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勇者の力

「流石に長男の刀でも一撃で倒せなくなってきたな」

現在40階である。明るさはどういうわけかまだ天井の穴から青空が覗くのでかなり明るい。先程斬り殺した魚人はLV40だったが、袈裟切りだけでは駄目で、返しの刃でようやく死んだ。2撃である。一見すると大した差は無い様に思うが、これまでザコは全て一撃であったことを考えると、これは拙い。この迷宮は魚人が6人組で出てきたりするのだ。合計12撃である。しかも空振りになったらまさに徒労である。そろそろこの刀ではきついだろうか?しかし大火焔棒は属性的に弱いから…どうなんだろう?実戦で実験するほどの胆力は無いし、今の刀は使いやすいので出来れば引き続き使いたい。先程ステータスをチェックしたら、サムライがついに49になっていた。ついに最上級まで後1である。

しかしこれ以上は危険だろうか?ワープで帰れるかどうかは謎だが、ワープで迷宮内にはは入れないそうだ。つまりワープで帰るべきかどうか実験するかは微妙なラインなのだ。後1レベル上げるには時間がかかるが、ワープで帰れない場合は40階を戻るので自然とレベルは上がる。ワープの実験を帝都でやっておけば良かった…跳躍者ジャンパーを取得するために魔導師と発見者両方を25まで上げるのに時間がかかったせいで、結局ムカデ箱に乗るタイミングから実験できなかったのだ。ワープできるだけあって結構難関ジョブである。しかし、これ以上は拙い。回復アイテム─生薬・魔水─ももっと無いとこれ以上は危険である。

「では、帰るぞ。俺に掴まれ」

「よろしいのですか?」

「ぜぇ~はぁ~まだいけるよ…」

どう見ても無理そうだ。怪我したらケーキ食えなくなるぞ。

「ここに潜ってみて分かったことだが、生薬や魔水を大量に用意しなくては、とても60階にはいけない」

「そうですね。魔物1体につき平均して金貨2枚を得たわけですから、今日の収穫は金貨だけで60万ナルに上るわけですから、充分許容範囲です。次に来る時はここの敵や環境に適応した装備をすればいいわけですから、さらに稼げますね」

実際ヘルが無駄に疲れているのも、足元の環境のせいである。何せ濡れているので良くすべるのだ。俺とクーは足腰が強いので平気だが、ヘルは体力を大きく消費してしまった。それに階段探知にも精神力を使った。しかし濡れた路面でも大丈夫な靴ってなんだろ?冬靴?登山靴?

「ではワープするぞ!掴まれ」

2人が右と左の腕を掴む。ヘルは疲労しているせいかガタガタ震えている。今日は良く頑張ったしケーキを太らない程度にたらふく食うことを許す。しかしこれでワープできなかったらことである。祝詞を唱え、行き先に宿屋を思い浮かべる。


掛巻かけまくかしこき 諸神等もろかみたち廣前ひろまえ一二三四五六七八九十ひふみよいむなやこと自在自由じざいじゆう天御中あまのみなかまおさく』


景色が一瞬で変わる。青い鍾乳洞から室内へと移動したのだ。この世界に来た時もこんな感覚だったのだろうか?寝ていた時に来たので良く分からないが。とにかく帰ってきた。靴が水で濡れているので、宿屋の床が濡れてしまった。今度は外に転移するようにしよう。しかし疲れた。フルマラソンしたぐらい疲れた。精神的疲労も肉体的疲労もすごい。全身鎧のままベッドに倒れこむ。

「あぁ~疲れたぁ~」

ワープのせいか?迷宮の疲労よりワープの方が酷い気がする。あぁもっとレベルを上げるべきだったか、そうすれば問題なくワープをもっと自由に使えたのに。レベルが上がるほど強くなっているのは奇妙だが自覚している。無限に強くなれるのだろうか?流石に無理か。

「ヘルは…無理そうですね。では御主人様鎧を脱がします。お疲れ様でした」

クーが兜と鎧を脱がしていく、ヘルは部屋の床にへたれこんでいる。流石に子供のように脱がされるままというのはどうかと思うので、起き上がり、綿の腿巻と鉄綿の脚袢を外す。

「ワープは寝込むほど疲労するといいますが、宜しいのですか?」

「寝込むほどじゃない。3時間ぐらい休めば平気だろう」

自分の限界と健康状態は完全に把握している。サムライ・パワーのお陰である。さて少し回復したので、クーの鎧を脱がしてやる。

「あん…」

女の子の鎧を脱がすと云うのは結構楽しい。着せ替え人形なんて持っていた事は無いが、ちょっとあの遊びが持つ楽しさを理解した気がする。いや、悪代官のやる帯をクルクル巻き取るアレの方が近いか?クーの鎧を脱がし終わったので、ヘルの鎧をクーと一緒に脱がす。

