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容疑者の疑い

武流─赤光①


タケルのスキルはこれだけか。攻略本で確かめてみると、武者の上級は将軍であった。やっぱり当てにならない本だ。赤い光を刀身に集中させてみると、光が移動していることが分かる。やはり集中したほうが強いのだろうか?試しにクーの風の爪に光を集めてみたらちゃんと光る。

「爪は強くなったか?」

「わかりません」

爪をブンブン振っているが、実際切らないと分からないか。光が減衰する様子も無い。

「まぁいい。周りに敵はいないようだし、回復アイテムを使うか」

袋から回復力の低い青い魔水と青い生薬を、3つづつ取り出し、2人に1つづつ渡す。魔水を飲み、生薬─餅のような形─も飲む。体に清涼感と満腹感がある。回復したようだが、そもそも俺はサムライの呼吸法スキルにより疲労がすぐに回復する上に、回復能力も光のせいか上がっている様な…タケル本気マジチート。

「まだいるか?2人は階段探知と魔物探知をやらせているから、疲労があるんじゃないか?アイテムはまだまだあるぞ」

「私は要りません」

「あんまり美味しくないし…いや体力的には大丈夫だよ?」

2人を眺めると、挙動や足の運びからどれくらい体力が残っているか分かるが、ひとまず大丈夫そうだ。確かに魔水も生薬もそんな美味しくない、魔水は水道水に風邪薬を混ぜた味だし、生薬は子供の嫌いな野菜を5種類くらい混ぜた味だ。大人でもあんまり食べたくない味だ。


「とうとう60階か、結局敵は魚人の群れが一番きつかったな」

そいつらも一撃で倒せるようになったたので、問題はなかった。どうも敵LVも40くらいで頭打ちくらいだ。これで最難関迷宮とは思えないが、たしかに帰還するのに時間もかかるから危険度は高いのは確かだ。俺はワープできるからな半分楽だが、しかしなんで地球人はワープがそれほど消費しないのだろうか?元々ワープに適正がある人種なんだろうか?それとも複数ジョブのお陰だろうか?

「ここが60階ですか…妙です。魔物の気配がしません。私に分からないだけかもしれませんので警戒を怠らないようにしましょう」

敵の気配がしないのか、そういえば周りの風景も違う。これまでは洞窟だったが、ここの第一印象はコンクリート製の遺跡である。周りの壁・床・天井には継ぎ目が無く、のっぺりしていて、空も見えない。床は当然のように濡れているが、水量がこれまでより多い、ここは靴が完全に水に浸かってしまっている。水は靴には入らないが、いっそう動きにくい。

「ヘルは大丈夫か?敵もいないならおんぶするぞ」

「べつにいいよぉ」

おんぶを三回頼むには勇気が足りない!まぁ別にいいか、おんぶプレイは夜やればいい。それにヘルは結構いい根性をしているので、わざわざ言うことでもなかった。

四角い道を進むと敵も罠も無い。一応仮想視界を開きながら、透明な敵がいないか警戒する。だが、別にいない。そういえば、ボスのいない迷宮もあるんだろうか?仮想視界の端に何かが引っかかった。


名前─ルン・ルン─性別─男─年齢─18才─種族─人間

状態─食当たり

天職─魔騎士ルーン・ナイト

設定─悪行値0/108


「いた…ルンが居た…」

50年前にここに潜った男が…いや年齢からいって孫だ。うん、息子か孫か甥だ。幽霊ではないはず…ゾンビがいるなら幽霊もいるか?とにかく食当たりの男がいる方向に行ってみる。大きな門があるが、現在は開け放たれている。ボスの部屋に似ているが…中を見てみると、確かに20代くらいの若者がいた。しかも全裸だ…動かない?全く動かない。

「クー?アイツからニオイはするか?」

「いえ、臭いはしません。死臭もしませんが生活臭もしません。…なんですかあれは?」

分からんと首を振る。ヘルが治療呪文を唱え、緑の風を送るが、反応は無い。

「とりあえず近づいてみるか、警戒を怠るな、ボスの罠かもしれない」

2人が頷く。これまでの迷宮には罠や道具を活用する敵はいなかったが、ここは違うかもしれない。ルンに近づくと、うつ伏せになっているので、起こしてやると、そこには…好青年だ。全裸の黒髪美男子だ、別におかしな所や欠損している箇所も無い、全裸だが。息はしていないし脈も無いが、死体とは表示されていない。食当りだ。とりあえず袋から俺の予備の服を着せてやる。

「地上まで連れてってやるか、多分そうした方がいいだろう」

「その男がルンですか?しかし何故まだ死体が…」

「オバケじゃないよね…」

「分からん。迷宮の作法と関係しているのかもしれない。ところでヘル階段はないのか?」

ここより下はあるんだろうか?

