

「お安い御用だ、あんたみたいに注文の少ない客は初めてだよ。普通はもっと難癖付けるもんだが」

「なに、建築の事を知らないだけだ。ところで風呂は当然あるんだよな?」

この辺の文化から云って、わざわざ言わなくては造ってくれないかもしれない。

「図面に書いてたのは全部造るよ、あの館を造ったのは大層な天才だ。いじると変になるから、なるだけそのまま造るから安心してくれ。」

良かった、地球と意世界場所は違えど建築の法則のようなものは同じらしい。

「来週には出来上がるから、楽しみにしていてくれ」

速すぎね?ログハウスでももうちょっと掛かるぞ。手抜き工事をしそうな男には見えないが。意世界ではこんなもんなんだろうか。


「3人目の奴隷を買いに行くから、支度を手伝ってくれ」

宿に帰って鎧を脱ぎながら宣言する。鎧はボルトで留めてあるので脱ぐのに手間が掛かったが、別に1人で充分脱げる。クーとヘルも流石に今日は1人で脱ぐ、少し期待する目をしていたが、俺の脱がしテクはそんなに気持ち良いのだろうか?

時間はまだ3時のおやつ位なので、充分奴隷を見て回れる。今が旬だと言うしエルフがいると良いのだが。

「植物を友とする耳長族は緑色の髪をしているそうです」

緑色の髪をした人間いたけどな、間違われないんだろうか。

「エルフかぁ~仲良くできるかなぁ」

「仲良くは出来ないかもしれませんが、共に仕えることになる者ですから、互いに敬意を払うようにしましょう」

おっけー、とヘルが返事をしている。しかしエルフはそんなに性格が悪いのか、それなら安いんだろうか?そう言えばエルと言う奴は妙なフルネームだった。GMの傍に居た事からいって、奴も元地球人だろう。姿は変わっても、記憶は残ったのかもしれない。

しかし妙な事を言っていた。エルフはわいのもんやでぇ!みたいな事を言っていた。単なる独占欲と云うよりは、決まりごとを根拠にしているような事を言っていた。

最初に会った時は俺が日本人と気付いていたんだろうか?エルフなら自分の物というの一体どういう意味なんだろうか?死んでしまったからもう何も分からないが。


「見事なお召し物ですね。わたくし案内役のササーと申します。以後お見知りおきを…今日は何をお探しで?」

ゴィゴに到着して早々に案内役に遭遇した。流石に金蔓に目を光らせているだけ有って行動が速い。青い肌をした魔人で、悪行は特に無く東智国民だ。2人は宿に残らせて、新人の歓迎用にご馳走を作らせている。

「緑の髪のエルフを探している。別に特定のエルフではなく、庭師として館に迎え入れたい」

「そうですか…エルフは大勢入荷したのですが…」

入荷か、奴隷とはまったく酷い身分だ。さて果たして俺に少しでも解放に貢献できるだろうか。

「緑髪が居ないのか?」

「いえ、そういうわけでは、何と言ったら良いのやら…少々傷物なのです。いえ怪我や貞操には問題ないのですが…呪いを受けているのです」

「呪い?どんな呪いだ?3年後に死ぬとかそういうのか?」

「いえ、命に別状は無いのですが…見れば丈夫そうなお方ですから…とりあえずご案内しますか?」

頷いて、ササーに黒く四角い建物の1つに案内された。ゴィゴは何処もこんな感じだな、法律で決まっているんだろうか。黒い建物の内部は以前ヘルと会った場所と全く変わらない。マンションの廊下に見えないことも無い、その中の一室に案内され、中に入ると…

「また来おったか!わらわを買うなどという愚か者など死ねっ!五体バラバラになって死ねっ!」

部屋の中央には、椅子に座った首の無い黒服の女が居た、線が細いが良い体している。何処で喋って…部屋の中に鳥かごが有り、その中から緑の長髪が零れている。顔は見えないが、あれがエルフか、いやデュラハンかもしれない。一応仮想視界で視る。