「くすぐったいよぉ…」

しかしヘルは後衛職なのに鎧でいいんだろうか?攻略本によると、ユーピンは魔法使いでも専用装備は宝具以外は無いらしい。つまり戦士も魔法使いもレベルが同じなら同じ装備なのである。鉄は魔法を阻害するとかは無いらしい。

「さて、ヘルはまだ動けそうにないから、俺とクーで床を洗うか」

宿屋をあんまり汚すのは拙い。布を濡らして拭き、それから乾拭きした。幸い部屋にはトイレがあるので、汚水は流す事が出来る。しかし宿屋の従業員からすると俺達はどうやって部屋に入ったのか謎である。下手をすれば部屋の掃除中に鉢合わせしてしまうかもしれない。ワープ自体はレアだが出来る人間はいるが、連続して使える人間は余計な危難を招くかもしれない。ヘルはベッドにバタンキューである。40階でこの疲労か…アカシュの依頼は果たせないかもしれない。


「う~んやっぱりケーキの王様だねっ!」

夕ご飯をホテルの食堂で食べるヘルを見ると昼間の疲労が嘘の様である。結構ストレスがたまっていたのかもしれない。食事は知らず知らずの内に俺の好みの味にしていたのかもしれない。それがストレスになったのか?

「これからは一緒に買出しだな、好きな物を買うといい」

「う~んでも食材が全然分からないんだよねぇ」

これはヘルがお嬢だからというわけではなく、八百屋に売っている食材が明らかに地球の物とは違うからだ。青い色のねぎに似た植物は磨り潰して薬味にするものだったり、大根みたいな根菜はやたら辛かった。

「今日の食事と似たような物を作るのならば、ケーキ以外は出来ないこともありません」

「ほんとぉ!さすがクーちゃん!じゃあえっとねぇ、この貝のやつ明日作れる?」

「貴方も協力するならなんとかします。ただし基本的にお食事のメニューは御主人様優先です」

「うん。それは分かってるよ。食材を覚えたら、旦那様に愛妻弁当作ってあげるぅ」

嬉しいことだ。ちなみに今日の料理は『イズのマリネ』『青緑竜のカルパッチョ』『九転肥腸』『ザッハトルテ』である。1人500ナルだった。この世界の料理の文化が良く分からない、なんか色々混ざっている気がする。しかし結構難しそうな料理だが、クーはなんで作れるんだろう。

「御主人様以前の雇い主達の食事を作っていたのである程度は出来るのです」

そうだったのか。しかし料理は出来るは強いし美人だしで無敵だな。


「今日は60階まで行きたいな」

再び青龍洞に訪れた。だが今度は少し違う、青龍洞を探索するための専用装備である。


水転の装甲靴(ヴァーユ・サボトン)

赤の魔水×10

緑の魔水(グリーン・マナ)×10

青の魔水(ブルー・マナ)×10

赤の生薬(レッド・グナ)×10

緑の生薬(グリーン・グナ)×10

青の生薬(ブルー・グナ)×10


靴を代えて回復アイテムを買ってきただけだが、装備は充分だ。靴は水に決して足をとられない物で、魔水は専用の瓶に入って10本づつである。生薬は小さな壺に入れてあるもので、それが各色五個づつである。全てギルドで購入したものである。この国のギルドはそこそこ栄えていた。迷宮でとれる戦利品を買い取ったり、収集依頼なんかも出していた。

「そういえば、家の目星は付けたのですか」

「アカシュの見つけてきた中に調度いい土地があるからそこを買う予定だ。アカシュの依頼を果たしたら都合をつけてもらう予定だ。その前に土地を見に行くか?」

 2人が首を振る。まぁ俺たちは土地勘も無いし、どこでもいっしょの様な気もするが、家は一生ものだ。まぁこの辺ではどうなのかは知らないが、一応後で見に行くか。


「この靴滑り知らずだねぇ~」

 受験生と北国の人にお勧めである。実際もう59階だが、全員昨日ほどの疲労感は無いようだ。昨日入念なマッサージをしたお陰だろうか?だが、これからは迷宮は週1くらいでいいかもしれない。疲労をあまり蓄積するのはよくない。実際熟練の迷宮探索者は月3回くらいしか潜らないそうだ。