「あっうん。調べるね」

黄色の風を送り出す。

「私達の来たのとは別の、上に通じる階段があるよ」

「別の?」

とりあえずそっちの階段に行くか。部屋から出ると、扉が勢い良く閉まった。流石に死体を担いだまま敵と戦うわけにはいかない。一つ一つ解決しよう、まずはアカシュの頼みからだ。

俺達の来たほうとは別の登り階段の前に立つと、階段の上から陽光が射している。一応全員の汚れや血を拭いておく。登っていくと、やはり地上に出た。青龍洞のアーチの裏である。登ってきた階段は消滅している。なるほど、60階まで行くとワープは要らないのか。

「とりあえずアカシュの店まで行くか」

死体を担ぎながら往来を歩くなんて、警官に囲まれそうなことをしているが、無事アカシュの店に着いた。店の裏口から入り、従業員に事情を説明して、店の中の一室でアカシュ老人を待つ。そうしていると、店の奥からアカシュ老人に似た壮年の男が現れる。息子だろう。

「アカシュの息子のアオミです。父がお世話になっているそうで」

「いや俺もケリーが世話になっているからお互い様です。平・ソウドです。よろしく」

「いえいえあんな暴れ竜を買っていただいた方には本来なら店主である私がお礼を言わなくてはならないのですから、ご挨拶が遅れて申し訳ないくらいです」

商人だけあって良く喋るが、不思議と不快感は無い。声も耳障りではないし、顔の表情もいやらしい感じではない誠実な感じだ。いい人っぽい。

「ところで、土地の事は聞いているか?」

「勿論です。どの土地をお買いになりますか?」

この土地だと言って、袋から書類を取り出し、メインストリートからは微妙に遠いが広い土地を示す。

「ここに家をお建てになるので?」

「土地勘は無いので、後で見に行く予定だが、第一印象はここにしたが…駄目なのか?」

不安になってくる。アカシュ老人は変な土地を紹介するような人間では無さそうだが、やはり意見は人それぞれだ。

「ここは20年ほど前までは、うちの竜牧場だったんです。土の栄養がいいせいで、草木がボウボウなんですよ。だから広いんですが、一手間いるんですよ。木を切って、草を抜いてと、どうしてもお金がかかるんですよ。まあ地盤はしっかりしています、竜が30頭跳んだり跳ねたりしても大丈夫な土地ですから」

栄養もいいのか、ますます買いたくなった。

「草木を処理するのにいくら位かかるかな?」

商人ならそういうのは詳しいだろうか?

「そうですねぇ~人足を1日1ナルで雇って~10人もいれば10日で終わりますかね」

日本円で100万くらいか、こういう仕事の目安が分からん。ある程度は自分でやってもいいが。何せ俺の体力は無尽蔵だ。炎天下で一日中草薙ぎをしても堪えない。タケルだけに!…ちょっと寒いしあんまり繋がってないか。

「そんなもんか。ところでなんで20年前にそこの竜牧場を閉めたんだ?」

経営難か?

「ちょうどその頃に、ここに在った竜牧場が経営難からうちと合併することになりまして、前の牧場を閉めたんですよ。こっちの方が便利な交通事情だったので」

店の名前がアカシュだし、アオミは店の人間がたびたび呼びに来る際に旦那様と呼ばれていることから、実権を持った店主だと解る。合併はアカシュ側の有利な形だったんだろう。

「ところで、この店は土地も扱ってるのか?他の候補もあんたの家の土地なのか?」

「いえ、親父が知り合いの土地紹介屋に頼んだんだと思いますよ。他の土地を見たいなら、その人を紹介しますよ」

フットワークの軽い隠居だ。まぁそうでなくては商売なんてできなかっただろう。俺には向かないな。

「ところでそちらの方はお疲れなんですか?先程からピクリともしませんが」

ルンのことである。

「ところでアカシュ氏は壮健かな?急に心臓とか止まったりしないか」

「?えぇまぁ…病気知らずですよ、それがなにか」

「実はこれな…変な奴だと思われそうだが…ルンさんの死体なんだ。知ってるルンさん?」

「私の伯父ですね、とっくに亡くなっているはずですが、それも50年ほど前に」

俺を疑う目をしている。無理も無い。

「ルンさんの消えた迷宮の奥から見つけてきたんだ。変な事を言ってるのは分かってるが、事実だ。別にこの事で、土地を安くしてもらおうとかは考えていないから安心してくれ」

口に出すとなお怪しいか?

「はぁ…お話しは分かりました。まぁ父もいまさらそんな綺麗な死体を見ても大丈夫でしょう。なにせこういう商売ですから、奉公人が竜に蹴られるか噛まれるなんてのは何回も見たことですから」

ほんとに大丈夫だろうか。アカシュ老人が部屋に入ってきた、ルンを見て驚いている。そりゃそうだ。

「ルン兄…あの日のままか」

「親父?その死体が伯母さんの結婚相手のルンさんなのかい?言いたか無いが若すぎるぜ?」

確かにアカシュ老の兄という年ではない、まぁ老婦人の若い夫なら別にありえないことも無いが。

「ありがとうございます、ソウド殿。こんなに早く連れてきてくれるとは思いませなんだ。本当に感謝します」

老人の表情は晴れやかだ、心配は杞憂だったか。

「いえ、というか本当にこの人でいいんですか?確かに60階にいましたが、若すぎるのでは?」

「そうだよ親父、ルンさんにしては若すぎる」

アオミも疑っているようだ。

「ルン兄だ、間違いない。葬儀は身内と昔の友人でするから、連絡をしておいてくれ」

「いや…別に構わないけど…若すぎるだろ?ルンさんの息子さんかお孫さんじゃないのか?それなら身内を探さないと」

「すまんな、アオミ。わしの頼みを聞いてくれ、式の費用はわしの蓄えから出す」

「…一応騎士団にルンさん似た人で最近いなくなった人がいないか聞いておくよ」

もしかして、どこかでルンに似た人を殺害して持ってきたと思われているんだろうか?無理も無い、自分で言うのもなんだが、死体を担いできた男を信用する商人は見る目が無い。…しかし他にやりようは無かったんだろうか?裸だったから、遺品は持ち帰れないにせよ、遺髪で良かったかもしれない。いや俺の髪の毛だと思われるのがオチか、ままならないものである。

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