名前─アイリシャン・ル・バズィフィール─性別─雌─年齢─19才─種族─耳長族樹海種

天職─樹海巫女フォレストシスターLV28

設定─悪行値0/108─奴隷化呪─首無化呪


首無しの呪いか、そのまんまだ。しかし若い、エルフといえば長命だが彼女は単に若いのか寿命が人間と変わらないんだろうか。体は人間の19才の美女並だが。

「では、私は外にいるので、ごゆっくり…」

ササーが部屋の外に出る。自由に触れ合えるのに2人きりにして良いんだろうか?

「はじめまして、俺の名前は平・ソウドだ。庭師を探している。給料はちゃんと払うし待遇は良いと思うぞ、まぁまだ館が出来てないんで、しばらくは暇だが」

「お前アホか!館も無いのになんで庭師雇うのじゃ!だいたい王家に連なる妾を庭師じゃと!」

もっともだ。しかし王家?エルフの王家にしても金さえ出せば奴隷にならずに住むはずだが。

「館は来週には出来るから、それまでは迷宮にでも潜ることになるな。君に願いが有るなら聞く用意もある。その呪い…解きたくないか?奴隷化呪も含めてな」

首無しの解き方なんて知らないが、奴隷は解けないことも無い。それにいざとなればランプを使えば良い。あれにはそれ位の事が出来る力はある。使えるのは最短で3年後だが。

「…貴様は強いのか?いくつの迷宮を制した?」

「8種類だ」

迷宮の数え方は種類で良いんだろうか。個?棟?

「そんなものか、あと2つで力を得るはずじゃ、勿論並大抵の苦労では無いが」

「仲間の1人はすでにその力を得ている」

正確に言うと2つの力と言えるし、全員2つ分得ているが、いちいち訂正するのも面倒だ。

「ほう…さては貴様、使い走りじゃな」

パシリか…そう言えばあの公園でタクと云う奴が近所の小学生をパシリにしていたな、自分は高校生のくせに

「俺は迷宮制覇以外の力を得ていると言ったらどうする?」

「ふん!そんなものは御伽噺よ!じゃが貴様…悪くないな…妾をこの籠から出す勇気はあるか?」

勇気?実は顔はすごい不細工なんだろうか?声は朝一番に聞けたら一日が楽しくなるような綺麗な声だが。

彼女の首の断面がどうなっているかという好奇心を抑えつつ、籠の正面に近づく。籠の中には頭だけの美少女が入っていた。小さく形の良い唇、筋の通った高い鼻に切れ長の目と細く形の良い眉、そして妖精のように長い耳、それらがよく調和し人外の美しさを生じさせている。

「貴…貴様、大きいな、赤鬼(オウガ)の親戚か?」

ちょっと怯えている。そんな大柄でもないが、彼女は頭だけだから俺が大きく見えるのだろう。

「君は小さいな、だが美人だ」

「ふ、ふん!当然じゃ!だが、お主ならば奴を倒せるかもしれぬな」

「君に呪いをかけた奴か?」

「あぁ…奴は強いぞ…倒せるか?」

倒せ無くても呪いを解ければ良いような気もするが、そう言うわけにもいかないか。

「なんとかするさ」

「そうか、ではよろしく頼むぞソウド。妾の名はバズィフィール王家の第三女アイリシャン・ル・バズィフィールじゃ!呪いが解けるまでの間じゃがよろしく頼むぞ!」

首だけでのけぞって自己紹介された。さっきからピクリとも体が動いていないが、そもそも体動くんだろうか?そんな事も知らないのに仲間にしようとしているとは、俺は本当に思慮が足りないな。

まぁ美人で良い体してるし、文句は無い。体に悪戯したらどうなるのかも知りたい。反応してもしなくても美味しい、王家など微塵も興味は無いが、高慢な女を蕩かすのは楽しそうだ。首無し女という個性も悪く無い、何事も経験だ。

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