「ご主人様だからこそ連日の迷宮探索が可能なのです。この利点は活かさなくては」

 う~ん。だからって毎日の様に命の危険を冒すのはな~と考えていると、クーが魚人が接近していると言ってきた。仮想視界で視る。


魚人マーマンLV42

魚人マーマンLV42

魚人マーマンLV41

魚人マーマンLV40

魚人マーマンLV41

魚人マーマンLV39


 色とりどりの魚群である。魚人は名前が同じ癖に体色が違う。うろこや口の形、赤身というのは同じだが、見た目の色だけが違う。人と付いているくせに、何の道具も持っていないし全裸だ。性器は見えないが、収納式なのか?見た目は二足歩行の鯛だが、そもそもこいつら何類なんだ?魚類?陸にいるから両生類?いやほにゅう類なのか?解剖して確かめてみよう。

「ギョギョー!」

 魚人たちは横一列に並んでいるので、一番右の赤い鯛人の胴体を袈裟斬りにする。赤い血が流れ落ちて、臓器がこぼれおちる。この階層の魔物は一撃では死なないので、刃を返して足元から一気に切り返す。先ほど袈裟斬りにした胴体の傷口をなぞる形で切ったため、胴体が寸断される。脊髄はあるようだし心臓や胃に相当する器官もある。人間より内臓はいくつか足りない気がする。一匹目の魚人を倒した瞬間に、五体に活力がみなぎったのを感じた。頭のてっぺんから足のつま先まで赤色の光で覆われている。

「これは…戦闘力が十倍になるあれか?いやレベルが上がったのか?」

 長男の刀も赤色の光で発光している。なんだこれ?まぁ考えるのは後だ。まだ敵は5匹いるし、増援が来る可能性もあるので、さっさと倒そう。俺が斬りこんだと同時にクーとヘルも攻撃を開始している。クーと格闘している魚人は左翼の2匹だが、魚人は機動力とテクニックの差で、クーに触れもしないから大丈夫だ。

 この迷宮は広いからヘルに攻撃される可能性もあるので、ヘルに迫ろうとする青魚に斬りつける。赤の光のせいか、一撃である。返しの一撃をするつもりだったので、すこし体を持て余す。残心はやはり重要だ、相手が自分と同じ腕なら、今の隙で一本取られた。これからは一撃で殺すつもりで一撃一撃を打ち込むとしよう。仲間が一撃で殺されて驚いたのか、クーと格闘していない残りの二匹の青魚がたじろいでいる。疾走して近づき、圧倒されている魚を二匹とも一撃で斬り殺した。

「残りは二匹だ、ヘル、クーを援護しろ」

 言う前にすでにヘルは赤い風を魚人に送り込んでいる、良い連携だ。戦闘を何回も行っているので、もう以心伝心である。クーと格闘している魚人の後ろに回り、ダメージの少ない方を背後から切り裂く、黄色の鯛は即死した。残すは一匹といったところだが、クーとヘルの連携攻撃でゆっくりと倒れこんだ。仮想視界で視ると死んでいることが分かる。

「お疲れさまでした。ご主人様、腕を上げられましたか?お強くなったような?」

「この光は見えるか?多分これのおかげだ」

 2人とも首をを振る。見えないのか、どうやらこの光は狩猟者×2の生命エネルギーに近いらしい。いや単に俺だけに見えるパワーの証だとすると、洋楽の名前の超能力が近いか?とりあえず死体をつついてアイテムにしようと思い、ジョブを変えようとする。


天職─ファースト─武者LV50─セカンド─発見者LV36─サード─防人LV40─フォース─武流タケルLv10

設定─褒章値184/495─悪行値0/108


 フォースを取得していた。なぜだ?最上級職のお陰か?それにしてもタケルとは、古代の勇者の尊称…と言えばいいのか、ナントカタケルというのは地方ごとに居たと云うからそうなのか?それが武者の上か、納得したようなそうでもないような。所有業を視る。


所有業─異世界転移者◎─褒章拡張◎─最終天職到達者◎─迷宮完全攻略者⑦


 おぉ…と言うことは、最終ジョブを会得すればクーももっと強くなれるのか、よかったよかった。しかし奴隷と言えば反乱が付き物だというのに、俺は間抜けなんだろうか?奴隷を強くしようとするなんて、まぁ2人は奴隷というよりは愛し合う恋人だが…いつか反乱とは別の意図で刺されるかもしれない。贔屓は知らずにやっているものだが、これからは気をつけよう。

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